2026年度から高校無償化が拡充され、私立高校でも所得にかかわらず授業料の支援を受けられるようになりました。しかし、その一方で、私立高校に通う家庭が負担する学校納付金が前年の約2倍になったという調査結果が公表されました。
授業料の負担を軽減するために国が税金を投入しているにもかかわらず、学校側が施設費や入学金などを引き上げているのであれば、制度の効果が薄れてしまいます。
今回の問題は、単に教育費が高いというだけでなく、高校無償化に便乗した値上げが起きていないかという点にもあります。
私立高校の学校納付金が1年で約2倍に
11月2日の共同通信によると、子ども支援を行うNGO「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」の調査で、私立高校に通う家庭が負担した学校納付金の平均額が、2026年度は約14万7,000円となりました。2025年度の約7万3,000円と比較すると、わずか1年で約2倍に増えています。
学校納付金には、施設設備費や施設維持費、冷暖房費、PTA会費などが含まれます。これらは授業料とは別に徴収されるため、授業料が無償化されても家庭の負担として残ります。
また、入学時に必要となる費用も前年より増加していました。
- 入学金:約17万3,000円(約2万7,000円増)
- 制服代:約10万8,000円(約1万5,000円増)
- パソコン・タブレット代:約9万9,000円(約8,000円増)
今回の調査は、同団体の給付金制度を利用した家庭を対象に実施され、中高生125人と保護者425人が回答しています。経済的な支援を必要とする家庭が中心であり、全国の私立高校に通う家庭すべての平均を示すものではありません。
それでも、授業料以外の費用が大きく増加しているという結果は、無視できない問題です。
高校無償化に便乗した値上げなのか
今回の調査で疑問になるのが、学校納付金などの増加が高校無償化に便乗した値上げではないかという点です。
2026年度から私立高校の授業料支援が拡充され、国が負担する支援金の上限は全日制で年間45万7,200円になりました。これまでの39万6,000円から引き上げられ、所得制限も撤廃されています。
学校側から見れば、家庭が直接負担する授業料の一部または全部を国の支援金で賄えるようになったため、授業料以外の費用を引き上げても、保護者が受ける支援の効果が分かりにくくなる可能性があります。
例えば、授業料が据え置かれていても、施設整備費や学校納付金、入学金などが値上がりすれば、家庭が実際に支払う金額は減らない、あるいは増えることも考えられます。
もちろん、学校側にも物価高や人件費の上昇、校舎や設備の維持管理などの経費があります。私立高校は公立高校とは異なる運営上の事情もあるため、費用の引き上げがすべて不当とはいえません。
また、今回の調査は前年と当年の負担額を比較したものであり、無償化が値上げの直接的な原因だったと証明するものではありません。しかし、授業料支援の拡充と同じ時期に、授業料以外の費用が大きく増えていることについては、国や自治体が実態を調べる必要があります。
国も合理性のない値上げを問題視
国も高校無償化に伴う学校側の値上げについて対策を求めています。文部科学省は2026年3月31日付の通知で、制度改正に伴って合理性のない値上げを行うことは望ましくないと明記しました。
さらに、授業料だけでなく、入学金や施設整備資金など、保護者が負担する費用についても、学校側が適切に情報提供するよう求めています。
今後は、学校ごとの授業料や納付金を一覧で公表する仕組みや、合理性のない値上げを防ぐための対応も検討されています。つまり、国も授業料支援の拡充によって学校側が不合理な値上げを行うことがないよう、対策を進める方針です。
今回の調査結果は、こうした国の対応が実際に機能しているのかを確認するうえでも重要な材料になります。
幼保無償化でも指摘された保護者負担の問題
今回の問題について、Yahoo!ニュースのコメント欄では、幼児教育・保育の無償化でも似たような経験があったという声が寄せられています。
それまで徴収されていなかった施設費が新たに設けられたり、給食費が値上がりしたりして、無償化前より負担は減ったものの、支援額がそのまま家計の負担軽減につながったわけではないという意見です。
また、授業料無償化を理由に施設費や教材費、行事費などを値上げしやすくなるのではないかという懸念もあります。
一方、私立高校には公立高校とは異なる設備や教育環境を維持するための費用がかかり、授業料支援によって進学しやすくなる家庭があることも事実です。経済的な理由で進学を諦めていた生徒にとって、無償化が助けになる面まで否定することはできません。

授業料だけでなく学校が徴収する費用の検証が必要
今回の調査では、高校1年生の27%が、授業料以外の出費を懸念して私立高校を進路の選択肢に入れられなかったと回答しています。また、私立高校に通う子どもの保護者の約半数が、経済的な理由で就学を続けられない可能性があるとしています。
授業料を無償化しても、入学金や施設費、教材費などが高額であれば、経済的に余裕のない家庭は私立高校を選びにくいままです。
特に問題なのは、国が授業料を支援しているにもかかわらず、その分が別の費用の値上げによって相殺されてしまうことです。これでは、税金を使って家庭の教育費を軽減するという制度の目的が十分に達成されません。
もちろん、物価高や人件費の上昇に伴う正当な値上げまで制限するべきではありません。しかし、値上げの理由や金額の妥当性については、学校側に説明を求める必要があります。
高校無償化の効果を正しく検証するためには、授業料だけを見ていても不十分です。入学金、施設整備費、学校納付金、教材費など、保護者が実際に支払う費用全体を調査する必要があります。
無償化によって国の支援が増えた分、学校側の徴収額が増えていないか。便乗値上げがないかを継続的に検証する仕組みが求められます。
