2025年12月、居酒屋チェーン「養老乃瀧」グループを巡り、SNS上で拡散された一枚の写真が大きな波紋を広げました。問題となったのは、店舗内で醤油の容器をそのまま口にするような様子を撮影した画像です。この投稿がSNS上で拡散され、「不衛生ではないか」「店の管理体制は大丈夫なのか」といった批判や不安の声が相次ぎました。
これを受け、養老乃瀧は公式サイトで声明を発表し、事実関係の確認と再発防止に向けた対応を進めていることを明らかにしました。投稿者本人は「店の備え付けではなく、持ち込んだ醤油だ」と主張しているとされていますが、店舗側ではその真偽を断定できていないとしています。その一方で、画像に写っていた醤油と同一商品が店舗でも使用されていたことから、卓上の醤油をすべて回収し、新品に交換する措置を取りました。
企業として顧客の安心を最優先した対応であり、SNS時代における危機管理の難しさを象徴する事例と言えるでしょう。
飲食店で相次ぐSNS迷惑行為とは何か
今回の件は、養老乃瀧に限った特別な出来事ではありません。近年、飲食店を舞台にしたSNS迷惑行為が社会問題として定着しています。いわゆる「炎上目的」の投稿や、軽い悪ふざけのつもりで行った行為が、結果的に店舗や企業に甚大な被害を与えるケースが後を絶ちません。
代表的な迷惑行為として、次のようなものがあります。
- 回転寿司チェーンなどで、醤油差しや湯呑みを舐める行為を撮影して投稿する
- 共用の紅しょうがや天かすを直箸で食べる様子をSNSにアップする
- 卓上の調味料や食器を不適切に扱い、その様子を動画で拡散する
これらは単なるマナー違反にとどまらず、食品衛生の観点からも重大な問題です。実際、過去にはこうした動画が拡散された直後から来店客が激減し、売上の大幅減少や株価下落にまで発展した事例もありました。
スシロー事件に見る「炎上」の現実的な代償
SNS迷惑行為の深刻さを象徴するのが、大手回転寿司チェーン・スシローで発生した一連の事件です。客が卓上の醤油差しを舐める動画が拡散され、社会的な批判が集中しました。この件では、運営会社が高額な損害賠償を求めて法的措置に踏み切ったことが大きな話題となりました。
最終的には調停が成立し訴えは取り下げられましたが、「悪ふざけ」で済まされない現実的な責任が問われた点は、多くの人に強い印象を残しました。SNS上での一瞬の行為が、企業の信用、従業員の雇用、株主や取引先にまで影響を及ぼすことが明確になったのです。

客だけではない「バイトテロ」という内部リスク
飲食店を脅かすのは、来店客による迷惑行為だけではありません。従業員による不適切行為、いわゆる「バイトテロ」も、深刻な問題として繰り返し発生しています。
バイトテロの典型例としては、
- 調理中の食材を床に落としたにもかかわらず、そのまま使用する
- 清掃が不十分な器具や食器を使って調理する
- 店内の商品や調理器具を使って悪ふざけをし、その様子をSNSに投稿する
といった行為が挙げられます。これらは明確に食品衛生法や就業規則に反する行為であり、企業イメージを著しく損ないます。一度拡散された動画や画像は完全に消すことが難しく、店舗の信頼回復には長い時間とコストが必要になります。
飲食店に求められる現実的な炎上対策
SNS迷惑行為やバイトテロが常態化する中で、飲食店には従来以上に包括的な対策が求められています。
まず重要なのが、撮影・投稿に関するルールの明確化です。店内撮影を原則禁止、または許可制とし、注意書きを掲示することで抑止効果が期待できます。
次に、卓上調味料や共用備品の提供方法の見直しです。必要に応じて小分け容器にする、従業員が手渡しで提供するなど、物理的に不正行為を起こしにくい環境づくりが有効です。
さらに、防犯カメラの設置や、従業員教育の徹底も欠かせません。特にアルバイトに対しては、SNS利用に関するリスクや責任について具体的に説明し、「投稿してはいけない理由」を理解させることが重要です。
迷惑行為には毅然とした法的対応も必要
発生後の対応としては、事実確認を迅速かつ正確に行い、必要に応じて法的措置を検討する姿勢が不可欠です。刑事・民事の両面から責任を追及する可能性を示すことは、模倣犯の抑止にもつながります。
企業が「泣き寝入り」をしない姿勢を明確にすることで、結果的に業界全体の健全化にも寄与します。
まとめ:SNS時代の飲食店経営に必要な視点
養老乃瀧の醤油写真拡散問題は、SNS迷惑行為がもはや一過性の話題ではなく、飲食店経営における重大なリスク要因であることを改めて浮き彫りにしました。来店客による迷惑行為、従業員によるバイトテロ、そのどちらもが店舗の信用を一瞬で崩しかねません。
重要なのは、問題が起きた後の謝罪だけでなく、起きにくい仕組みを作り、起きた場合は毅然と対処する姿勢です。安心・安全な食の場を守るため、飲食店と利用者の双方に、より高い意識と責任が求められています。

