警報機も遮断機もない踏切はなぜなくならないのか 相次ぐ死亡事故と残される理由

警報機も遮断機もない踏切はなぜなくならないのか 相次ぐ死亡事故と残される理由 時事・ニュース
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長野県大町市のJR大糸線で10月4日、15歳の男子中学生が特急列車にはねられ、死亡する痛ましい事故が起きました。事故現場となった花見踏切は、遮断機も警報機も設置されていない踏切でした。警察が事故の詳しい原因を調べています。

全国に残る「警報も遮断機もない踏切」はなぜなくならないのでしょうか。

こうした踏切は「第4種踏切」と呼ばれています。列車が近づいても警報音が鳴らず、遮断棒も下りないため、利用者自身が列車の接近を確認して安全を判断する必要があります。

本記事では、死亡事故の事例や全国の踏切数、廃止や安全対策が進まない理由を整理します。

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第4種踏切とはどのような踏切なのか

踏切は、警報機や遮断機の設置状況などによって区分されています。一般的に多く見かけるのが、警報機と遮断機の両方が設置された「第1種踏切」です。一方、第3種踏切は警報機があるものの遮断機がなく、第4種踏切には警報機も遮断機もありません。

第4種踏切では、踏切の手前で停止し、左右から列車が来ていないかを自分で確認して横断することになります。しかし、警報音や遮断棒という「危険を知らせる仕組み」がないため、列車の接近に気付くのが遅れれば重大事故につながる可能性があります。

第4種踏切はなぜ残っているのか

実は、第4種踏切は以前に比べて大きく減少しています。国土交通省によると、全国の第4種踏切は2013年度には2,981カ所ありましたが、2023年度には2,367カ所まで減少し、令和6年度末には2,282カ所となっています。

それでも全国に2,000カ所以上残っているのは、単純に「危険だから設備を設置すればいい」とはいかない事情があるためです。

国土交通省も第4種踏切について、統廃合や第1種踏切への変更を進めていますが、地元との協議が難航するなどして、廃止や第1種化ができない踏切が残っています。

なぜ廃止できないのか 生活道路として使われている現実

第4種踏切の中には、長年にわたって地域住民が利用してきた生活道路や農道があります。利用者が少ない踏切であっても、近くの住民にとっては駅や学校、農地などへ向かうための重要な通路になっている場合があります。

そのため、鉄道会社が「安全のために踏切を廃止したい」と考えても、住民から「廃止されると大きく迂回しなければならない」と反対されることがあります。別の道路や踏切を整備して代替ルートを確保する必要があれば、鉄道会社だけではなく自治体や道路管理者との調整も必要になります。

事故が起きても廃止まで時間がかかるケースも

実際に、第4種踏切では事故をきっかけとして廃止や第1種化の協議が進められた例があります。

JR西日本の境線では、2022年9月、新屋第4踏切で列車と歩行者が衝突し、歩行者1人が死亡しました。この踏切では以前から隣接する新屋第3踏切と合わせて廃止する協議が行われていましたが、地元の理解を得ることが難しく、協議が長期化していました。

事故後、新屋第4踏切は第1種踏切に変更され、新屋第3踏切は廃止されています。この事例からも、事故が起きる前から危険性が認識されていても、地域の事情によって対策に時間がかかるケースがあることが分かります。

第4種踏切では過去にも死亡事故が起きている

第4種踏切をめぐっては、過去にも死亡事故が発生しています。2021年12月には、上信電鉄の栖雲寺踏切で、踏切内にしゃがみ込んでいた通行者と列車が衝突し、通行者が死亡しました。

また、JR西日本の境線では2020年、新屋第3踏切で原動機付自転車と列車が衝突する事故が起きています。この踏切も第4種踏切で、運転士が進入してくる原動機付自転車を認めて非常ブレーキを使用しましたが、衝突を避けられませんでした。

第4種踏切では、列車の接近を知らせる設備がないため、「気付いたときにはすでに近距離まで列車が迫っていた」という状況が起こり得ます。

踏切事故全体では「直前横断」が大きな問題に

第4種踏切だけでなく、踏切事故全体を見ると「直前横断」が大きな事故原因になっています。国土交通省によると、令和6年度の踏切事故は218件で、そのうち第4種踏切で発生した事故は20件、全体の9.2%でした。

原因別では「直前横断」が117件で、全体の53.7%を占めています。利用者側の不注意なども事故につながりますが、第1種踏切であれば警報音や遮断機によって「列車が近づいている」という情報を利用者に伝えることができます。

第4種踏切は、こうした安全設備による事故防止の仕組みがないこと自体が大きな問題です。

「危険なら全部なくせばいい」が難しい理由

第4種踏切をなくす方法は、大きく分ければ二つあります。ひとつは踏切そのものを廃止し、別の道路や踏切へ迂回してもらう方法です。もうひとつは警報機や遮断機を設置して第1種踏切に変更する方法です。

しかし、どちらにも費用と地域の合意が必要です。特に利用者が少ない踏切では、多額の費用をかけて設備を設置することが難しく、廃止する場合も代替道路の整備などが必要になります。

つまり、第4種踏切が残っている背景には、鉄道会社の安全対策だけでは解決できない、「安全確保」と「地域住民の生活」の両立という問題があります。

警報機や遮断機を設置する以外の対策も進んでいる

そこで近年は、第1種踏切への変更や廃止だけではなく、簡易的な安全対策も進められています。JR西日本では、第4種踏切の利用者に物理的な一時停止と左右確認を促す「踏切ゲート」などを開発し、設置を進めています。

こうした設備は、警報機や自動遮断機を設置するまでの中間的な対策として期待されています。ただし、簡易設備を設置すれば第4種踏切の問題が完全になくなるわけではありません。

危険性が高い踏切については、最終的に廃止するか、第1種踏切へ変更することが重要になります。

第4種踏切をなくすには「安全」と「地域の生活」の両立が必要

警報機も遮断機もない踏切を見ると、「なぜこんな危険な場所を残しているのか」と疑問に感じるのは当然です。しかし、その踏切を実際に利用している住民にとっては、長年使ってきた重要な生活道路である場合があります。

だからこそ、第4種踏切の問題は、鉄道会社だけに責任を求めれば解決する問題ではありません。鉄道会社、自治体、道路管理者、地域住民が、踏切を廃止した場合の代替ルートや、第1種化に必要な費用などを含めて具体的に協議する必要があります。

第4種踏切は減っているが、事故がなくなったわけではない

全国の第4種踏切は確実に減少していますが、令和6年度末でも2,282カ所が残っています。国も第4種踏切の統廃合や第1種化を進めており、踏切全体の安全対策も継続しています。

それでも今回、大町市の花見踏切で15歳の中学生が命を落とす事故が起きました。事故原因については今後の警察の調査を待つ必要がありますが、警報機も遮断機もない踏切が現在も全国に2,000カ所以上残っているという事実は、改めて考える必要があります。

第4種踏切を一気になくすことが難しいのであれば、危険性の高い場所から優先的に対策を進め、簡易ゲートなどの暫定対策も組み合わせることが重要です。

今回の事故をきっかけに、全国に残る第4種踏切について、事故が起きてから対策するのではなく、事故が起きる前に安全対策を進めることが求められています。

国土交通省「第踏切事故を起こさないために」

2歳の命奪われた所も…なぜ『遮断機ない踏切』が存在するのか 未だ残る“義務化の対象外”と鉄道会社の制約 | 東海テレビNEWS
『2歳の命奪われた所も…なぜ『遮断機ない踏切』が存在するのか 未だ残る“義務化の対象外”と鉄道会社の制約』

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