2026年10月14日、簗和生農林水産相が高市早苗首相に辞表を提出し、受理されました。9月17日に発足した第2次高市改造内閣で、不祥事をめぐって閣僚が辞任するのは初めてです。
簗氏をめぐっては、自身を支持しなかった自治体の道路予算を大幅に削減したとする発言や、選挙で支援者を無料のシャトルバスで送迎した公職選挙法違反疑惑が問題となっていました。
高市首相は当初、続投させる姿勢を示していましたが、なぜ辞任を受け入れることになったのでしょうか。辞任に至る経緯と決め手、さらに過去に国会でメガソーラー問題を取り上げていたこととの関係について確認します。
簗和生農水相が辞任するまでの経緯
簗和生氏は2012年の衆院選で初当選し、6期目を務める自民党の衆議院議員です。文部科学副大臣などを歴任し、2026年9月の内閣改造で農林水産相として初入閣しました。
ところが、就任から間もない時期に、過去の発言と選挙運動をめぐる問題が相次いで表面化します。国会で野党から追及を受けただけでなく、地元自治体からも批判が上がり、政権にとっても対応が難しい状況となりました。
支持しなかった自治体の道路予算を削減したとの発言
最初に問題となったのは、簗氏が2026年5月、地元の自民党支部の会合での発言です。
報道によると、簗氏は、同年2月の衆院選で自身を支持しなかった首長がいる栃木県の那須烏山市と那珂川町について、2026年度の道路予算を「大幅にカットした」と述べました。
公共事業の予算は、地域の実情や事業の必要性などを踏まえて決められるべきものです。選挙で自分を支持したかどうかによって予算配分が左右されるかのような発言は、行政の公平性を損なうとの批判を招きました。
簗氏は発言を撤回して謝罪する一方、自身が道路予算の削減を指示したわけではないとの説明をしていました。しかし、発言そのものへの批判は収まらず、地元の那須烏山市議会も10月14日、簗氏の言動に抗議する決議を採択しました。
高市首相は当初、簗氏を続投させる姿勢を示していましたが、この問題によって、すでに大臣としての説明責任が問われていました。
無料送迎バスをめぐる公職選挙法違反疑惑
さらに問題を深刻化させたのが、2024年と2026年2月の衆院選で、簗氏側が手配したシャトルバスを使って支援者を無料送迎したとする疑惑です。
選挙に関連して有権者に利益を提供した場合、公職選挙法に違反する可能性があります。ただし、無料送迎があったという事実だけで違法と確定するわけではなく、送迎の目的や方法、費用負担などを踏まえた判断が必要です。
簗氏は10月13日の衆院予算委員会で、シャトルバスについて会場費の一部として認識しており、利益供与や寄付には当たらないとの考えを示しました。また、選挙管理委員会に事前に確認したという趣旨の説明もしていました。
しかし、翌14日の国会答弁では、秘書に確認したところ、選挙管理委員会への問い合わせは、収支報告書への計上方法についてだった可能性があると説明を修正しました。無料送迎そのものの適法性について、事前に確認していたのかが不明確になったのです。
この答弁の修正によって、疑惑の内容だけでなく、簗氏の説明に対する信頼も問題となりました。
辞任の決め手は疑惑の重なりと説明への不信
高市首相は10月13日夜、簗氏から電話で説明を受けました。翌14日の衆院予算委員会では、無料送迎バス問題について、違法性が疑われる場合には人事上の対応もためらわないとの考えを示していました。
その後、簗氏は高市首相に辞表を提出しました。簗氏自身は、これ以上国会審議に迷惑をかけるわけにはいかず、農林水産行政に集中できない状況を避けるために辞任を決断したと説明しています。
高市首相も辞表を受理した後、自らの任命責任を重く受け止めると述べました。消費税減税に関する法案など重要課題の審議が控えるなか、問題が長引けば国会運営や農林水産行政に影響しかねないことも、判断の背景にあったと考えられます。
つまり、辞任の決め手は、道路予算発言だけではありません。無料送迎バスをめぐる疑惑が加わり、国会での説明も十分な納得を得られなかったことで、閣僚として職務を続けることが難しくなったとみられます。なお、辞任した時点で公職選挙法違反が確定したわけではなく、疑惑の法的な判断と政治的な責任は区別して考える必要があります。
簗和生氏とメガソーラー問題の関係
簗氏については、過去に大規模太陽光発電、いわゆるメガソーラーの問題を国会で取り上げていたことも注目されています。
2014年6月4日の衆議院農林水産委員会で、簗氏は、栃木県那須烏山市で計画されていた大規模太陽光発電施設を取り上げました。当時の発言では、中国系企業が出資する会社が関係する事業について、土地利用や開発に必要な自治体との事前協議が済んでいなかったことを指摘しています。
さらに、外国資本による土地の所有や取引について、安全保障上の重大な関心事であるとの考えを示し、政府に対して太陽光発電事業への外資系企業の参入状況などを質問していました。こうした経緯から、簗氏はメガソーラー開発や外国資本による土地取得に懸念を示していた政治家といえます。
一方、今回の辞任をめぐっては、メガソーラーに反対していたために報道機関から批判された、あるいは辞任に追い込まれたという見方が一部で注目されています。しかし、メガソーラーへの反対姿勢が今回の辞任につながったと裏付ける確かな証拠は確認されていません。今回、具体的に問題となったのは道路予算をめぐる発言と、選挙での無料送迎バスに関する疑惑です。
まとめ
簗和生農水相の辞任は、道路予算をめぐる発言で批判が高まるなか、無料送迎バスをめぐる公職選挙法違反疑惑が浮上し、国会での説明も十分な納得を得られなかったことが大きな要因となりました。高市首相は当初、簗氏の続投を認める姿勢を示していましたが、国会審議や農林水産行政への影響を考慮し、辞任を受け入れました。
一方、簗氏は2014年の国会質疑で、中国系企業が関係する太陽光発電事業や外国資本による土地取得について懸念を示していました。この過去の発言からメガソーラー問題との関係に関心が集まっていますが、反対姿勢が辞任の原因だったとする根拠は確認されていません。今後は、選挙をめぐる疑惑の事実関係に加え、高市政権が任命責任を含めてどのように信頼回復を図るのかが注目されます。

