2025年10月、NHKは「受信料特別対策センター」を新設し、受信料未払いに対する支払い督促の手続きを大幅に強化する方針を明らかにしました。
特に、受信契約をしているのに1年以上未払いの世帯や事業所を対象として、2025年度の督促件数を前年度の10倍以上に拡大する見通しです。
近年はテレビ離れやネット視聴の普及によって受信料の支払率が下がっており、NHKとしては未収金の増加を看過できない状況にあります。
この記事では、「なぜ督促が強化されるのか」「そもそもNHKとは?」「支払い対象は?」「NHKは見ないと払わなくてもいいのか」などについて解説します。
NHKとは? 歴史としくみ
NHKは日本の公共放送
NHK(日本放送協会)は放送法によって設立された公共放送です。
民間のテレビ局と異なり、広告収入を一切受け取らないのが大きな特徴です。
全国向けのテレビ・ラジオ・オンデマンド配信等の公共サービスを提供することで、政治的・経済的な独立性を保つために、広告収入ではなく主に受信料(いわゆる「受信料制度」)で運営されています。
そのため、放送内容がスポンサーに左右されない「中立性」や「公共性」を確保しやすく、災害報道や教育番組など、営利目的では難しい番組を制作できます。
いつから存在しているのか
NHKの前身となるラジオ放送事業は戦前から始まっており、現在の「NHK」は1950年に放送法により再編・設立されました。
長い歴史の中でテレビ放送、衛星放送、ネット配信へとサービスを拡大しています。
NHK受信料のしくみ
公共放送を支えるための財源
NHKの運営費のほとんどは受信料です。
広告に頼らないため、視聴者が公平に負担する仕組みとなっています。
受信料制度の目的は以下の通りです。
- 公共放送の独立性を守る
- 政治的・商業的な圧力を排除する
- 災害情報など公共性の高いサービスを維持する
公共放送を維持するには安定した財源が不可欠であるため、法律上受信契約の義務が定められています。

今回の「督促10倍強化」はなぜ起きたのか
テレビ離れと支払率の低下
若年層を中心にテレビ視聴が減少し、スマホ・ネット配信へ移行しています。
「テレビをほぼ見ない」「NHKを見ていない」と感じる人が増える中で、受信料を支払わない世帯も増加しました。
NHKの方針:未払いを放置しない
今回の強化策は、以下の背景があります。
- 未払いが1年以上続く世帯が増えた
- 受信料の公平負担が崩れている
- 不払いを放置すれば制度が成り立たない
これらを改善するため、NHKは簡易裁判所の「支払い督促」制度の積極利用に踏み切っています。
受信料の「督促」とはどんなもの?
支払い督促とは、裁判所を通じて未払い金の支払いを求める手続きです。
支払い督促の流れ
- NHKが簡易裁判所へ申し立て
- 裁判所から「支払督促」が届く
- 2週間以内に異議申し立てがなければ確定
- 強制執行(給与・預金の差押え等)が可能となる
特に注意すべき点は、放置すると強制執行に進む可能性があることです。
受信料の支払い対象は?
ここが最も誤解されやすい部分です。
受信契約が必要なケース
法律では、テレビ放送を受信できる設備を設置した時点で契約義務が発生します。
具体例:
- テレビを設置した
- テレビチューナー内蔵のパソコンを持っている
- 車載カーナビにテレビ受信機能がある
- ワンセグ・フルセグ対応スマホを所有している(条件により判断が分かれる)
スマホはどうなる?
ワンセグ・フルセグ機能付きスマホは、
「設置」と言えるかどうかが争点となり、裁判で判断が分かれた例もあります。
車載テレビは?
車に固定された機器でテレビを視聴できる場合、
受信設備を設置していると解釈されるケースが多く、契約対象となります。

「NHKを見ないから払わなくていい」は通用する?
「見ているかどうか」は関係ない
結論として、見ていない事実だけでは支払い義務は免れません。
放送法では
「受信設備を設置したら契約が必要」
と定められているため、視聴の有無は基準になっていないためです。
ただし争う余地があるケースも
- ワンセグ携帯を「設置」と言えるのか
- 契約を断る正当な理由があるのか
- 設置していない証明が可能か
こういった場面では、法的に争われることもあります。
海外にもNHKのような放送局はある?
多くの国にNHKと類似した「公共放送」が存在しますが、運営方式や資金調達は国ごとに大きく異なります。
- 英国のBBCはライセンス料(テレビ受信料)を主要財源とする代表例で、長年にわたり制度維持の是非が国民的議論となっています。
- 米国ではPBS(公共放送)やNPRなどが税金や寄付、企業・財団の助成など多様な資金で運営されています。
- 欧州ではARD(ドイツ)、RAI(イタリア)、France Télévisions(フランス)などがあり、ライセンス料、税、広告の組合せで運営される国が多いです。各国ともデジタル化や視聴習慣の変化で資金モデルやガバナンスの見直しが続いています。
つまり「公共放送」は世界的に存在する一方で、その資金徴収方法(強制的な受信料、税による拠出、寄付・任意拠出、広告混在など)は多様であり、各国で制度議論が続いています。
NHK受信料制度のこれから
今回の「督促強化」は受信料制度の転換点ともいえます。
今後は以下の論点が注目されます。
- ネット時代にあわせた制度改革
- テレビを持たない世帯への対応
- 税方式・任意課金方式への転換議論
- 受信料の公平性と納得感の向上
テレビ離れが加速する中、受信料制度と公共放送の在り方は、今後さらに議論が深まると考えられます。
まとめ:支払い督促10倍は「制度維持へ向けた本気の姿勢」
NHKは受信料の未払い問題が深刻化する中、
公平負担の原則を保つために督促を10倍以上に増やすという強い姿勢を打ち出しました。
ポイントは以下の通りです。
- NHKは公共放送として受信料で運営される
- 受信設備を設置した時点で契約義務がある
- スマホ・車載テレビも対象となることがある
- 「見ていない」は支払い免除の理由にならない
- 海外にも公共放送は多く、日本だけの制度ではない
- 督促を放置すると強制執行に進む可能性がある
受信料制度は今後も変化が求められる分野ですが、現行制度では「契約義務」が基本となっています。
督促を受けた場合は無視せず、早めに確認することが大切です。

