上野動物園の双子パンダ返還へ―日本にパンダ不在の可能性と「パンダ外交」の現実

上野動物園の双子パンダ返還へ―日本にパンダ不在の可能性と「パンダ外交」の現実 時事・ニュース
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東京都恩賜上野動物園で飼育されている双子のジャイアントパンダ、シャオシャオ(オス)とレイレイ(メス)が、来年1月下旬に中国へ返還される見通しとなりました。現在、日本国内で飼育されているパンダはこの2頭のみであり、返還が実施されれば、1972年の日中国交正常化以来、初めて国内でパンダが不在となる可能性があります。

この出来事は、単に人気動物がいなくなるという話題にとどまりません。和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドで飼育されていたパンダ4頭が2025年6月にすべて返還された流れと合わせて考えると、日本と中国の関係、そしていわゆる「パンダ外交」の現実が浮かび上がってきます。

本記事では、上野動物園の双子パンダ返還の背景、パンダ外交とは何かを整理し、わかりやすく解説します。


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上野動物園の双子パンダはなぜ返還されるのか

シャオシャオとレイレイは、2021年に上野動物園で誕生しました。両親はリーリーとシンシンで、姉にあたるシャンシャンは2023年にすでに中国へ返還されています。

ジャイアントパンダは、中国政府が所有権を持つ動物であり、日本を含む海外で飼育されているパンダはすべて「貸与」という形です。上野動物園のパンダも例外ではなく、日中両国による保護・繁殖研究を目的とした共同プロジェクトの一環として飼育されています。

双子パンダの返還期限は当初、2026年2月とされていましたが、東京都と中国側との協議の結果、期限より約1か月早い来年1月下旬に返還される方向で調整が進められています。返還そのものは契約に基づくものであり、異例というわけではありませんが、次のパンダが来日する見通しが立っていない点が大きな特徴です。


和歌山・アドベンチャーワールドで起きた「一足先の出来事」

上野動物園の状況を理解するうえで欠かせないのが、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドでの出来事です。

アドベンチャーワールドでは、1994年から中国との共同繁殖研究に取り組み、日本でも屈指のパンダ繁殖実績を誇ってきました。母パンダ「良浜(らうひん)」を中心に、多くの子どもが誕生し、「浜家(はまけ)」として親しまれてきたことは記憶に新しいところです。

しかし、2025年6月28日、同施設で飼育されていた、良浜、結浜、彩浜、楓浜の4頭すべてが中国へ返還されました。
これもまた、共同研究契約の満了に伴うもので、手続きとしては想定内の出来事でした。

結果として、日本国内のパンダは上野動物園の双子2頭のみとなり、今回の返還報道につながっています。白浜での返還は、「いずれ上野でも同じ状況が起こりうる」ことを現実として示した出来事だったと言えるでしょう。


パンダ外交とは何か

パンダ外交の基本的な考え方

パンダ外交とは、中国が自国を象徴する存在であるジャイアントパンダを、友好関係にある国や関係強化を図りたい国に提供する外交手法を指します。

1950年代から1970年代にかけては、パンダは「贈与」されることもありました。しかし、1980年代以降は野生パンダの保護を重視する方針に転換され、現在では長期貸与(リース)方式が主流となっています。

この貸与には、次のような特徴があります。

  • 所有権は中国側にある
  • 飼育国は研究・保護協力費を負担する
  • 繁殖して生まれた子パンダも中国に帰属する
  • 契約期間終了後は原則として返還される

つまり、パンダは「外交と保全」を兼ねた、極めて政治性の高い存在なのです。

パンダ外交を行っている国

中国はこれまで、日本、アメリカ、フランス、ドイツ、イギリス、オーストラリア、フィンランド、東南アジア諸国など、世界各地の国々とパンダ貸与を行ってきました。

その多くは、

  • 首脳外交の節目
  • 経済関係の強化
  • 国際協力の象徴

といった文脈で実施されており、パンダは中国のソフトパワー外交の象徴とも言われています。


なぜ今、日本でパンダがいなくなる可能性があるのか

上野と白浜、二つの事例に共通するのは、「返還は契約通りに進んでいるが、新たな貸与が決まっていない」という点です。

背景には、以下のような要因があると考えられます。

  • 日中関係の不安定さ
  • 国際政治情勢の影響
  • 貸与に伴う高額な費用負担
  • 中国国内でのパンダ保護政策の優先

とくに近年は、政治・安全保障をめぐる緊張が高まる場面も多く、動物園レベルの努力だけで解決できる問題ではなくなっています。

「高市総理VS中国」で日本からパンダはゼロに? 上野動物園「パンダ返還期限」まであと3カ月 担当者は「延長の動きはない」(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース
東京・上野動物園の双子のジャイアントパンダ、シャオシャオとレイレイが来年2月20日、中国への返還期限を迎える。すでに6月にアドベンチャーワールド(和歌山県白浜町)の4頭が返還され、この2頭が中国に

パンダ不在が意味するもの

パンダは、日本の動物園にとって最大級の集客要素であり、地域経済にも大きな影響を与えてきました。しかし一方で、今回の状況は、「パンダありき」の動物園運営を見直す契機とも言えます。

・希少動物の保全とは何か
・外交と文化交流の距離感
・動物福祉と国際政治の関係

上野動物園の双子パンダ返還は、こうした問いを私たちに投げかけています。


まとめ

  • 上野動物園の双子パンダ、シャオシャオとレイレイは来年1月下旬に中国へ返還予定
  • 和歌山・アドベンチャーワールドでは2025年6月に4頭すべてが返還済み
  • 背景にはパンダ外交と日中共同研究契約がある
  • 新たなパンダ来日の見通しは立っておらず、日本でパンダ不在となる可能性が高い

かわいらしい姿の裏側には、国際政治と外交の現実があります。上野の双子パンダが日本にいる残りの時間を、単なる「別れ」ではなく、パンダと人間、そして国と国との関係を考える機会として受け止めることが、今求められているのかもしれません。

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