ゴールデンウィークといえば、家族や友人と一緒に楽しむ潮干狩りは定番レジャーのひとつです。潮が引いた砂浜でハマグリやアサリを掘る体験は、子どもから大人まで大いに盛り上がります。
ところが2026年のゴールデンウィーク、茨城県の人気スポット「大洗サンビーチ」では、海上保安庁や県が合同で密漁の取り締まりを実施し、次々と違反者が摘発されました。「エリアが決まっているなんて知らなかった」「駐車場のおじさんが大丈夫だと言っていた」など、信じがたい言い訳が続出したといいます。
潮干狩りは「海で自由に貝を採れる遊び」というイメージがありますが、実はしっかりとした法律のルールが存在します。今回は、潮干狩りが密漁になる理由から、罰則・守るべきルールまでをわかりやすく整理します。
なぜ潮干狩りが「密漁」になるのか?漁業権という仕組みを知ろう
「密漁」というと、プロの漁師がこっそり高級食材を大量に盗む犯罪行為をイメージする方が多いかもしれません。しかし実際には、一般人のレジャーでも立派な密漁になりえます。
その理由の核心にあるのが「漁業権」という制度です。
漁業権とは、一定の水面(海・川・湖など)において、特定の漁業を一定期間、排他的に営む権利のことです。日本の沿岸のほぼ全域には、漁業協同組合などに対してこの漁業権が設定されています。
そして、アサリやハマグリ・サザエ・ワカメ・イセエビなどの貝類・海藻類・定着性の水産動物は「第一種共同漁業権」の対象になっています。つまり、許可なくこれらを採ることは漁業権の侵害、すなわち「密漁」となるのです。
海岸に「遊漁者のみなさんへ」「注意」などと書かれた看板が立っているのを見たことはありませんか?あれはまさに、漁業権が設定されているエリアであることを示すサインです。こうした場所で無断で貝を採ると、罰則の対象になります。
政府広報オンライン:自分で食べるだけなら・・・レジャー感覚でも「密漁」に!?知っておきたい遊漁のルール
密漁の罰則はどのくらい?意外と知らない法律の重さ
「少し採っただけ」「家族で食べる分だけ」という気持ちでも、密漁になれば法律上の罰則は避けられません。主な罰則は以下のとおりです。
① 漁業権の侵害(漁業法違反)
漁業権が設定されたエリアで無断で貝を採ると、100万円以下の罰金が科される可能性があります。
② 禁止区域・禁止期間の違反(漁業調整規則違反)
各都道府県が定める漁業調整規則に違反した場合、罰金または懲役が科されます。内容は都道府県によって異なりますが、決して軽い罰則ではありません。
③ アワビ・ナマコ・シラスウナギは特別扱い
2018年(平成30年)の漁業法改正により、アワビ・ナマコ・シラスウナギ(ウナギの稚魚)については、許可に基づく場合を除いて採捕すること自体が新たに禁止されました。違反した場合には3年以下の拘禁刑または3,000万円以下の罰金という非常に重い罰則が設けられています。たとえ自分で食べる分だけであっても、絶対に捕ってはいけません。
このように、密漁の罰則は決して軽いものではありません。「知らなかった」「遊びのつもりだった」という言い訳は法律上通用しないことを、しっかりと認識しておく必要があります。
大洗サンビーチで起きたこと——なぜ違反者が続出したのか
今回、取り締まりが行われた茨城県の大洗サンビーチは、ゴールデンウィークに多くの人が訪れる人気の潮干狩りスポットです。このビーチでは、波消しブロックより北側では潮干狩りが楽しめますが、南側は資源保護のために禁止区域に指定されています。
ところが、当日は禁止エリアにもかかわらず潮干狩りをする人が続出しました。取材に応じた違反者たちの言い訳は「駐車場のおじさんが大丈夫と言っていた」「エリアが決まっているとは知らなかった」というものでした。
さらに驚くべきことは、ウエットスーツに本格的な網を持った人物が禁止区域の沖へ逃げ込もうとしたケースです。県の職員が荒れた海に入って追いかけ、捕まえてみると「わかんなかった」と言い張ったといいます。使い込まれた本格的な漁具を持ちながらの言い訳は、説得力が全くありません。
このような事態が毎年繰り返されてしまう背景には、「潮干狩りは自由にできる遊びだ」という誤解が広く根付いていることがあると考えられます。
潮干狩りで守るべき主なルール——事前チェックリスト
密漁にならないために、潮干狩りへ出かける前に必ず確認しておきたいポイントをまとめました。
場所を確認する
潮干狩りが許可されているエリアかどうかを、事前に自治体や漁協のウェブサイトで確認しましょう。禁止区域への立ち入りは、たとえ「知らなかった」としても違反です。管理された有料の潮干狩り場を利用すると安心です。
採ってよい貝の大きさを確認する
たとえばアサリは殻長2cm以下、ハマグリは3cm以下の採捕が禁止されている地域があります(三重県の例)。小さな稚貝を持ち帰ることは違反になるだけでなく、資源の枯渇にもつながります。
1日に持ち帰れる量を確認する
静岡県浜名湖では、アサリの採捕量は1人あたり1日2kgまでという制限が設けられています。地域ごとに上限が異なりますので、必ず現地のルールを確認してください。
使用できる道具を確認する
「じょれん」(網やカゴが付いた道具)は多くの潮干狩り場で遊漁者には使用禁止とされています。また近年は「忍者くまで」(クマデの爪に網がついたもの)の使用を禁止する場所も増えています。くまでについても、幅・柄の長さ・爪の長さに制限がある場合があります。ウェットスーツや本格的な漁具を持ち込むことも、場合によっては問題視されます。
水産庁:都道府県漁業調整規則で定められている遊漁で使用できる漁具・漁法(海面のみ)
水産資源は「みんなの財産」——ルールを守ることの大切さ
潮干狩りのルールは、単に「法律だから守る」という義務の話だけではありません。水産資源は、漁業で生計を立てている漁師さんにとっての大切な財産であり、将来の世代に引き継がれるべきみんなの財産でもあります。
実際、近年はアサリの漁獲量が激減しており、2020年のアサリ漁獲量はピークだった1983年の約3%にまで落ち込んだという報告もあります。静岡県浜名湖では潮干狩りが5年以上にわたって中止となるなど、資源の減少は深刻な問題となっています。
一人ひとりがルールを守ることが、地元の漁業を守り、未来も潮干狩りを楽しめる環境を守ることにつながるのです。
海上保安庁や各都道府県による取り締まりパトロールは年々強化されており、SNSに投稿した写真や動画が密漁発覚のきっかけになるケースも増えています。「バレなければいい」という考えは通用しない時代です。
まとめ——楽しい潮干狩りのために、まずルール確認を
潮干狩りは、自然の中で家族や友人と過ごせる素晴らしいレジャーです。しかし、その楽しさを守るためには、法律とルールをしっかり理解することが欠かせません。
出かける前に必ず、「そのビーチで潮干狩りができるか」「採ってよい貝の種類・大きさ・量はどのくらいか」「どんな道具が使えるか」を確認しましょう。管理された有料の潮干狩り場を選ぶことが、最もトラブルを避けられる方法です。
「知らなかった」では済まされません。正しい知識を持って、安全に・合法に・気持ちよく、旬のハマグリ・アサリを楽しんでください。
