豪雨で道路が冠水した光景は、いまや毎年のように各地で見られるようになりました。
そんななか、配信サイト「Kick」で活動する配信者軍団「キッカーズ」のぞっくんさんが、豪雨のなかで行った配信のあとに体調を崩し、病院で細菌感染の可能性を指摘されたと自身のXで報告し、大きな話題となっています。
冠水した水に触れることが、なぜ健康被害につながるのでしょうか。
今回はこの出来事の経緯をたどりながら、水害時に注意したい感染症や、冠水した水に触れた場合の備えについて、公的機関などが公開している情報をもとにまとめます。
ぞっくんさんが豪雨配信後に高熱と血尿を訴えた経緯
ぞっくんさんは「線状降水帯リポート」を配信
ぞっくんさんは千葉県を拠点に、動画配信プラットフォーム「Kick」などで「キッカーズ」と呼ばれる配信者集団の一員として活動しています。
日常の散歩や心霊スポット巡りなど幅広い内容の配信を行う一方、気象庁が警戒を呼びかける「線状降水帯」の発生時に現場へ赴き、豪雨や浸水の状況をリアルタイムで伝える「線状降水帯リポート」シリーズでも知られていました。
危険な箇所に接近したり、雨のなかで行動したりする様子が特徴で、視聴者からは現場の臨場感を評価する声がある一方、安全性を心配する指摘もあったといいます。
9月6日の豪雨配信で冠水した道路へ
問題の配信は、9月6日に行われた「線状降水帯リポート2」でした。
千葉県などで発生した線状降水帯の影響で各地が冠水するなか、ぞっくんさんは現地の状況を生配信で伝えていました。
その配信中、コメント欄のリクエストに応じる形で、車に持ち込んだリンスインシャンプーを使い、降りしきる雨をシャワー代わりに屋外で頭を洗い始めます。
ところが雨量が足りず、泡が流れきらなかったため、泡だらけの頭のまま、より雨脚の強い場所を求めて車で移動していったと伝えられています。
冠水した水たまりに頭をつける場面も
それでも泡は落ちず、最終的にぞっくんさんは路上の水たまりに頭を突っ込んで泡を洗い流しました。
この場面ではコメント欄から体調を心配する声が上がりましたが、本人は泡が落ちたと応じていたといいます。
一連の様子は視聴者によってXにも投稿され、拡散していきました。
配信から3日後に高熱と血尿を報告
配信から3日後の9月10日、ぞっくんさんはXを更新します。
2日間ほど38度の熱が下がらず、その後は排尿が難しい状態になり、血尿も出たため受診したという経緯をつづりました。
そして医師からは、洪水配信で汚水に浸かったことが原因で何らかの細菌に感染した可能性が高いと説明されたこと、新型コロナウイルスやインフルエンザではないと伝えられたことを報告しています。
さらに尿検査で多数の細菌が検出されたとして、2週間の投薬治療を受けること、それで改善しない場合は腎臓への影響を調べる検査を行う見込みであることも明かしました。
投稿には体調を気遣うコメントが多数寄せられ、早く受診してよかったという声も並んでいます。
なぜ冠水した道路の水は危険なのか?汚水や細菌に注意
ここで押さえておきたいのは、冠水した水は必ずしも雨水だけではないという点です。
冠水した水には下水や生活排水が混ざることがある
豪雨で路面が冠水すると、下水道が逆流する可能性があります。
マンホールから下水が逆流した場合などには、汚水が混入している可能性があり、感染症の発生予防のために消毒が必要になると各自治体が呼びかけています。
汚水には多くの有機物が含まれており、細菌などが存在する可能性があります。
さらに、浸水した場所に汚泥が堆積することで、衛生環境が悪化することもあります。
冠水した水には泥や油などが混ざっている可能性も
冠水した水が茶色く濁って見えるのは、下水や生活排水、道路の油分、土壌の泥などが混ざり合っているためです。
もちろん、見た目だけでその水にどのような病原体が含まれているかを判断することはできません。
そのため、「雨水だから大丈夫」と考えて、冠水した水に直接触れるのは避けたほうが安全です。
頭や顔を冠水した水につけるのは避ける
特に注意したいのが、冠水した水を顔や口、鼻、目などに触れさせることです。
冠水した水にはさまざまな汚れや微生物が含まれている可能性があるため、水たまりに頭や顔をつけるような行為は避けるべきです。

