島根県松江市の学校給食で、ハマチによるヒスタミン食中毒が発生しました。2026年10月29日、給食を食べた児童や教職員が相次いで体調不良を訴え、当初293人と発表されていた患者は、その後307人に増えています。児童10人が救急搬送され、2人が入院する事態となりました。
原因となったのは、給食で提供された「ハマチのゆずこしょう焼き」です。魚の鮮度や保存状態が関係するヒスタミン食中毒ですが、一度生成されたヒスタミンは加熱しても分解されないという特徴があります。
今回の食中毒の経緯と、ヒスタミンが発生する仕組み、家庭でも気を付けたい予防方法について整理します。
松江市の学校給食で307人が食中毒
2026年10月29日、島根県松江市東出雲町にある出雲郷小学校、揖屋小学校、意東小学校の3校で、給食を食べた児童や教職員が相次いで体調不良を訴えました。
発症した人は当初293人と発表されていましたが、その後、同じ給食を食べた東出雲中学校の生徒6人と給食センターの調理員8人にも症状が確認され、患者は合計307人となりました。
症状として報告されたのは、顔の赤みや口・喉のかゆみ、違和感、嘔吐などです。出雲郷小学校では児童10人が救急搬送され、うち2人が入院しました。入院した児童を含め、患者は全員快方に向かっていると報じられています。
当日の給食には、麦ごはん、牛乳、和風ポテトサラダ、人参大根ごぼう汁などとともに、「ハマチのゆずこしょう焼き」が提供されていました。
松江保健所は、給食を原因とする集団食中毒と断定し、調理を担当した東出雲学校給食センターに対して、10月30日から11月3日まで5日間の営業停止を命じました。
ヒスタミン食中毒とは?
ヒスタミン食中毒とは、食品中に大量に蓄積されたヒスタミンを摂取することで起こる食中毒です。一般的な細菌性食中毒とは異なり、食品中に蓄積された化学物質によって、アレルギーに似た症状が引き起こされます。
ヒスタミンは、魚に含まれる「ヒスチジン」というアミノ酸から作られます。魚の表面や内臓などに存在するヒスタミン産生菌が増殖すると、その菌が持つ酵素の働きによってヒスチジンがヒスタミンに変化します。
特に、マグロ、カツオ、サバ、イワシ、サンマ、ブリ、アジなど、ヒスチジンを多く含む魚が原因食品になりやすいとされています。ハマチもブリの若魚にあたるため、今回のような食中毒が発生する可能性があります。
ヒスタミン食中毒の主な症状は、次のとおりです。
- 顔や首などが赤くなる
- 口や喉、唇などにかゆみや違和感が出る
- じんましんや発疹が出る
- 頭痛やめまいが起こる
- 吐き気や嘔吐、腹痛、下痢が起こる
症状は食べてから比較的短時間で現れることが多く、今回の松江市の事例でも、児童が魚を食べた直後に舌のピリピリした感覚を訴えていました。
アレルギー反応に似ていますが、特定の人だけに起こる食物アレルギーとは異なり、ヒスタミンが蓄積された食品を食べた人に発症する食中毒です。そのため、同じ料理を食べた多くの人に症状が出ることがあります。
加熱してもヒスタミンは分解されない
今回の食中毒で特に注意したいのが、ヒスタミンの熱に対する性質です。
一般的な食中毒では、原因となる細菌が加熱によって死滅することで、食中毒のリスクを減らせる場合があります。しかし、ヒスタミンは熱に強く、一度生成されると、焼く・煮るといった通常の加熱調理では分解されません。
つまり、魚を十分に加熱しても、調理前の段階ですでにヒスタミンが蓄積されていれば、食中毒を防ぐことはできないのです。冷凍しても、すでに生成されたヒスタミンを取り除くことはできません。
また、ヒスタミンを多く含む魚は、見た目や臭いだけでは判断できない場合があります。消費者庁によると、ヒスタミン濃度が高い食品を口に入れると、唇や舌先に通常とは異なるピリピリした刺激を感じることがあります。このような違和感があれば、食べるのをやめることが大切です。
ハマチはどのように保管されていたのか
今回の食中毒では、ハマチが給食センターに届くまでの流通や保存の過程も注目されています。
報道によると、使用されたハマチは県外の業者が切り身に加工したもので、市内の卸売業者が9月25日に冷凍状態で受け入れていました。その後、およそ1か月間冷凍保存され、10月27日に給食センターへ納品されています。
給食センターでは解凍庫で解凍し、29日に「ハマチのゆずこしょう焼き」として調理されました。
松江市は、給食センターに納品された後から調理までのハマチの温度管理や調理時間などについて、問題は確認されていないと説明しています。一方、ハマチからヒスタミンが検出されたことは確認されており、ヒスタミンがいつ、どの段階で生成されたのかについては、引き続き調査が必要です。
冷凍状態で保管されていたからといって、ヒスタミンが生成されていなかったとは限りません。 冷凍する前の加工や輸送段階でヒスタミンが生成されていた可能性も考えられるため、原材料の仕入れから調理まで、一貫した温度管理が重要になります。
家庭でも注意したいヒスタミン食中毒の予防方法
ヒスタミン食中毒を防ぐには、ヒスタミンが生成される前に、魚の温度管理を徹底することが重要です。
厚生労働省や消費者庁は、次のような対策を呼びかけています。
- 魚を購入したら常温で放置せず、速やかに冷蔵庫や冷凍庫で保管する
- 魚を釣った場合も、速やかにクーラーボックスなどで冷やす
- 魚のエラや内臓はできるだけ早く取り除く
- 鮮度が低下したおそれのある魚は食べない
- 調理時に加熱すれば安全になると考えない
- 唇や舌にピリピリした刺激を感じたら食べるのをやめる
特に注意したいのは、加熱調理によって安全性を取り戻すことができない点です。通常の食中毒対策として行われる加熱だけでは、ヒスタミンによる食中毒を防げません。
学校給食の食材管理と流通経路の調査が重要に
今回の松江市の食中毒では、3つの小学校を含む複数の施設で300人を超える患者が発生しました。同じ給食センターから提供された食事が原因となったことで、広い範囲に被害が及んでいます。
給食センターでは大量の食材を扱うため、納品時の温度確認だけでなく、加工業者や卸売業者を含めた流通経路全体での管理が求められます。
今回、給食センターでの調理工程に問題が確認されていないことからも、ヒスタミンがどの段階で生成されたのかを特定することが重要です。原材料の加工や冷凍保存、輸送時の温度管理などについて、詳しい調査が待たれます。
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