埼玉県川島町が、特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」の駆除に対して1匹100円の奨励金を交付する事業を実施したところ、6月1日から7月16日までのわずか1カ月半余りで、対象となる7万匹分の交付を終え、本年度の受け付けを終了しました。
町は途中で予算が不足し、2度にわたって補正予算を組んで対応しましたが、それでも申請が相次ぎ、限度額に達したといいます。町の担当者は「自治体単独でこれほど多くの個体を駆除した実績は他に例がない」と話しています。
今回は、このニュースをきっかけに、クビアカツヤカミキリとはどのような昆虫なのか、被害の実態、そして駆除を巡る自治体の取り組みについてお伝えします。

クビアカツヤカミキリとはどんな昆虫か
クビアカツヤカミキリ(学名:Aromia bungii)は、中国や朝鮮半島、ベトナム北部などが原産のカミキリムシの仲間です。クビアカツヤカミキリに毒はありません。人に毒を吐いたり、刺したりする危険な虫ではありませんが、サクラやモモなどの木を枯らしてしまう「特定外来生物」です。 素手で捕まえたりすると、強い顎で噛みつかれることがあるため注意が必要です。身の危険を感じるとじゃこような独特の強い匂い(刺激臭)を出すことがあります。
体長は2.5~4センチメートルほどで、全身が光沢のある黒色をしており、名前の通り胸部(首の部分)が赤いのが特徴です。輸入木材や梱包材、輸送用パレットなどに幼虫が入り込んだ状態で運ばれ、日本国内で成虫になったことがきっかけで広がったと考えられています。
クビアカツヤカミキリを見つけたら、その場で踏みつぶすか殺虫剤で駆除し、生きたまま持ち運ばずに自治体へ連絡してください。本種は特定外来生物に指定されており、生きたままの持ち運びや飼育は法律で禁止されています。
クビアカツヤカミキリの被害
日本で最初に被害が確認されたのは2012年の愛知県で、その後2013年に埼玉県、2015年に群馬県・東京都・大阪府・徳島県、2016年に栃木県と、確認される地域が年々増えてきました。
2026年7月時点では、茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨・岐阜・愛知・三重・滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島・香川の19都府県で発生が確認されています。被害の急速な拡大を受け、2018年1月15日付で外来生物法に基づく「特定外来生物」に指定されました。
成虫はサクラやウメ、モモ、スモモなどバラ科の樹木の樹皮に卵を産み付けます。孵化した幼虫は2~3年ほどかけて樹木の内部を食い荒らし、その間、フンと木くずが混ざった「フラス」と呼ばれる特有の排出物を大量に出します。このフラスが樹木の根元に大量に積もっているかどうかが、被害を見つける手がかりになります。
被害の実態―サクラ並木や果樹園が枯れる恐れ
幼虫による食害が進むと、樹木は水分や養分を運べなくなり、やがて枯死してしまいます。
枯れた木は枝が落ちたり倒木したりする危険があり、街路樹や公園のサクラ並木では通行人への被害も懸念されます。
またモモやウメなどの果樹園では、収穫量の減少に直結するため、農業への影響も深刻です。在来のカミキリムシに比べて狭い範囲で大量に繁殖する傾向があるため、被害の進行が速いのも特徴とされています。

川島町の奨励金制度が7万匹に達するまで
川島町では2024年に初めてクビアカツヤカミキリの侵入が確認されました。
町は6月1日から9月30日までを交付期間として当初15万円の事業費を組みましたが、6月17日の時点で早くも限度額に達し、予備費などを充てて計350万円に増額。
それでも申請は収まらず、7月10日の臨時町議会でさらに350万円の補正予算を追加提案し、合計700万円(7万匹分)の予算で対応しました。しかし13日に受け付けを再開してからわずか数日後の16日には、再び限度額に到達しています。
この制度の大きな特徴は、駆除の場所を町内に限定せず、埼玉県内在住者であれば県内どこで駆除した個体でも町役場に持参すれば奨励金を交付するとした点です。
高校生や親子連れ、高齢者まで幅広い年代が持ち込み、1回で1800匹余りを申請した人もいたといいます。市町村別の集計では鴻巣市が1万7451匹と最も多く、熊谷市1万438匹、本庄市6287匹、地元の川島町は5753匹と続きました。
担当者によると、持ち込まれた個体の中には産卵前の卵を大量に抱えたメスも多く含まれており、被害の未然防止につながったとみられています。

