春から夏にかけて、ツバメが軒下や玄関先に巣を作る光景は日本各地で見られます。人によっては「かわいらしい」「縁起がいい」と好意的に受け止める一方、「フンが落ちて困る」「玄関が汚れる」と悩む人もいます。
この記事では、ツバメ対策」の観点から、ツバメの巣を見つけたときの対応、巣立ちの時期と撤去のタイミング、巣を作らせないための対策などをわかりやすく解説します。
ツバメの巣を見つけたら撤去しないで
まず大前提として、ツバメの巣に卵やヒナがある状態での撤去は法律違反です。
これは「鳥獣保護法」によって明確に禁止されています。違反した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、卵やヒナがある状態で巣を移動すると、親鳥が子育てを放棄してしまう可能性が高いです。人間の手で移動することは、ツバメにとっては「巣が壊された」と同じ意味になるからです。
もし巣を見つけたら、まずはそのままにしておき、巣立ちを見守ることが最も大切な対応です。
鳥獣保護法とは?
「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」、略して鳥獣保護管理法は、野生動物とその卵を守るために定められています。以下、ポイントを整理します:
- 保護対象:鳥類または哺乳類に属する野生動物。一部のネズミ類や、家畜・家禽・ペット(ノラネコ、ノライヌを含む)は対象外。
- 禁止行為:野生鳥獣は原則として捕獲(殺傷を含む)が禁止されています。また、鳥類の卵の採取も禁止。
- 罰則:1年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 例外:学術研究や生活環境、農林水産業、生態系への被害防止などの目的で、一定の要件を満たす場合には、環境大臣または都道府県知事の許可を得て捕獲することができます。
野生鳥獣と人間社会が適切に共存できるよう、鳥獣の保護と管理、そして狩猟の適正化を総合的に図るための重要な法律です。モグラやハクビシンなどの野生動物による被害に困った場合でも、原則として許可なく捕獲・殺傷はできません。自治体に相談する、専門の駆除業者に依頼する、忌避剤を使用するなどの対応が必要です。
ツバメの場合、卵やヒナの保護が最優先され、人間の都合だけで巣を撤去する行為は法律違反になります。
電線火災や健康被害などの緊急性がある場合には、自治体の許可を得たうえで撤去可能です。(火災・漏電・フン害など)。
巣立ち後なら撤去は可能|時期の見極めがポイント
ヒナは生まれてから約3週間で巣立ちます。ツバメの繁殖時期は地域にもよりますが、主に以下のようなスケジュールです。
活動内容 | 時期(目安) |
---|---|
日本への飛来 | 3月下旬~4月初旬 |
巣作り開始 | 4月中旬 |
産卵・抱卵期 | 4月下旬~5月 |
ヒナの孵化・育成 | 5月~6月 |
巣立ち | 5月中旬~7月 |
二度目の繁殖(場合あり) | 6月~8月 |
※地域差があり、温暖な地域では3月中から巣作りが始まるケースもあります。
ヒナが巣立ってしばらく経過すれば、巣の中は空になります。そのタイミングであれば、撤去しても法律違反にはなりません。ただし、翌年も同じ場所に戻ってくることがあるので、巣を取り除く場合は完全に取り払う必要があります。

巣を作らせたくない、被害を減らしたい人のための対策方法
ツバメは一度巣を作ると、毎年同じ場所に戻ってくる習性があります。そのため、「今年は作らせたくない」という人は、繁殖シーズン前の対策が重要です。以下のような方法が効果的です。
1. 巣を作りそうな場所を塞ぐ
ツバメは雨風をしのげる場所を好むため、軒下や庇、玄関の天井近くなどに巣を作ります。以下のような対策が有効です。
- 軒下や玄関の上にダンボールや板を取り付けて、ツバメが止まれないようにする
- 釣り糸やテグスを数本、垂直または平行に張る(ツバメが警戒して近寄りません)
- 凹凸のある場所を平坦にする(梁・出っ張りをなくす)
これらの対策は、ツバメにとって「ここは安全ではない」と感じさせることを目的としています。
2. 巣の完成前なら追い払うのも一つの方法
ツバメが泥やワラを集めている段階であれば、水で洗い流す、定期的に音や動きで驚かせるなどの方法で諦めさせることも可能です。ただし、これはあくまで巣が完成する前までに限られます。
巣が完成し、卵が産まれてしまえば、もはや撤去はできません。
巣を見守ると決めた人のための工夫
すでに巣が完成してしまった場合、あるいはツバメの子育てを応援したいと考える人向けに、以下の工夫が有効です。
フン害を最小限に抑える工夫
ツバメの巣の下には、ヒナの排泄物が落ちてきます。これを防ぐには以下のような方法があります。
- 市販の「フン受け」(プラスチック製や段ボールタイプ)を取り付ける
- 新聞紙やトレーを置いて、定期的に交換する
- フンによる被害を抑えつつ、ツバメの子育てを見守ることができます。
フンによる被害を抑えつつ、ツバメの子育てを見守ることができます。

外敵から守る工夫
カラスやヘビによる被害を防ぐため、以下のような工夫もあります。
- 巣のまわりにカラスよけに紐を張ったり、ネットを設置する
- 窓枠や軒下にヘビ避けの忌避剤や網を張る

ツバメの子育てを見守るという選択肢もある
ツバメは害虫を食べるため、周辺環境にとっては非常にありがたい存在です。実際に以下のようなメリットもあります。
害虫駆除の効果
ツバメはハエや蚊などの害虫を大量に捕食し、人間の生活環境を快適に保つ助けになります。
縁起の良い存在とされる
古くから「ツバメが巣を作る家は栄える」「火事や災いから守ってくれる」などの言い伝えがあり、商売繁盛や家内安全の象徴とされています。
自然教育の教材になる
巣作りや子育ての様子を観察することは、子どもにとって命の大切さや自然の営みを学ぶ貴重な体験になります。
環境の健全性を示す「指標種」
ツバメが定着する地域は空気や水がきれいで、生態系が安定している証拠とされます。
地域コミュニティの活性化
ツバメの話題を通じて近隣の人同士が会話を交わす機会が増え、地域のつながりや温かさを育むきっかけになります。
どうしても衛生面が気になる場合でも、フン受けを設置して汚れを最小限に抑える工夫をすれば、ツバメと共存することができます。

ツバメ対策は「守る」と「防ぐ」の両立が大切
ツバメ対策は、ただ「追い払う」だけではありません。大切なのは、ツバメの命を守る視点と、人間の生活を守る工夫をバランスよく取り入れることです。
ポイントを整理すると、
- 巣を見つけても卵やヒナがあれば撤去してはいけない
- 巣立ち後であれば撤去しても法律違反にならない
- 巣作り前の予防策が有効
- フン受けや外敵対策で共生は可能
法律に違反しないよう注意しつつ、ツバメの子育てに少しだけ協力する姿勢を持つことで、自然との共生が実現します。
「ツバメが来る家は幸運」と言われるその意味を、もう一度考えてみませんか?