moomoo証券に行政処分 NISA虚偽説明と株式出庫拒否で3カ月の新規口座停止へ

moomoo証券に行政処分 NISA虚偽説明と株式出庫拒否で3カ月の新規口座停止へ 時事・ニュース
スポンサーリンク

「米国株の手数料が安い」「高機能な分析ツールが無料で使える」——そうした評判を背景に急速にユーザーを増やしてきたmoomoo証券(東京都渋谷区)が、2026年6月19日、関東財務局から行政処分を受けました。

処分の内容は大きく2つ。新規口座開設の勧誘・受付を3カ月間停止する業務停止命令と、内部管理態勢の抜本的な見直しを求める業務改善命令です。

moomoo証券は、香港のナスダック上場企業・富途控股(フートゥー・ホールディングス)傘下の日本法人で、国内での口座数・ダウンロード数を急拡大させてきた注目のオンライン証券会社です。しかし今回の処分は、その急成長の裏側でコンプライアンス体制の整備が著しく遅れていた実態を浮き彫りにしました。

この記事では、まずmoomoo証券がどのような会社なのかをおさらいしたうえで、何が起きたのか・誰が影響を受けるのか・今後どうなるのかを、できるだけわかりやすく整理します。


スポンサーリンク

そもそもmoomoo証券とはどんな会社?人気の理由

急成長を遂げた外資系ネット証券

moomoo証券の親会社は、香港のナスダック上場企業・富途控股(フートゥー・ホールディングス)です。現在は香港・アメリカ・シンガポール・オーストラリア・日本・カナダ・マレーシアで事業を展開し、専用アプリ「moomoo」の総利用者数は世界で約2,800万人(2025年12月時点)に達しています。

日本市場へは2022年9月、100年以上の歴史を持つ「ひびき証券」を買収して本格参入。日本では金融庁に正規登録された金融商品取引業者として営業しており、日本の法律・規制に従って運営されています。2024年末には国内150万ダウンロードを達成するなど、急速に認知度を高めてきました。

人気の理由① 米国株の手数料が業界最安水準

moomoo証券の米国株手数料は約定代金×0.132%(上限22米ドル)で、SBI証券・楽天証券の0.495%(上限22米ドル)と比べておよそ3分の1の水準です。さらに円⇄ドルの為替手数料も無料のため、米国株を頻繁に取引する投資家にとっては大きなコスト削減になります。

人気の理由② 米国株の取扱銘柄数が国内最多水準

米国株の取扱銘柄数は約7,000銘柄(2026年5月時点)で、楽天証券・SBI証券・マネックス証券(いずれも約4,000〜5,000銘柄)を大きく上回ります。moomoo証券にしかない「独自銘柄」が約1,000銘柄あり、中小型グロース株・新規上場株・ADR(米国預託証券)の取扱が手厚い点が評価されています。

人気の理由③ 1米ドルから米国株が買える「micro米国株」

2025年2月から開始した「micro米国株」サービスでは、対象約2,500銘柄を1米ドル・最小0.0001株単位で購入できます。1株数百ドルするNVIDIAやAlphabetも150円程度から保有できるため、少額から投資を始めたい初心者にも門戸が開かれています。

人気の理由④ 米国株を24時間いつでも取引できる

通常、米国株市場が開いているのは日本時間の夜間のみですが、moomoo証券ではプレマーケット・アフターマーケットを含む24時間取引に対応しており、対象銘柄は約6,000銘柄以上(2025年2月時点)。手数料も立会時間と変わらないため、日中に仕事をしている方や、決算発表・ニュースに即座に反応したい方に特に支持されています。

人気の理由⑤ 高機能な分析ツールが無料で使える

PCとスマホの両方で分析から発注まで完結でき、AIによる銘柄分析・60以上のテクニカル指標・機関投資家の動向可視化など、他社では有料級の機能が無料で提供されています。スマホ版だけでもPC並みの情報量を扱えると評判で、初心者から中上級者まで幅広い層に支持されています。

弱点もある——NISAのつみたて投資枠は他社が優勢

一方、NISAのつみたて投資枠については取扱銘柄数が他社の半分以下で、クレカ積立や保有ポイントサービスにも非対応です。コツコツ積み立てをメインにしたい方には、SBI証券や楽天証券のほうが充実しています。


問題① NISA対象外の商品を「対象」と偽って販売

何があったのか

moomoo証券は、NISA(少額投資非課税制度)の対象外である米国上場ETF(上場投資信託)やETN(指標連動証券)を、対象商品であるかのように顧客に告げて販売していました

NISAは、対象商品の運用益や分配金が非課税になる制度です。ただし、すべての商品が対象になるわけではなく、外国上場のETF・ETNなど一部の商品は対象外とされています。moomoo証券はこの区分の管理を誤り、本来「対象外」の商品に「NISA対象商品」というラベルを付けてアプリや注文画面に表示し続けました。

関東財務局の認定によると、問題が発生したのは2025年2月21日から同年5月27日の期間で、少なくとも77銘柄が誤ってNISA対象商品として表示され、59名の顧客が25銘柄をNISA口座で売買しました。

