2026年7月17日、参議院本会議で改正皇室典範が可決・成立しました。
1947年の制定以来、初めての実質的な改正となる今回の法改正は、皇族数の減少という差し迫った課題に対応するためのものです。しかし成立直後の世論調査では、法改正への理解が「得られていない」と答えた人が6割にのぼり、内閣支持率も下落するなど、国民の受け止めは一枚岩ではありません。
この記事では、改正の中身と国連の反応、そして「なぜ男系男子にこだわるのか」という根本的な疑問について整理します。
改正皇室典範の内容 女性皇族の身分保持と「養子」制度の新設
今回の改正は大きく二つの柱からなります。
一つは、結婚後に皇族の身分を離れていた女性皇族が、希望すれば結婚後も皇族として留まれるようにする措置です。もう一つは、皇室典範がこれまで禁じてきた養子縁組を初めて制度化し、旧11宮家の男系男子を皇族の養子として迎え入れられるようにする措置です。
さらに踏み込んで、養子となった男系男子に男の子が生まれた場合、その子にも皇位継承資格を認める規定が盛り込まれました。これは、女性天皇や女系天皇を認めず、あくまで「男系による皇位継承」の枠組みを維持するという政府・与党の方針を色濃く反映したものです。採決では賛成184票に対し反対57票と、全会一致には至りませんでした。
高市早苗首相は法案成立後、長年の懸案に結論を出せたことに感慨深い思いを語り、施行に向けた準備を進める考えを示しました。宮内庁の黒田武一郎長官も、当事者となる旧宮家の男系男子の意向を丁寧に確認しながら対応していく方針をコメントしています。
国連事務総長「あらゆる分野で女性の力を発揮できる政策を」
この改正を巡っては、国連の反応にも注目が集まりました。国連の女性差別撤廃委員会は2024年、男系男子のみに皇位継承を限定する現行制度について、女性差別撤廃条約の趣旨に反するとして、日本政府に見直しを勧告していた経緯があります。これに対し日本政府は、皇位継承は国家の基本に関わる事項であり勧告になじまないとして強く抗議していました。
今回の改正成立を受け、国連本部の記者会見で日本メディアから改めて質問が出されました。国連のハク事務総長副報道官は、グテーレス事務総長の立場として、すべての国に対しあらゆる人生の場面や職業・分野で女性が力を発揮できる、包摂的な政策の採用を促していると述べました。特定の国名や制度を名指しした批判ではありませんが、国連が引き続きジェンダー平等の観点からこの問題を注視していることがうかがえます。
世論調査が示す「理解が追いついていない」現実
朝日新聞社が7月18・19日に実施した全国世論調査では、改正皇室典範について「国民の理解が得られている」と答えた人は24%にとどまり、「得られていない」と答えた人が60%と多数を占めました。高市内閣の支持率も53%となり、6月調査の60%から低下、政権発足以来初めて50%台に落ち込みました。不支持率も35%に上昇しています。
支持基盤である自民支持層では内閣支持率が高い水準を保つ一方、無党派層では不支持が支持を上回っており、皇室典範改正だけが要因とは言い切れないものの、政策への理解不足や説明不足を指摘する声が根強いことがうかがえます。
なぜ「男系男子」にこだわるのか
現行の皇室典範は、皇位は皇統に属する男系の男子が継承すると定めています。
これは、歴代天皇が例外なく男系(父方をたどると天皇に行き着く血統)で継承されてきたという歴史的経緯を重んじる考え方に基づくものです。政府・与党内には、この「男系継承」の伝統こそが皇室の正統性の根幹であり、女系天皇を認めることは皇統の性質そのものを変えてしまうという慎重論が根強くあります。
今回、養子制度を新設してまで男系の血筋を確保しようとしたのも、女性・女系天皇に踏み込むことなく皇族数を増やすための現実的な選択だったといえます。
愛子さまへの親近感と、広がる「女性天皇容認」の世論
一方で、こうした制度設計が国民の実感と必ずしも一致していないという指摘もあります。各種の世論調査では、女性が天皇になることを容認する意見が長年にわたり多数派を占めてきました。
とりわけ、愛子内親王が公務や研究活動を通じて存在感を増すにつれ、「愛子さまに皇位を」と望む声が世代を問わず広がっているとされます。愛子さまの立場や人柄への親近感が、抽象的な「男系継承の伝統」よりも、身近な実感として国民の支持を集めている構図がうかがえます。
こうした国民感情と、男系継承維持を前提とした制度改正との間にはズレが残ります。養子制度によって皇族数の減少という当面の危機は回避できたとしても、女性天皇・女系天皇を求める世論が根強く残る限り、皇位継承のあり方を巡る議論は今後も続いていくとみられます。
まとめ
改正皇室典範は、皇族数確保という喫緊の課題に一つの答えを出した一方、女性天皇を容認する世論や国連の指摘との間に溝を残したまま成立しました。今後は、養子縁組の対象となる旧宮家の男系男子の意向確認や、実際の運用に向けた準備が焦点となります。同時に、愛子内親王をはじめとする女性皇族への国民の支持をどう受け止め、将来的な皇位継承のあり方をどう議論していくのかが、引き続き問われることになりそうです。