見つけたらどうする?―その場での駆除が原則
クビアカツヤカミキリを見つけた場合は、その場で踏みつぶすか殺虫剤で駆除し、生きたまま持ち運ばずに自治体(環境担当窓口など)へ連絡するのが基本の対応です。
というのも、本種は特定外来生物に指定されているため、生きたままの持ち運びや飼育は外来生物法で禁止されているからです。捕まえたら自宅に持ち帰って観察する、といった行為も法律違反にあたります。
この規定に違反した場合、販売や配布を目的としない持ち運び・飼育であっても、個人には1年以下の懲役(拘禁刑)もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。販売・配布目的や法人による違反であれば、さらに重い罰則(個人は懲役3年以下・300万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金)が定められています。
「見つけたその場で駆除する」という原則を守ることが、法律違反を避けるうえでも、被害拡大を防ぐうえでも重要です。
繁殖させて稼ぐのは違法―特定外来生物の飼養は犯罪になる
ニュースへのコメントには「繁殖させて増やせばいいのでは」といった声も見られましたが、これは重大な誤解です。
クビアカツヤカミキリは特定外来生物に指定されているため、外来生物法により生きたまま飼育したり、運搬したりすることが原則禁止されています。
違反した場合、販売や配布を目的としない飼養であっても、個人には1年以下の懲役(拘禁刑)もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。販売・配布目的や法人による違反であれば、さらに重い罰則(個人は懲役3年以下・300万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金)が定められています。
奨励金目当てに個体を増やそうとする行為は犯罪になりうるという点は、しっかり押さえておく必要があります。
奨励金制度は他の自治体にも広がっている
クビアカツヤカミキリの駆除奨励金は川島町に限った取り組みではありません。近隣の自治体でも、成虫の持ち込みに応じて金銭や商品券を交付する制度が広がっています。
奨励金・駆除制度の主な例
自治体によって金額や交換方法はさまざまです。クビアカツヤカミキリの駆除奨励金は川島町に限った取り組みではありません。埼玉県内では熊谷市なども1匹あたりの奨励金制度を設けており、予算の上限に達して受け付けを終了するケースが見られます。
- 埼玉県川島町:成虫1匹につき現金100円(7万匹の目標達成に伴い、2026年7月16日時点で受付終了)
- 茨城県(いばらきカミキリみっけ隊):クビアカツヤカミキリとツヤハダゴマダラカミキリの2種を合わせて10匹につき500円分のプリペイドカード(10匹未満でも限定グッズを配布)
- 東京都福生市:成虫1匹につきスタンプ1個を押印し、スタンプ10個(10匹)で共通商品券500円分と交換(1人上限100匹)
- 埼玉県越生町:10匹で500円分の商品券(上限100匹、予算100万円)と交換する制度
- 群馬県みどり市:1匹あたりポイントを付与する仕組み
クビアカツヤカミキリ以外の外来種
- 兵庫県神戸市:在来種を脅かすアカミミガメ(ミドリガメ)の捕獲に対して助成金を交付
- 奄美大島:在来の希少種を捕食するマングースの防除事業について、委託方式に代えて報奨金制度を導入すべきだという議論
外来種被害の防止に向けて、住民の協力を金銭的なインセンティブで後押しする手法は、各自治体で一定の効果を上げてきたといえそうです。
国レベルでの広域的な対策も求められている
一方で、SNSでは「自治体だけでは限界がある」「都道府県や国が主体的に動くべきだ」といった意見も多く寄せられていました。
実際、クビアカツヤカミキリは成虫が広範囲を移動できるため、一つの自治体が単独で駆除しても、隣接する地域から再び侵入してくる可能性があります。
農林水産省や環境省も、果樹産地での防除体系づくりや発生状況の調査、防除に関する交付金など全国的な支援策を行っていますが、被害を受ける自治体は年々増えているのが実情です。
他の地域で駆除した個体を別の自治体に持ち込んで申請するといった不正の懸念も指摘されており、広域での情報共有や統一的なルールづくりなど、国主導での体制強化が今後の課題になりそうです。
まとめ
川島町の奨励金制度は、住民の協力を得て短期間で7万匹という大きな成果を上げた一方、予算の見直しを迫られるほど申請が相次いだことも事実です。
クビアカツヤカミキリは中国などを原産とし、2012年に日本で初めて確認されて以来、着実に生息域を広げてきました。
サクラや果樹への被害を食い止めるためには、個々の自治体の努力だけでなく、都道府県や国を含めた広域的な連携体制づくりが今後ますます重要になっていくといえるでしょう。