問題発覚後の対応もずさん

顧客からの問い合わせをきっかけに同社は2025年5月27日に販売を停止しましたが、実効性ある改善策を講じなかったため、同年11月19日から2026年1月14日にかけて再び1銘柄で同様の誤販売が発生し、さらに1名が買い付けを行っていました。

問題を認識しながら根本的な対策を取らず、同じミスを繰り返した点は、関東財務局から「著しく杜撰(ずさん)な対応」として厳しく認定されています。

誤購入した顧客への事後対応も混乱

同社は2025年6月10日、誤ってNISA口座で購入した顧客に対し、「課税口座への振替」か「約定(売買)の取消処理」を選べると通知しました。しかしその後、自社システムの仕様上、特定口座への振替ができないことが判明し、同年7月4日に「一般口座への振替のみ可能」と再通知するという混乱が生じました。

さらに、複数銘柄を保有している顧客には「振替か取消かをまとめて一方しか選べない」という社内方針を決めていたにもかかわらず、個別に問い合わせた一部の顧客を除いてその方針を周知していなかったことも問題視されました。


問題② 株式の出庫申請を長期間にわたり一律拒否

「他社に資産を移せない」と以前から不満の声

moomoo証券をめぐっては、今回の行政処分が明らかになる以前から、「他の証券会社に株式を移管(出庫)できない」という顧客の不満がネット上で指摘されていました。

証券会社は、証券保管振替機構の口座管理機関として、顧客から出庫の申請があれば応じる法的義務を負っています。ところが同社は、2024年4月以降、株式公開買付が行われる場合を除き、国内上場株式の出庫申請を一律に受け付けていませんでした

しかも、同社の公式ウェブサイトでは「出庫対応を予定している」と表示し続けていたにもかかわらず、関東財務局の検査時点においても、システム開発の計画策定や予算措置などが何ら行われていないことが判明しています。これは金融商品取引法第43条が定める「善良な管理者の注意義務(善管注意義務)」への違反と認定されました。

なお、現在はmoomoo証券のヘルプセンターによると、米国株・国内株ともに単元株・単元未満株を問わず他社への出庫対応が始まっているとのことです。行政処分を受けたことで、ようやく問題が是正された形です。


問題③ 疑わしい取引の届出を長期間怠っていた

今回の処分ではさらに、口座開設を断った少なくとも1,531名について、疑わしい取引に該当するかどうかの検討・判断を怠っていたことも指摘されました。金融機関には、マネーロンダリング(資金洗浄)などの犯罪に使われる可能性がある取引を当局に届け出る義務があります。同社はこの義務の履行も長期間にわたり不十分だったとされています。


行政処分の内容まとめ

今回の処分は以下の2本立てです。

業務停止命令(2026年6月19日〜9月18日) 新規の口座開設に関する勧誘および受付業務を3カ月間停止。

業務改善命令

  • 経営陣を含む責任の所在の明確化
  • NISA対象商品として扱った全銘柄の適正性の再検証と顧客への適切な対応
  • 株式の出庫申請を一律拒否している状況の早期是正
  • 疑わしい取引の届出に関する適正な検討・実施
  • 役職員へのシステム管理の重要性の徹底

既存ユーザーへの影響はどうなる?

現在moomoo証券に口座を持っているユーザーにとって、最も気になるのは「自分の資産は大丈夫か」という点でしょう。

まず、既存口座での売買取引は通常どおり継続できます。業務停止命令の対象はあくまでも「新規口座開設の勧誘・受付」に限定されており、既存ユーザーの取引や出金が禁止されるわけではありません。

また、moomoo証券は金融庁に正式登録された金融商品取引業者であり、顧客資産は分別管理が義務付けられています。万一のケースでも、日本投資者保護基金による一定額の補償制度があります。

ただし、NISA口座でNISA対象外商品を誤購入した顧客については、現在も対応が進行中です。同社からの通知をよく確認し、不明点があればカスタマーサービスに問い合わせることをおすすめします。


なぜこのような問題が起きたのか

関東財務局は今回の問題の背景として、同社が新商品・新サービスの導入による業容拡大を優先する一方、コンプライアンス意識の醸成や人材育成を怠ってきた経営管理態勢・内部管理態勢の不備があると結論づけています。

moomoo証券は日本市場において急速に知名度を高め、2024年末には国内150万ダウンロードを達成するほどの成長を遂げました。しかし、その成長スピードに内部管理体制の整備が追いつかなかった——今回の処分はまさにそのひずみが表面化したものといえます。


投資家が証券会社選びで確認すべきこと

今回の一件は、証券会社を選ぶ際に「使いやすさ」や「手数料の安さ」だけでなく、以下のような点も確認することの大切さを改めて教えてくれます。

  • NISA対象商品の管理が正確か(公式サイトで対象商品一覧を確認)
  • 他の証券会社への移管(出庫)が可能か(いざというとき逃げられるか)
  • トラブル時の顧客対応が丁寧か(過去の対応事例や口コミを参考に)
  • 内部管理体制・コンプライアンス体制が整っているか

投資は長期にわたるものです。サービスの便利さだけでなく、会社としての信頼性・安全性もしっかり見極めた上で、証券会社を選んでいきましょう。


本記事は公開情報をもとに執筆しています。最新の状況については、moomoo証券および金融庁・関東財務局の公式発表をご確認ください。

タイトルとURLをコピーしました