水害後に注意したい感染症とは?
水害後の泥水やがれきに関わる作業については、公的機関からいくつかの感染症について注意喚起が出ています。
レプトスピラ症|洪水や汚染された水から感染することがある
ひとつがレプトスピラ症です。
ネズミや家畜などの尿で汚染された水や土壌にいる病原性レプトスピラが、口や傷ついた皮膚などから侵入して感染することがあります。
大雨や洪水の後は、汚染水が長時間滞留したり、衛生状態が悪化したりすることで、感染のリスクが高くなるとされています。
国内でも、2018年の西日本豪雨の後に、土のう積みや排水作業に従事した消防団員が発症した例が報告されています。
破傷風|水害後の傷口から感染するリスクに注意
もうひとつが破傷風です。
破傷風菌は土の中などに広く存在しており、傷口から菌が入り込むことで感染することがあります。
特に水害後の清掃作業では、釘やガラス片などによるけがにも注意が必要です。
そのため、丈夫な手袋や底の厚い靴、長袖などを着用して、皮膚をできるだけ保護することが大切です。
レジオネラ症など|水害後のほこりにも注意
このほか、水が引いた後に乾いた汚泥などが舞い上がり、そのほこりを吸い込むことによって、レジオネラ症などの呼吸器感染症につながる可能性も指摘されています。
水害後の清掃作業では、泥やほこりを吸い込まないよう、マスクなどを適切に使用することが重要です。
食中毒・感染性胃腸炎|冠水した食品は食べない
下水などの汚水で浸水した場合は、食中毒などの消化器感染症にも注意が必要です。
汚水に含まれる細菌などが食品に付着する可能性があるため、冠水した食品や、汚水に触れた可能性のある食品は食べないことが基本です。
高熱や血尿が出たら?水害後は医療機関に相談
今回のケースで注目されたのが、高熱や血尿といった症状です。
ただし、ぞっくんさんの症状が具体的にどの感染症によるものだったのかについては、本人の報告だけから判断することはできません。
水や泥に触れた後の発熱は「水害との関係」を伝える
水や泥に触れた後に体調を崩したとき、「片付けの疲れ」などと自己判断してしまわないことが大切です。
医療機関からは、汚水や泥に長時間触れたあとに発熱などがあった場合、受診時に「浸水後の作業をした」など、水害との関係を伝えることが呼びかけられています。
感染症の種類によっては、こうした情報が診断や検査を考えるうえで重要になる場合があります。
深い傷や汚れた傷にも注意
傷についても注意が必要です。
深い傷や汚れが取り切れない傷、傷の周囲が赤く腫れてきた場合、発熱を伴う場合などは、医療機関への相談が勧められています。
水害後に傷を負った場合は、傷口をそのままにしないことが大切です。
判断に迷ったときは自己判断せず、早めに医療機関へ相談しましょう。

冠水した水による感染症を防ぐための対策
水害の発生時や、その後の片付けでは、できるだけ汚水や泥に直接触れないことが基本です。
冠水した道路にはできるだけ近づかない
冠水した道路には、できるだけ近づかないようにしましょう。
やむを得ず通る場合でも、裸足では歩かず、長靴や手袋などを使用して皮膚を保護することが大切です。
また、水の中には側溝やマンホールなどが隠れている可能性もあるため、感染症だけでなく転倒や転落にも注意が必要です。
水に触れたら石けんと流水で洗う
冠水した水や泥に触れてしまった場合は、石けんと流水で十分に洗い流します。
傷がある場合は、傷口をきれいにして保護することも重要です。
清掃作業では手袋・長靴・マスクを着用する
水害後の清掃では、泥やほこり、汚水などに触れる可能性があります。
そのため、手袋、長靴、長袖などで皮膚を保護し、泥やほこりが舞う環境ではマスクを使用するなど、状況に応じた対策を行いましょう。
冠水した食品は食べない
冠水した食品や、汚水に触れた可能性のある食品は口にしないようにします。
見た目や臭いに問題がなくても、安全とは限りません。
浸水した場所は洗浄・乾燥してから消毒する
浸水した箇所の消毒については、まず洗浄や拭き取りによって汚れを十分に除去し、乾かしてから行うことが基本です。
汚れが残ったままでは、消毒剤が十分な効果を発揮できない場合があります。

まとめ|豪雨や洪水の後は冠水した水による感染症に注意
今回の出来事は、ファンの要望に応えようとした配信のなかで起きたものでした。
現地の状況をいち早く伝える行為そのものには価値がある一方で、冠水した水や汚水に身体をさらす行為には相応のリスクが伴います。
水害の被災地で片付けに当たる方、取材や配信で現地に入る方、そして通勤・通学でやむを得ず冠水路を通る方。
いずれにも共通するのは、「水に触れたら洗う」「傷を保護する」「体調が変わったら早めに受診する」「受診時に水害との関わりを伝える」という基本です。
ぞっくんさんの一日も早い回復をお祈りするとともに、この事例が水害時の健康管理や感染症対策を見直すきっかけになればと思います。
