2025年7月5日に日本で大災害が起きる――。
ここ最近、この話題がSNSやニュースで大きく取り上げられています。しかし、この情報の「出どころ」と「本当の意味」を、多くの人が正しく理解していないのが現状です。
今回の中心人物である漫画家・たつき諒さんは、そもそも「予言」をしたわけではないのです。
この記事では、たつきさんが伝えたかった本来の意図と、話題の書籍『私が見た未来 完全版』、そして誤解がどうしてここまで広がったのかを詳しくご紹介します。
たつき諒さんは「予言者」ではない
まず最も重要なのは、たつき諒さんは自らを予言者とは一度も名乗っていないことです。
たつきさんは、学生時代から長年にわたり、自分が見た「夢」を記録し続けてきました。それを元に描かれたのが、1999年に出版された漫画『私が見た未来』です。
この作品は、本人が夢日記としてまとめたものをオカルト漫画という形でエンターテインメントとして発表したに過ぎません。
つまり、科学書でも、予言書でもありません。あくまで“夢を題材にした創作”なのです。

「私が見た未来 完全版」の内容と誤解
たつきさんの著書『私が見た未来 完全版』は、もともと1999年版に加筆・再編集を加えたもので、2021年に出版されました。
この本の中でたつきさんは、以下のような夢を描いています。
- 日本とフィリピンの間の海底で噴火が起きた
- 非常に大きな津波が発生した
- 東日本大震災の津波の約3倍の高さだった
ここで大切なのは、地震が起きるとも、隕石が落ちるとも、たつきさん自身は書いていないことです。
しかも「7月5日」という日付についても、「夢を見た日が現実化する日ならば」という仮定で語られており、確定的な予言ではありませんでした。
むしろ本人は、新たに出版した著書『天使の遺言』(自費出版)の中でこう振り返っています。
「結果的に出版社の意向中心で出版されてしまった。不本意な思いもありました。」
たつきさん自身が、編集部の意向により、あたかも予言のように強調されてしまったことに戸惑いを感じていたのです。
7月5日=災害が起きる日? たつきさんの訂正
たつきさんは最近になって、「7月5日」という日付についても明確に訂正しています。
「夢を見た日が何かが起きる日というわけではありません。」
つまり、「7月5日」は“単に夢を見た日”であり、「その日に災害が確実に起きる」とは、本人は一切主張していません。
しかし出版後、SNSやインターネットで「予言」として情報が一人歩きし、まるで未来を断定したかのように伝わってしまったのです。
たつきさんの最新のコメントでも、「防災意識が高まること自体はよいことだが、冷静に受け止めてほしい」と述べており、本人も過熱した反応に困惑していることがうかがえます。

自費出版で伝えたかったこと
たつきさんは今回、自費出版で自伝『天使の遺言』を発表しました。
そこでは、「私が見た未来 完全版」が出版社主導で作られたことへの葛藤も語られています。
夢で見たことを純粋に描きたかったたつきさんにとって、予言として社会現象化し、海外でも騒がれたことは本意ではなかったのです。
たつきさんは、最初から最後まで、「これは私が見た夢であり、予言ではない」というスタンスを崩していません。
たつき諒さんに偽物が存在した?
『私が見た未来』注目を集めるきっかけとなったのは、YouTubeチャンネル「コヤッキースタジオ」などが、たつき諒さんの作品を紹介したことでした。
しかし、その直後、SNS上に「たつき諒先生」を名乗るアカウントが突如出現します。このアカウントは、たつきさん本人を装い、多くの人に本物と誤解されてしまいました。実際に、その偽物とコヤッキーVlogのスタッフも簡単な挨拶を交わしており、一時は出版社までもが偽物とやり取りを進めてしまう状況に陥っていました。
この偽アカウントが完全版出版の話を勝手に進めてしまったため、当初予定されていた出版スケジュールが動き始めてしまったのです。(出典:コヤッキーVlog:あの予言漫画には誰も知らない隠された秘密があった……!?【 私が見た未来 】)
『私が見た未来 完全版』出版の裏側
その後、完全版の出版は一度延期されましたが、当初その理由は公にされていませんでした。
出版社が偽物と打ち合わせを進めていたことに途中で気付き、内容を一から精査し直す必要があったために出版スケジュールが見直されたと考えられます。
このタイミングでたつき諒さん本人が偶然テレビ番組『奇跡体験!アンビリーバボー』で自分の別作品が紹介されているのを目にし、そこに信頼できる出版社の名前を見つけたことでした。この偶然をきっかけに、たつきさんは自ら出版社に連絡を取り、ようやく本物と出版社が正しくつながることができました。
オカルト漫画であり、科学ではない
