簗和生農林水産相が、就任前の5月に地元の懇親会で「衆院選で自分を応援しなかった首長の市町の道路予算を大幅にカットした」という趣旨の発言をしていたと報じられました。
簗氏は10月2日夕の記者会見で、発言をおおむね認め、「誤解を招く発言だった」と述べました。一方で、国土交通省に予算削減を働きかけたことは否定し、辞任もしない考えを示しています。
今回の問題では、実際に道路予算の配分に政治的な働きかけがあったのか、また予算がどのような手続きで決まったのかが焦点となっています。
簗和生農相が語った「道路予算カット」の発言
報道によると、簗氏は5月24日夜、栃木県大田原市で開かれた自民党大田原支部の会合後の懇親会に出席しました。その場で、那須烏山市と那珂川町について「2026年度の道路予算を大幅にカットした」と発言したとされています。
その理由として、両市町の首長が衆院選で自身を支持しなかったことを挙げていたと報じられています。当時、自民党の筆頭副幹事長だった簗氏が、自らの立場や影響力を背景に、こうした対応ができるという趣旨の発言もしていたとされています。
当時の簗氏は党の要職にあったため、単なる個人的な発言ではなく、政治家が国の予算配分に影響を与えられると受け取られかねない内容だったことが問題視されています。
那須烏山市の道路予算は実際に大幅減少
問題となっている道路予算は、国の社会資本整備総合交付金のうち、道路整備に関する部分です。社会資本整備総合交付金は、道路や河川、都市整備など、自治体が行う社会資本整備を国が支援するための制度です。
両自治体によると、国土交通省が示した2026年度の交付額は、那須烏山市で約2426万円となり、前年度から63%減少していました。実際に予算額が大きく減少していることから、簗氏の発言との関係があるのかどうかが注目されています。
ただし、予算が減少したという事実だけで、簗氏の発言を受けて減額されたと判断することはできません。予算配分には事業内容や採択状況など、複数の要因が関係する可能性があります。
簗和生農相は道路予算への働きかけを否定
問題が表面化した9月30日以降、簗氏は発言について明確な回答を避けていました。10月2日午前の閣議後会見でも、「大臣就任前の一議員としての活動に関わる事柄」として、農林水産相としてのコメントを控える姿勢を示しました。
記者からは、議員としての活動についても説明できないのかという質問が相次ぎましたが、簗氏は農相としての職務に関する発言にとどめる姿勢を示していました。
ところが、同日夕方の会見では対応が変わりました。報道された発言について、「そういう発言をしたんだろうと思う」と述べ、発言をおおむね認めました。
「箇所付けの結果を報告した」と説明
簗氏の説明によると、国土交通省に問い合わせて、道路事業などの「箇所付け」の結果について報告を受け、その内容を党支部の会合で報告したということです。
箇所付けとは、予算をどの事業にどの程度配分するのかを具体的に決める作業を指します。簗氏は、国土交通省に対して予算を削減するよう働きかけたことは否定しています。
つまり、簗氏側の説明では、自ら予算を減額したのではなく、すでに決まった予算配分の結果を把握し、それを地元の会合で説明したということになります。この点については、実際にどのような問い合わせが行われ、誰がどのような判断をしたのかを確認する必要があります。

道路予算をめぐる発言の何が問題なのか
今回の発言で大きな論点となっているのが、国の予算配分の公平性です。道路整備などに使われる国の交付金は、自治体や住民の生活に直接関係する公的な予算です。
もし首長が特定の国会議員を選挙で支援したかどうかによって自治体への予算配分が左右されるのであれば、政治的な立場と行政上の予算配分が結び付いているとの疑念を招きます。
道路は日常生活だけでなく、通学や物流、防災、救急搬送などにも関係する重要なインフラです。そのため、仮に政治的な理由によって道路整備に影響が出るのであれば、最終的に影響を受けるのは自治体の住民になります。
一方で、現時点では簗氏自身が予算削減への働きかけを否定しています。実際の予算配分に簗氏の発言や意向が影響したのかどうかは、今後の検証が必要です。
会見での説明の変化も焦点に
今回の問題では、簗氏が会見でどのように説明したのかも注目されています。
9月30日以降、発言について明確な説明を避けていた一方、10月2日夕方の会見では発言をおおむね認めました。この対応の変化について、説明責任の観点から疑問を呈する声が出る可能性があります。
また、自民党内には支援しなかった相手への対応として当然視する声もあると報じられています。一方で、一般の有権者から見れば、選挙で誰を支援したかと国の予算配分が結び付くような発言は、別の問題として受け止められる可能性があります。
今回の問題は、実際の予算決定だけでなく、政治家が公的な予算と自身への選挙支援との関係をどのように語ったのかという点でも議論になっています。
簗和生農相の過去の経歴と政治資金問題
今回の問題をめぐっては、簗氏のこれまでの政治活動にも注目が集まっています。
簗氏は東京都出身の47歳で、2012年に初当選し、当選6回とされています。9月17日に発足した第2次高市改造内閣で初入閣しました。
また、旧安倍派の政治資金問題では、1746万円の政治資金収支報告書への不記載があり、2024年に自民党から役職停止6カ月の処分を受けています。政治資金問題への関与が認定された議員が閣僚に起用されたことも、今回の内閣改造をめぐって注目された点の一つでした。
2026年2月の衆院選では小選挙区で敗れたものの、比例代表で復活当選したと報じられています。さらに2021年には、性的少数者をめぐる自民党の会合での発言が、差別や偏見につながるとして問題になりました。
これらは今回の道路予算発言とは別の問題ですが、簗氏の政治活動を理解するうえで関連して報じられている経歴です。
今後は道路予算の決定過程が焦点に
今回の問題について、簗氏は発言をおおむね認めた一方、予算削減を国土交通省に働きかけたことは否定しています。そのため、今後の焦点は、2026年度の道路予算がどのような手順で決定されたのかという点に移っています。
特に、那須烏山市や那珂川町の予算が前年度から減少した理由、国土交通省内での査定や箇所付けの経緯、簗氏側からどのような問い合わせがあったのかなどが確認されるかがポイントになります。
発言と実際の予算決定との間に具体的な関係があったのかどうかについては、現時点では明らかになっていない部分があります。
簗和生農相の今後の説明責任にも注目
簗氏は、今回の発言について「誤解を招く発言だった」と説明し、辞任を否定しています。一方、農林水産相としては、コメ価格や備蓄米、水田政策、畜産・酪農など多くの課題を抱えています。
9月19日の報道では、スーパーで販売されるコメ5キロ当たりの平均価格がおよそ2年ぶりに2000円台となり、簗氏は備蓄米を早期に適正な水準まで買い戻すことに意欲を示しました。
今回の問題では、発言そのものだけでなく、実際の予算配分に政治的な働きかけがあったのかどうかを含め、具体的な事実関係を明らかにすることが重要になります。
今後、簗氏や国土交通省からどのような説明が行われるのか、道路予算の決定過程がどこまで明らかになるのかが注目されます。

