愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会で、韓国の国歌を流すべき場面に誤って北朝鮮の国歌が演奏されるという重大なトラブルが発生しました。
南北が今も休戦状態にあるだけに、この一件は単なる運営ミスにとどまらず、韓国国内で大きな反発を招いています。ここでは事の経緯と組織委員会の対応、SNS上での反応、そしてその他に相次いでいるトラブルについて整理します。
愛知・名古屋アジア大会とは?
アジア大会は正式には「アジア競技大会」と呼ばれる、アジア地域最大級の総合スポーツ大会です。アジア・オリンピック評議会(OCA)が主催し、4年に一度開催されています。
夏季オリンピックと同じく陸上や水泳、球技など幅広い競技が行われるほか、アジアならではの武道や伝統競技も種目に加わるのが特徴です。
今回の大会は「愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会」として、愛知県・名古屋市を中心とした地域で開催されています。多くの国と地域から選手団が集まる大規模な国際大会だけに、国歌の管理をはじめとする運営面には、極めて高い正確さが求められます。
韓国戦で北朝鮮国歌を誤って演奏
問題が起きたのは9月18日、岐阜県各務原市のグリーンスタジアムで行われた男子ホッケー、韓国対バングラデシュ戦の試合前でした。本来であれば韓国の国歌が流れるはずの場面で、場内アナウンサーが「愛国歌(韓国国歌)」を流すと案内したにもかかわらず、実際にスピーカーから流れてきたのは北朝鮮の国歌だったのです。
整列していた韓国の選手たちは、聞こえてきた曲が自国の国歌ではないことにすぐ気づき、困惑した表情を浮かべました。運営側は英語で「違う曲を流した」と謝罪するアナウンスを行い、試合開始直前になってようやく正しい韓国国歌が流れましたが、選手たちは正式なセレモニーを行えないまま試合に入ることになりました。なお試合自体は、韓国が5対0で勝利しています。
組織委員会が謝罪|発表した再発防止策とは
19日、組織委員会は「深くおわびする」とする声明を発表し、韓国選手団のもとを訪れて謝罪したことを明らかにしました。その後23日の会見では、大参孝彰事務局次長が改めて経緯を説明しています。
原因として挙げられたのは、すべての出場国の国歌データを同じ端末に一括保存していたという運営体制の問題です。音響を担当していた民間事業者の担当者が、この端末の中から国歌を選ぶ際に誤って北朝鮮のものを選択し、送出してしまったといいます。
再発防止策としては、次の2点が発表されました。
- その日に使用しない国歌のデータは、端末に格納しないようにする
- 音源データについては、事前に二重チェックを行う
当日使う分だけにデータを絞り込むことで誤操作のリスクそのものを減らし、あわせてダブルチェック体制を敷くことで選択ミスを事前に食い止める狙いです。基本的な対策ではありますが、国際大会の運営においては欠かせない対応と言えるでしょう。
韓国側が正式抗議|大韓体育会の反応と過去の事例
この一件に対し、韓国代表を統括する大韓体育会は選手団長名義で組織委員会に正式な抗議書を送付しました。抗議書には「国の象徴である国歌が誤って演奏されることは、国際総合スポーツ大会において決してあってはならないことである」と記されており、事故の経緯についての説明と、組織委員会としての公式な謝罪、再発防止を求める内容だったと伝えられています。
大韓体育会によれば、2024年のパリオリンピックでも韓国の選手団を北朝鮮と誤って紹介するミスがあり、国際オリンピック委員会が公式に謝罪した経緯があるといいます。今回の一件は、そうした過去の事例と重ね合わせて受け止められている面もあるようです。
韓国対香港戦でも国歌が流れないトラブルが発生
さらに、9月19日に行われた女子ハンドボールの韓国対香港戦では、両チームの国歌がまったく演奏されないという別のトラブルも発生しました。韓国メディアは「2日連続で国歌に関するミスが発生した」と報じ、韓国代表の監督が「多くの国際大会に参加してきたが、国歌が演奏されないのは初めてだ」と不満を表明したことも伝えられています。国歌をめぐるトラブルが短期間に重なったことで、韓国側の不信感はさらに強まった格好です。
韓国メディア・SNSでは国歌取り違えをどう報じた?