たつき諒さんはもともと予言者ではなく、夢日記をもとにしたオカルト漫画を描いた作家です。
『私が見た未来 完全版』で取り上げられている内容も、「夢で見た未来」を漫画として表現したにすぎず、科学的根拠は一切ありません。たつきさん自身も、地震が起きる、隕石が落ちるといった具体的な予言をしたわけではなく、「7月5日」は夢を見た日であり、「その日に災害が起きる」と断定したことはありませんでした。
むしろ、たつきさんは近年出版した自伝『天使の遺言』の中で、「完全版は出版社の意向が強く反映されてしまい、本来伝えたかった内容とずれてしまった」と語っており、自費出版で真実を補足しようとした背景もあります。そもそもこの作品は、予言書ではなくエンターテインメント作品であり、本人も科学的な主張をするつもりはなかったのです。たつきさんは、社会現象化した自身の作品を冷静に見つめ直し、「防災意識を高めるきっかけになるなら嬉しい」と現在では前向きに語っています。
ここで改めて整理すると、
- 『私が見た未来 完全版』はオカルト漫画であり、学術的な信ぴょう性はない
- たつきさん本人は、科学的根拠も予言のつもりもないことを繰り返し説明している
- 『私が見た未来完全版』は偽物アカウントが発端で発売に致った
- 出版社の意向で「予言」風に強調されてしまった部分がある
- 自費出版で真実を伝えたかった
つまり、これは「エンタメ」であって、「事実」ではありません。
気象庁も、「科学的に日時や場所を特定した地震予知は不可能」と明言しています。
社会現象化の背景:なぜここまで広まったのか?
SNSで「バズる」情報には、共通点があります。
- 不安や恐怖を煽る内容
- 日付が特定されている
- 誰かが「当たった」と言っている
たつきさんの『私が見た未来 完全版』は、偶然にも東日本大震災の予知夢を1999年に描いていたことから、「本物では?」と感じた人が拡散しやすい状況になりました。
そこに、出版社のキャッチコピーやメディアの切り取り報道が重なり、「7月5日に災害が来るらしい」という誤解が一気に広がったのです。
集団心理による情報拡散とは
たつきさんの話題が広まったことで、便乗する配信者や自称予言者、霊能力者がSNSやYouTubeで次々と新たな「地震予言」や「隕石落下予言」を発信するようになりました。
これらの予言は、たつきさんの名前を直接出さない場合でも、潜在的にたつきさんの話題から影響を受けているケースが多いと考えられます。
このように、誰かが不安を広め、それを見た別の人がまた不安を煽る――この現象は「集団ヒステリー(Mass Hysteria)」や「同調行動」と呼ばれます。
SNS時代においては、このような現象が加速度的に広がり、デマや根拠のない情報が簡単に社会現象化してしまうのです。
特に「有名な人が言っていた」「みんなが気にしている」といった要素は、人々の心理に強い影響を与え、不安や行動が連鎖的に拡散します。
今回のたつきさんの事例も、まさに現代型の集団心理によって過熱した一例と言えるでしょう
今回の教訓:「防災」と「冷静さ」のバランス
たつきさんは、今回の騒動についてこうコメントしています。
「皆様が高い関心をお寄せいただいていることは、防災意識が高まっている証拠であり、前向きに捉えております。」
予言に振り回されるのではなく、これをきっかけに「いつ起きてもおかしくない災害への備えを見直してほしい」というのが、たつきさんの本当の願いではないでしょうか。
私たちは、デマに踊らされるのではなく、正しい情報と冷静な行動を大切にするべきです。
災害は「特定の日」ではなく、「いつでも」起こり得るのです。
まとめ:予言ではなく、夢を描いた漫画だった
- たつき諒さんは「予言者」ではない。
- 描いたのは夢日記を元にしたオカルト漫画。
- 地震が起きるとも、隕石が落ちるとも、本人は書いていない。
- 「7月5日」は夢を見た日であり、災害が起きる日ではない。
- 出版社の意向で予言的に強調されてしまった。
- 新著で、本人が誤解を修正しようとしている。
今回の「7月5日予言騒動」は、私たちがいかに「不安」を求め、いかにSNSで流言に振り回されやすいかを示した、現代的な社会現象です。
重要なのは、「信じる」「信じない」の二択ではなく、
冷静に事実を整理し、日々の防災を怠らないこと。
それこそが、この話題から私たちが学ぶべき最大の教訓なのではないでしょうか。
筆者自身、この話題が出始めたころから知っていました。しかし最近、小学生の子どもが不安そうにこのことを尋ねてきたため、以前にも記事にした内容と最新の情報を整理し、今回あらためて書くことにしました。この記事が、お子さんや親御さんの不安を少しでも和らげることができれば幸いです。