近年話題の「小泉米」をめぐる報道では、「カビ毒」が注目されています。特に危険性の高い「アフラトキシン」とは? メッシュチェック(メッシュ検査)やカビ毒検査の仕組みはどうなっているのか? 過去のカビ毒事故を振り返りながら、消費者目線で分かりやすく解説します。
メッシュ検査とは何か?
メッシュ検査は、農林水産省が政府備蓄米の放出時に定める品質チェックの一つです。玄米状態の米を、縦横45度に交差させた二重の金属網(1cm四方)に通し、外観、色、異臭やカビ状の塊がないかを目視中心に確認します。これにより、袋全体ではなく均等に配置されたサンプルから異常を見つけ出す手法です。
国の説明によれば、「国がメッシュチェックを行うか、買受者(小売業者)が行えばよい」とされており、「検査が任意化された」という一部報道内容は誤解であるとされています。
カビ毒検査とは?
メッシュ検査が外観チェックにとどまる一方、カビ毒検査は科学的分析による定量検査です。特に「アフラトキシンB₁」は、肝臓がんリスクの高い発がん性物質として知られ、食品衛生法により「検出限界以下(0.01 mg/kg)」にする必要があります。
農水省は備蓄米(および輸入米)を販売する直前に、袋を開封して全量をメッシュ通過させ、カビ状異物がなければ試料を採取し、カビ毒の分析を行うと明記しています。仮に規制値を超える濃度が検出された場合は、該当単位全体を廃棄するとしています。

カビ毒は様々な食品に発生する
カビ毒は、カビが発生する環境(高温多湿、不適切な保管など)であれば、米に限らず、以下のような様々な穀物や食品に発生する可能性があります。
- 小麦、大麦、トウモロコシ: デオキシニバレノール(DON)、ゼアラレノン、フモニシンなどが問題となることが多いです。
- ナッツ類(ピーナッツ、アーモンドなど): アフラトキシンが特に問題となります。
- 香辛料: アフラトキシンなどが問題となることがあります。
- コーヒー豆: オクラトキシンAなどが問題となることがあります。
- 飼料: 家畜の健康被害につながるため、飼料用穀物でもカビ毒の管理は重要です。
日本では、食品衛生法に基づいてカビ毒の基準値が定められています。特に、発がん性の強いアフラトキシンについては、「全ての食品から検出されてはならない」という厳しい基準が設けられています。
今回の備蓄米で問題になったメッシュ検査は、あくまでもカビの塊や目に見える異物を除去するための初期的なスクリーニングです。これは、備蓄米に限らず、穀物の品質管理において一般的に行われる検査手法の一つと言えます。
なぜ不安が残るのか?消費者視点の懸念
国は「適切に検査と管理がなされている」とする一方で、消費者目線では以下のような懸念があります。
- 「国か買受者が行えばよい」体制
→ 消費者は、どちらが実際に検査をしたのか確認できない。 - カビ毒分析の実施タイミングや透明性
→ 小売が実施したとしても、情報開示がなく、消費者は証拠を得られない。 - ドン・キホーテが「回答控え」
→ 週刊誌の取材に対し、検査有無を回答していない状況。情報不足による不信感が強まります。
アフラトキシンの危険性とは
アフラトキシンは国際がん研究機関(IARC)によって「グループ1」発がん性物質に分類されており、その毒性は非常に強力です。肝臓に蓄積されやすく、急性では肝障害を引き起こし、慢性では肝硬変やがんにつながるケースがあります。
さらに、加熱や調理によっても完全には分解されず、家庭調理では除去が困難です。
過去のカビ毒による事故・事件
カビ毒がもたらした深刻な事故事例は、以下の通りです。
- 1960年・英国「七面鳥大量死事件」
アフラトキシン汚染された餌により10万羽以上が死亡。発見のきっかけとなった事件。 - 旧ソ連「ATA症候群」
トリコテセン類が原因とされる集団中毒。多くの住民が健康被害を受けました。 - 1950年代・日本の赤かび病
小麦へのトリコテセン汚染による消化器系中毒が多数発生。 - 2007年・三笠フーズ事故米問題
アフラトキシン含有の事故米が誤って流通し、食の安全に大きな衝撃を与えました。 - 2011年・国内米からのアフラトキシン検出
長期保管された国内米から基準を超える濃度が検出され、保存管理の見直しが必要とされました。 - 2021年・ドッグフードにカビ毒が混入、米で犬70頭以上が死亡
アフラトキシンが、ペットフードの原料の穀物で発生した例は少なくない。
消費者ができること
私たち消費者が安心して備蓄米を購入するためには、以下のような対応が必要です。
- 購入店へ「検査の実施有無・方法」の公開を求める
→ メッシュ検査・カビ毒の分析の実施証明が得られるか確認。 - 適切な保管方法を心がける
→ 高温多湿を避け、精米日や賞味期限にも注意。 - 情報開示や改善要望を行政にも届ける
→ 国に対し検査体制の実態や透明性向上を働きかける。
まとめ
- メッシュ検査は外観異常の確認で、カビ毒検査は科学的な毒素分析。
- 国の制度では「どちらかが行えばよい」とされますが、実際にどちらが実施したのかは消費者に見えにくく、不安の種になります。
- アフラトキシンは非常に毒性が高く、過去にも重大な被害をもたらした歴史があるため、制度だけではなく「情報公開」が不可欠です。
今回の「小泉米」騒動を契機に、小売・行政が検査実態を明示し、消費者が安心して購入できる環境づくりが求められています。