お笑いグループ「ジャングルポケット」の元メンバーである斉藤慎二被告(43)に対し、東京地方裁判所で行われた公判で、検察側は懲役7年を求刑しました。
ロケバス車内での性的暴行が問われているこの事件について、事件の経緯や被告・被害女性の主張、罪の内容、そして今後の裁判の流れをまとめます。
元ジャンポケ斉藤慎二被告 ロケバス性的暴行事件の経緯
起訴状などによりますと、事件が起きたのは2024年7月30日のことです。東京都新宿区内に駐車されていたロケバスの車内で、斉藤被告はテレビ番組で初めて共演することになった20代の女性に対し、キスをしたり体に触れたりするなどのわいせつな行為をしたうえ、性的暴行を加えたとされています。
検察側は公判で、被告が言葉巧みに女性へ迫ったうえで、ロケバス内において計3回にわたって性的暴行に及んだと指摘しています。芸能人としての知名度や影響力を利用し、女性が今後の活動に不利益が及ぶことを恐れて拒否の意思を示しにくい状況をつくったという点も、検察側の主張の柱となっています。
女性は被害後すぐに番組スタッフや警察に事実を伝え、心療内科を受診したことも明らかにされています。公判では被害女性本人が出廷し、事件によって人としての尊厳や感情を踏みにじられたという趣旨の証言をしており、精神的な影響の大きさもうかがえます。
斉藤被告と被害女性、対立する主張の内容
公判では、斉藤被告と被害女性の言い分が真っ向から対立しています。
被告人質問で斉藤被告は、女性が自分に好意を持ち、求めてくれていると受け止めていたと述べ、行為には同意があったとして無罪を主張しています。もし拒否されていたらやめていたはずだとも語り、女性の気持ちを十分にくみ取れなかった点については謝罪の言葉も述べました。
これに対し被害女性は法廷で、突然の行為に驚きと恐怖のあまり体が動かなかったと証言し、「本当に気持ち悪くて屈辱的だった」という趣旨の言葉で当時の心境を語っています。突然の出来事に抵抗する間もなかったという証言は、検察側が主張する「拒否の意思を示せない状況」を裏づける材料ともなっています。
このように、行為があったこと自体には争いがない一方で、それが同意のうえだったのか、拒否できない状況を利用したものだったのかという一点をめぐり、双方の主張が真っ向からぶつかっている状況です。
斉藤慎二とジャングルポケットのプロフィール
ジャングルポケットは2006年に結成されたお笑いトリオで、2016年にはコント日本一を決める「キングオブコント」で準優勝を果たすなど、幅広い世代に知られる存在でした。斉藤被告自身もバラエティー番組や情報番組に数多く出演し、テレビで頻繁に見かける芸能人の一人でした。
しかし2024年10月、警視庁が斉藤被告を書類送検したことを受け、所属事務所だった吉本興業は被告とのマネジメント契約を解除しました。現在は残る2人のメンバーがコンビとして活動を続けています。
斉藤慎二被告の結婚と家族構成
斉藤被告は2017年12月、タレントの瀬戸サオリさんとの結婚を発表しています。当時の会見では、夫婦二人三脚で歩んでいくという思いを込めて12月12日を入籍日に選んだことを明かしていました。
その後2019年11月には第1子となる長男が誕生し、以降は夫婦と長男の3人家族として歩んできました。瀬戸さんはInstagramなどで家族での日常や長男の様子をたびたび公開しており、ファンからも温かい反響が寄せられていました。
しかし2024年10月に斉藤被告が書類送検されたことを受け、瀬戸さんは事態についての謝罪や報道への説明をSNS上で発表し、その後しばらく更新が途絶えていました。2026年1月になって約1年3カ月ぶりに投稿を再開し、以降は手料理や長男との時間を伝える投稿を続けています。直近では、長男の誕生日を家族で祝う様子も公開されており、公判が続くなかでも家庭生活を大切にしている様子がうかがえます。
懲役7年求刑の意味とは何でしょうか
今回の求刑は「懲役7年」ですが、これはあくまで検察側が裁判所に求める刑の重さの意見であり、確定した刑罰ではありません。
裁判所が実際にどのような判決を下すかは別問題です。ただし、日本の刑事裁判では、求刑された年数からある程度差し引かれた刑が言い渡されることが多く、7年という求刑の重さは、検察が本件を悪質性の高い事件だと判断していることを示しています。
被告が問われている罪は不同意性交等罪・不同意わいせつ罪にあたります。これらは2023年の刑法改正により、それまでの「強制性交等罪」「強制わいせつ罪」から名称・要件が変更されたもので、暴行や脅迫がなくても、地位や関係性を利用して同意しない意思の形成・表明・実行を難しくさせた場合に成立し得る点が特徴です。
不同意わいせつ罪とはどのような犯罪でしょうか
斉藤被告に問われている罪の一つが不同意わいせつ罪(刑法176条)です。この罪は、相手が同意していない状態、あるいは同意しない意思を形成したり、意思を表したり、意思のとおりに行動したりすることが難しい状態につけ込んで、わいせつな行為をした場合に成立します。法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑と定められています。
この規定は2023年7月の刑法改正によって設けられたもので、それまでの「強制わいせつ罪」から名称と要件が変更されました。改正前は暴行や脅迫の存在が重視されていましたが、改正後は暴行や脅迫がなくても、次のような事由によって同意しない意思を示すことが困難な状態にあれば、罪が成立し得ることになりました。
法律で挙げられている主な事由には、以下のようなものがあります。
- 暴行・脅迫を受けた場合
- アルコールや薬物の影響がある場合
- 睡眠中や意識がはっきりしない状態にある場合
- 恐怖や驚愕によって身動きが取れなくなった場合
- 社会的な地位に基づく影響力によって、不利益を受けることへの不安を感じている場合
このほか、治療や儀式と偽ったり、パートナーと誤認させたりするなど、相手を誤信させたうえでの行為も対象に含まれます。また、16歳未満の相手に対するわいせつ行為は、たとえ本人の同意があったとされる場合でも原則として罪が成立します(13歳以上16歳未満の場合は、行為者が5歳以上年上であることが要件です)。さらに、婚姻関係にある配偶者間であっても、この罪は成立し得るとされています。
今回の事件で検察側が重視しているのも、まさにこの「社会的地位に基づく影響力によって拒否できない状況にあったかどうか」という点です。斉藤被告の芸能人としての知名度や立場が、被害女性が意思を示すことを難しくさせていたかどうかが、判決を左右する重要な争点になるとみられます。
執行猶予と実刑の可能性はあるのでしょうか
刑事裁判における執行猶予は、原則として言い渡された刑が「3年以下の懲役・禁錮」である場合に検討され得る制度です。今回、検察が7年という重い刑を求刑していることをふまえると、たとえ求刑からある程度減刑されたとしても、判決が3年以下に収まる可能性は高くないとみられます。
そのため、仮に有罪判決が言い渡された場合には、執行猶予がつかず実刑となる可能性が高いというのが一般的な見方です。もっとも、被告側は無罪を主張して争っており、そもそも有罪・無罪の判断自体が判決の最大の焦点となります。
東京地裁の判決日と今後の裁判の流れ
公判は8月5日に結審し、判決期日は11月16日に指定されています。今後は、検察側が主張する性的暴行の有無や、被害女性が同意しない意思を示すことが困難な状況にあったかどうかが、裁判所によってどう認定されるかが焦点になります。
無罪主張が続いているため、判決内容によっては控訴に発展する可能性もあります。芸能人としての社会的影響力の大きさが事件の背景として指摘されていることもあり、判決の行方は今後も注目を集めそうです。
