富山市の2025年国勢調査をめぐり、人口を実際より多く報告した疑いが明らかになりました。
総務省は9月29日、国勢調査に関わった富山市職員を、統計法違反の疑いで富山県警に告発しています。水増しされたとみられる人口は少なくとも2000人以上に上るとされ、富山市側も組織内で不適切な処理が行われた可能性を認めています。
今回は、富山市の国勢調査で何が起きたのか、これまでに分かっている内容を整理します。
富山市の国勢調査で何が問題になったのか
問題となっているのは、2025年10月1日を基準日に実施された国勢調査です。
総務省によると、富山市では国勢調査員が現地を確認した結果、「居住実態なし」として抹消した世帯を、特段の根拠がないまま存在するものとして扱ったり、実際には居住実態のない世帯を新たに追加したりした疑いがあります。
さらに、こうした世帯について調査票を作成することで、富山市の人口を実際より多く報告した疑いが持たれています。総務省は、この行為について統計法違反の疑いがあるとして、富山県警に告発しました。
総務省の告発では、対象となる富山市職員の氏名は明らかにされていません。告発されたのは「令和7年国勢調査実施時の富山市職員」とされており、現時点では誰が具体的に関与したのか、どのような経緯で処理が行われたのかについて、県警が捜査を進めている段階です。総務省によると、水増しされた疑いのある人数は少なくとも2000人以上とされています。
職員21人が調査票の審査を担当
今回の問題で注目されているのが、調査票を審査する富山市側の事務です。富山市では、町内会や自治振興会などから推薦された2011人の国勢調査員が調査票を回収し、その後、市職員である308人の指導員が内容を確認しました。そのうえで、企画調整課の統計係6人を中心に、課員21人が2025年12月上旬から2026年1月下旬にかけて調査票の記載内容を審査していました。
今回、富山市の企画管理部幹部は、人口の水増しが行われたとすれば、調査員による現地調査の段階ではなく、その後の市側の審査過程で行われた可能性があるとの認識を示しています。ただし、21人全員が不正に関与したという意味ではありません。誰がどのような処理を行ったのか、意図的だったのかについては、今後の捜査で明らかになるとみられます。
速報値では人口40万人を超えていた
今回の問題を分かりやすくするうえで重要なのが、富山市の国勢調査人口の「速報値」と「確定値」の差です。2026年5月に公表された速報値では、富山市の人口は40万2133人とされていました。しかし、総務省が9月29日に公表した確定値では39万9197人となり、速報値から2936人減少しています。
この差が生じた背景には、総務省が富山市から提出されたデータを精査した結果、人口について疑義が生じたことがあります。総務省の統計局職員は9月上旬に富山市役所を訪れ、調査内容を確認していました。その後、富山市職員による人口水増しの疑いが明らかになり、総務省は統計法違反の疑いで刑事告発することを決めました。
なぜ人口を水増ししたのかはまだ不明
現時点で大きな焦点となっているのが、「なぜ水増しが行われたのか」という点です。
富山市の藤井裕久市長は9月29日、組織として誤った処理をしていたとの認識を示して謝罪しています。一方で、人口40万人を維持することや、特定の行政上の目的などを狙って水増ししたのかについては、現時点で確定した事実はありません。報道ではさまざまな可能性が取り上げられていますが、動機については捜査による事実確認を待つ必要があります。
富山市側の幹部も、職員が意図的に関与した可能性について「分からない」と説明しています。そのため、現在分かっているのは、人口を水増しした疑いのある処理が行われ、総務省が統計法違反の疑いで市職員を告発したという段階です。
今後は、実際に処理を行った職員、指示や承認をした人物がいたのか、どの時点で数字が変更されたのかなどが捜査の焦点になると考えられます。
国勢調査への信頼にも影響
国勢調査は、日本の人口や世帯の状況を把握するために5年ごとに実施される重要な統計調査です。今回の問題では、現地を訪問して実態を確認する調査員、その内容を確認する指導員、さらに市役所で審査する担当者という複数の段階が設けられていました。
それにもかかわらず人口を過大に報告した疑いが生じたことで、調査結果だけでなく、国勢調査そのものに対する信頼にも影響する問題となっています。
今回の件では、少なくとも2000人以上の人口を水増しした疑いについて総務省が刑事告発するという異例の事態になりました。今後は富山県警の捜査によって、実際に何人分のデータが変更されたのか、誰がどのような処理を行ったのか、そして組織としてどこまで関与していたのかが明らかになるかが重要になります。
現段階ではまだ捜査中であり、個々の職員の関与や動機について断定することはできません。富山市には事実関係を明らかにするとともに、国勢調査をはじめとする公的統計への信頼を回復するための対応が求められています。

