「日本中の経営者の皆さん、すみません。出勤時間の調整を宜しくお願い致します」──2026年6月23日、元日本代表MF・本田圭佑氏がX(旧Twitter)に投稿したこのひと言が、日本中で大きな話題を呼んでいます。
サッカーFIFAワールドカップ2026北中米大会。日本代表は1次リーグF組の最終戦として、現地時間6月25日(日本時間26日)にスウェーデンと激突します。このグループステージ突破をかけた大一番のキックオフ時刻が、日本時間で午前8時──まさに通勤ラッシュの時間帯と完全に重なっています。
本田氏は今大会でNHKの解説を担当しており、独特の語り口と鋭い分析で「本田語録」が続々と話題を集めています。そんな彼だからこそ、解説者としての立場を超えて経営者たちに直接呼びかけるという、異例の行動に打って出ました。4年に一度のW杯という熱狂を、一人でも多くの人にリアルタイムで分かち合ってほしい──そんな思いが込められた”お願い”の波紋は、日本社会に静かに、しかし確実に広がっています。
平日朝8時の高い壁──なぜそんな時間に試合が?
今大会の開催地は、アメリカ・カナダ・メキシコの北中米3か国です。日本との時差はおおむね13〜16時間に及び、現地で昼間・夕方に組まれた試合が、日本時間では深夜から早朝にかけての時間帯に重なることが多くなっています。
今回のスウェーデン戦が組まれた「日本時間午前8時」は、まさにその時差の影響を受けた結果です。NHKの中継は午前7時30分からスタートするため、仕事に向かう通勤電車の中でスマートフォンを握りしめながら観戦する、という方も少なくないのではないでしょうか。
オランダとの初戦は日本時間午前5時、チュニジアとの第2戦は同日午後1時と、三者三様の時間帯で試合が行われてきました。そのなかでも「午前8時」というスウェーデン戦の時間帯は、最もビジネスパーソンの日常と直接ぶつかる設定となっています。
本田圭佑が語りかけた理由──解説者の枠を超えた行動力
本田氏はNHKでスウェーデン戦の中継予告を引用する形でXを更新し、「#金曜 #朝8時」というハッシュタグとともに出勤時間の調整を呼びかけました。
投稿直後からファンの反応は爆発的で、「有給の人、続出の予感」「どうせ仕事にならないのだから、出社時刻遅らせるかリモートで良いのでは」「我々は体調不良になり会社を休む準備はできているぞ」「仮病と言う名の治らない重病で休む予定です」といったコメントが相次ぎました。
「国民の休日にしよう」「また、本田きたー!」「経営者に言うところがケイスケホンダ」「ボスに転送しなきゃ」「本田さんが日本の経営者を変えてほしい」「小学生の息子も見たがっています。日本中の小学校へも呼びかけて欲しいです」──SNS上でこれほどの反響を呼んだのは、本田氏の言葉が単なる告知ではなく、国民の気持ちを代弁するものだったからではないでしょうか。
今大会、本田氏はオランダ戦の解説でも「イチキュウサン(身長193センチ)のウインガー!?」「1にガクポ、2にガクポ、3にガクポ」といった名言を連発し、チュニジア戦でも「イケイケどんどんやて、これ!」で視聴者を沸かせました。W杯を盛り上げることへの真剣な姿勢と、底なしのエンターテインメント精神が、今回の呼びかけにもにじみ出ています。
現場ではすでに動き出している──「観戦OK」企業の登場
本田氏の呼びかけに先んじる形で、実際に社員のW杯観戦を応援する企業もすでに動き始めています。
大阪に本社を置く企業・トゥモローゲートでは、日中に行われる日本代表戦を業務中断して社内で観戦できる「ワールドカップ観戦タイム」という制度を導入しています。同社の西崎康平代表取締役は「仕事を止めて、W杯の観戦をしていいよ」と社員に積極的に呼びかけており、社内の一体感の向上や仕事へのモチベーションアップにもつながっているとのことです。
また、都内のある企業では、社内最年少の社員・山中翔太さんが「仕事中にサッカー観てもいいですか?」と題した企画書を作成し、社長に直談判するという出来事もありました。企画書のコンセプトは「単なる福利厚生ではなく、社員同士の一体感を生む”全力の共有体験”」。この熱意ある提案に社長も納得し、仕事中に堂々と日本代表戦を観戦できる環境が生まれました。リソースクリエイション・高田桂太郎社長は「チームワークというのは確実にプラスになる」と語り、試合結果によるモチベーション低下への懸念も「全くないです。勝ちますんで」と力強く一蹴しています。
世界を見渡せば──ウズベキスタン政府の”国家的決断”
日本に限らず、今大会では各国がW杯の時差問題と向き合っています。W杯初出場を果たしたウズベキスタンでは、コロンビアとの試合(現地時間午前7時キックオフ)に合わせ、政府が全国の政府機関の始業時間を2時間遅らせ午前10時とする異例の措置を取りました。
さらに学校や広場に大型スクリーンを設置し、国民が家族とともに応援できる観戦イベントも各地で実施されました。国をあげてサッカーへの情熱を示したウズベキスタンの姿は、日本でいう「国民の休日にしよう」という声とどこか重なって見えます。
4年に一度のW杯だからこそ生まれる、こうした社会的なゆるやかな”非日常”の許容。国や規模の違いはあれど、スポーツが社会を動かす力は、どの国においても変わらないようです。

グループ突破をかけた大一番──日本代表の現在地
今大会の日本代表は、オランダとの初戦で2度のビハインドを追いかけて2-2のドローに持ち込み、第2戦のチュニジア戦では4-0の快勝を収めました。現在グループFでは勝点4で首位・オランダと並ぶ2位につけており、スウェーデン戦で引き分け以上であれば決勝トーナメント進出が確定します。
スウェーデンも勝点3で3位につけており、日本戦の結果次第でグループ首位に立つ可能性もあります。両チームともに勝利だけを狙う一戦となるだけに、試合の熱量は最高潮に達することが予想されます。
なお、久保建英選手は負傷の影響でスウェーデン戦の欠場が濃厚と報じられており、日本代表はその穴をいかに埋めるかが問われる試合でもあります。
スウェーデン戦の解説陣は、本田氏に加えて柿谷曜一朗氏、林陵平氏と第1戦と同じ布陣です。NHK総合での放送は午前7時30分にスタートし、現地からの熱い解説が期待されます。
おわりに──本田圭佑の”お願い”が伝えたかったこと
「日本中の経営者の皆さん、すみません」という言葉には、謝罪でも命令でもなく、一サッカー人として日本代表を全力で後押ししてほしいという純粋な想いが込められています。
W杯は、テレビや配信の画面を通じても、同じ時間に日本中の誰かと気持ちを共有できる、稀有な体験です。フレックス制度の活用、午前休の取得、あるいは会社のモニターで同僚と肩を並べて観戦──どんな形であれ、この瞬間を「リアルタイム」で楽しむ選択肢を、一人でも多くの方に持ってもらえたらと思います。
4年に一度しか来ないこの熱狂を、ぜひ職場の仲間たちとともに味わってみてください。本田圭佑の”お願い”は、そんなシンプルで力強いメッセージだったのではないでしょうか。
