「ショウリンジ」と叫びながら110番通報したり、交番に侵入して迷惑行為をしたりする動画がSNSで拡散し、各地で問題になっています。
大阪府警は2026年10月23日、7歳から16歳までの少年少女43人を検挙・補導したと明らかにしました。兵庫県でも小学生から高校生までの約25人が検挙・補導されており、子どもを含む若者の間で模倣行為が広がっています。
SNSでは「少林寺レーシング」と呼ばれていますが、単なるいたずらでは済まされません。緊急通報を妨げる危険性があるほか、交番の設備を壊せば犯罪に問われる可能性もあります。今回の事件で何が起きているのか、問題点や法的責任を整理します。
「少林寺レーシング」とはどのような行為なのか
「少林寺レーシング」とは、SNS上で拡散している、交番や110番通報を利用した迷惑行為を指す呼び名です。交番に立ち入って「ショウリンジ」と叫んだり、110番に電話して同じ言葉を叫んで切ったりする様子を撮影し、動画として投稿する行為が確認されています。
行為はそれだけにとどまりません。報道によると、交番内のポスターを破る、自転車を倒す、爆竹を投げ込む、ジュースをまき散らすといった事例も発生しています。さらに、交番のガラス戸を蹴って破損させた事件もありました。
これらの行為は、SNSで注目を集めたり、友人を笑わせたりする目的で行われているとみられます。実際に、少年らは警察に対し「SNSで動画を見て真似をした」「警察官をおちょくるのが面白そうだと思った」などと話していると報じられています。
大阪で43人、兵庫で約25人を検挙・補導
大阪府警は、2026年9月中旬から10月21日までに、約200件の110番通報を含む約250件の関連行為を確認しました。関与したとして検挙・補導されたのは7歳から16歳までの少年少女43人で、小学校1年生も含まれています。
このうち、14歳の中学3年生の男子生徒は、交番のガラス戸を蹴って壊したとして、建造物損壊の疑いで逮捕されました。警察官をからかう動画を見て、面白そうだと思ったという趣旨の説明をしていると報じられています。
兵庫県でも同様の行為が相次いでいます。県警は9月下旬から10月にかけて、「ショウリンジ」と叫ぶ110番通報や、交番内にジュースをまき散らす行為などを確認し、小学校低学年から高校生までの約25人を検挙・補導しました。
さらに、共同通信などの報道によると、岡山県警でも同様の110番通報が40件以上確認されています。大阪や兵庫だけの問題ではなく、SNSを通じて模倣行為が複数の地域に広がっていることが懸念されます。
なお、大阪の43人と兵庫の約25人は、それぞれの県警が発表した人数です。検挙と補導は異なる対応であり、全員が同じ犯罪で逮捕されたという意味ではありません。
110番へのいたずらが引き起こす重大な問題
今回の問題で特に深刻なのは、110番通報が本当に助けを必要としている人への対応に影響する可能性があることです。
110番は、事件や事故が発生した際に警察へ緊急通報するための電話番号です。通報を受けた警察は、現場の状況や場所を確認し、必要に応じて警察官やパトカーを派遣します。
いたずら電話が繰り返されれば、通報を受ける側の業務が増え、緊急性の高い事件や事故への対応に影響するおそれがあります。静岡県警も、いたずらや無言電話などの不要不急の110番通報が、緊急通報の妨げになるとして適切な利用を呼びかけています。
例えば、誰かが交通事故に遭ってけがをしていたり、犯罪の被害を受けて助けを求めていたりする状況で、警察への連絡が遅れれば、被害が拡大する可能性もあります。自分たちが面白がって行ったいたずらが、直接関係のない人の命や安全に影響する可能性があるという点を理解する必要があります。
また、交番は地域の安全を守るための公共施設です。無断で立ち入ったり、設備を壊したりすれば、警察官の業務を妨げるだけでなく、修理費用などの損害も発生します。
交番への侵入や110番のいたずらは犯罪になるのか
「遊び感覚でやった」「動画を撮影したかった」という理由であっても、法律上の責任がなくなるわけではありません。
行為の内容や状況によっては、建造物損壊、業務妨害、軽犯罪法違反などに問われる可能性があります。大阪で逮捕された14歳の男子生徒は、交番のガラス戸を壊した建造物損壊の疑いが持たれています。
ただし、110番で「ショウリンジ」と叫ぶ行為や、交番に立ち入る行為が、すべて同じ犯罪に該当するわけではありません。具体的な行為や証拠などに基づいて判断されます。
ここで注意したいのが、関与した少年の年齢です。
日本では、14歳未満の子どもは刑事責任を問われません。しかし、刑罰法令に触れる行為をした場合、何も責任を問われないという意味ではありません。警察による調査や児童相談所への通告などを経て、必要に応じて福祉的な対応や家庭裁判所での手続きが行われることがあります。
一方、14歳以上の少年が犯罪に該当する行為をした場合は、少年事件として手続きが進められます。年齢や行為の内容などによって、その後の対応は異なります。
また、交番の設備を壊した場合などには、民事上の損害賠償が問題になる可能性もあります。未成年者が起こした損害について、保護者が必ず賠償責任を負うわけではありませんが、監督義務や具体的な事情によっては責任が問われることもあります。
SNSの流行を真似することの危険性
今回の事件では、SNSで見た動画を真似したという趣旨の説明が複数報じられています。動画を見て面白いと感じ、同じことをすれば友人に受ける、再生回数を増やせると考えた可能性があります。
しかし、SNSで拡散されているからといって、行為が許されるわけではありません。撮影した動画を投稿すれば、行為そのものだけでなく、投稿した映像や関連情報が新たな批判や捜査のきっかけになることもあります。
特に、警察施設への侵入や設備の破損、緊急通報の妨害は、単なる悪ふざけとして扱えるものではありません。動画を撮影するために行為を繰り返せば、被害が大きくなる可能性もあります。
子どもが関与している点については、本人が行為の重大さを理解していない可能性も考えられます。保護者や学校が、SNS上の流行を真似することの危険性や、公共施設を利用する際のルールについて伝えることも重要です。
まとめ
「少林寺レーシング」と呼ばれる迷惑行為は、SNS上の動画をきっかけに広がり、大阪では少年少女43人、兵庫では約25人が検挙・補導される事態となりました。110番へのいたずらや交番への侵入、設備の破損など、行為の内容によっては犯罪に該当する可能性があります。
一時的な面白さやSNSでの注目を目的とした行為でも、緊急通報への対応を妨げたり、他人に被害を与えたりすれば、重大な結果につながりかねません。 警察が厳正に対処する姿勢を示していることも踏まえ、SNSで流行しているという理由だけで安易に模倣しないことが求められます。