この騒動は、韓国国内のメディアやSNSで大きく取り上げられました。韓国紙「スポーツ朝鮮」は「あまりにもひどい 日本が再び大失態!」「愛国歌の代わりに北朝鮮国歌を演奏」という見出しでこの一件を報道。他の韓国メディアも軒並み「あり得ないミス」といった論調で、大会運営への不信感をにじませる報道を展開しました。
背景には、名古屋アジア大会をめぐって以前から、朝鮮出兵を行った「豊臣秀吉」に扮した人物が歓迎イベントに登場したことも韓国メディアから問題視されていたという経緯があります。今回の国歌取り違えは、そうした一連の出来事とあわせて語られる形となり、「大会運営そのものへの不信」という論調をさらに強める結果になったといえます。
日本のSNSではどんな反応があった?
日本国内のSNSやニュースサイトのコメント欄でも、この一件は大きな関心を集めました。「同じ端末に全出場国のデータをまとめていたこと自体が信じられない」「南北の緊張関係を考えれば絶対に避けるべきミスだった」といった、運営体制そのものを疑問視する声が目立ちます。
一方で、担当した民間事業者のミスであり組織委員会だけを一方的に責めるのは酷だとする意見や、開催国として早急な体制の立て直しを求める声も見られました。国歌という国の象徴に関わる問題だけに、政治的・外交的な文脈も含めて幅広い関心を集めているのが今回のトラブルの特徴といえるでしょう。
国歌以外にもトラブル続出|バス・表彰式・宿泊で
今大会をめぐっては、国歌取り違え以外にも運営上のトラブルが複数報告されています。
近代五種男子団体の表彰式では、金メダルを獲得した韓国を紹介する際、英語のアナウンスが一時「リパブリック・オブ・チャイナ(中華民国/台湾)」と誤って読み上げられ、直後に言い直すという不手際もありました。
韓国代表のバスが別会場へ|約30分遅れるトラブル
輸送面でも問題が相次いでいます。サッカー男子の韓国代表チームを乗せた送迎バス2台が、本来の試合会場である瑞穂公園ラグビー場ではなく無関係の野球場へ選手を連れて行ってしまい、会場到着が約30分遅れる事態が発生しました。またバスケットボール男子の韓国代表では、予定していた時間に送迎バスが宿舎に来ず、午前中の練習を急きょ中止せざるを得ない状況にもなっています。組織委員会は23日の会見でもこの点について謝罪し、「ミスなく運営できることを第一に考えていきたい」とコメントしています。
中国・タイ代表でも宿泊や到着をめぐる混乱
宿泊面でも混乱が伝えられています。今大会では選手村の代わりに大型クルーズ船などが宿泊施設として用意されていますが、中国の体操チームがシステム障害の影響で到着時に空港で6時間待たされたケースや、タイの代表選手がチェックインを完了できずロビーの床で就寝せざるを得なかった様子が現地から報じられています。
これらのトラブルが短期間に重なったことで、大会運営全体への不信感が一段と高まっている状況です。
愛知・名古屋アジア大会の国歌取り違え問題まとめ
今回の国歌取り違えトラブルは、すべての出場国データを同一端末に保存していたという運営体制の甘さが根本的な原因でした。組織委員会は当日使用分だけへのデータ絞り込みと音源の二重チェックという具体策を打ち出していますが、韓国側からは正式な抗議書が提出されるなど、信頼回復には時間がかかりそうです。
くわえて、アナウンスの誤りやバスの配車ミス、宿泊施設をめぐる混乱など、国歌問題以外にも運営上の課題が次々と浮かび上がっています。大会はまだ会期中であり、今後同様のミスが起きないよう、組織委員会の対応が実際に機能するかどうかが引き続き問われることになりそうです。
