外国人が日本で運転免許を取得する方法のひとつである「外免切替(外国免許切替)」制度が、2025年10月1日から大幅に厳格化されました。
背景には、短期滞在者による免許取得の乱用や、運転ルールを理解しないままの事故増加、偽造書類や試験不正など深刻な問題があります。 今回の記事では、外免切替とは何か、なぜ厳格化されたのか、どのくらい厳しくなったのか最新情報を交えてわかりやすく解説します。
外免切替とは?制度の基本を整理
外免切替(がいめんきりかえ)は、外国で取得した運転免許証を日本の免許に切り替える制度です。対象となるのは以下のような人です。
- 有効な外国の運転免許証を持っている
- その免許を取得した国に3か月以上滞在していた
- 日本国内に住所がある
本来であれば、日本の免許試験場で学科・実技の試験を受けずに免許を取得できる便利な仕組みです。
手続きは次のような流れでした。
- 書類審査
- 適性試験(視力など)
- 知識確認(学科)
- 技能確認(実技)
とくに知識確認と技能確認は簡易的で、外国人でも短期滞在でも申請できる点が長年指摘されてきました。

外免切替が厳格化された理由:不正と事故の多発
今回の厳格化には、次のような問題が背景にあります。
- 偽造免許証・不正申請の発覚
2025年9月には、中国籍の男女が台湾の偽造免許証を使い、JAFに日本で運転するための申請をして逮捕されました。「レンタカーを借りたかった」という供述も注目を集めました。 台湾など一部地域の免許は、翻訳を添えるだけで日本国内で運転できるため、これを悪用するケースが起きています。 - 試験不正やSNS投稿
大阪府警は同年8月、外免切替の知識確認試験をカメラで撮影しSNSに投稿した中国籍の男を摘発しました。動画は3万回近く再生され、試験制度の甘さが改めて問題視されました。 - 外国人運転者による事故増加
地方都市などでの死亡・重傷事故が増加。観光客や短期滞在者が日本交通ルールを理解せず事故を起こすケースもあります。 「外国人優遇ではないか」「簡単に免許が取れすぎる」といった声は以前からあり、制度への不信感は広がっていました。
厳格化されたポイント
①:住民票の提出が必須に
最も大きな変化は「住民票の写し」の提出が義務化されたことです。これにより、
- 観光目的など短期滞在者
- 住所登録のない訪日外国人
は外免切替の申請自体ができなくなりました。 以前は「パスポート」と「一時滞在証明書」があれば申請可能だったため、実質的に“抜け道”が存在していました。この点がまず封じられました。
②:知識確認試験が一気に難化
従来の試験内容はかなり甘いものでした。
【改正前】
- 10問(○×式・イラスト付き)
- 正答率70%以上で合格
- 20言語以上に対応
【改正後】
- 50問に増加(文章問題中心)
- 正答率90%以上に引き上げ
- 日本の新規免許試験基準に準拠
日本人が普通免許を取得する際の学科試験(95問・正答率90%以上)に近づく形となりました。
③:技能試験も採点基準が厳格化
運転技術を確認する実技試験(技能確認)でも以下の見直しが行われました。
- 横断歩道を通過する際の課題を追加
- 合図不履行・右左折方法違反の採点強化
- 細かい操作・安全確認も評価対象に
これまで教習コースのみの試験で合格できたため、「実際の交通環境で通用しない」という批判に対応した内容です。
厳格化に対しての反応:歓迎と課題の両面
外免切替の厳格化については、安全性の向上という観点から肯定的に受け止める声が目立っています。
これまで交通ルールの理解不足による事故が報道されてきたこともあり、「ようやく対策が進んだ」「日本の道路事情に合わせた審査は必要だ」といった意見が多く見られます。特に日本で運転する人や交通安全に関心を持つ層からは、制度の見直しを評価する反応が広がっています。
一方で、新しい基準に戸惑う人も少なくありません。SNSなどでは、「手続きが急に複雑になった」「試験が難しくなって準備が追いつかない」「生活や仕事に影響が出るのではないか」といった声もあります。外国人住民や留学生からは、急な制度変更による不安も指摘されています。また、言語面での支援不足や自治体による対応のばらつきを懸念する意見もあります。
全体としては、安全性や公平性の向上を歓迎する空気が強まりつつも、受験環境や情報提供の充実を求める声も根強くあります。制度を円滑に定着させるためには、利用者に寄り添ったサポート体制の整備が欠かせないと考えられています。

外貨切替制度は“締め付け”ではなく“正常化”
今回の厳格化は「外国人を排除する政策」ではなく、「日本社会と道路を守るための適正化」と位置付けられています。
- 効率的な審査
- 不正排除
- 質の担保
- 外国人との共生
こうした視点で制度再設計が求められました。
今後の課題:不正・事故防止・教育体制の強化
厳格化だけで全問題が解決するわけではありません。 今後の課題としては以下が挙げられます。
- 偽造免許証・翻訳文のチェック体制
- SNSを利用した試験不正防止
- 公道での運転教育機会の導入
- 事故データの分析と地域別対策
- 観光客向けルール案内の多言語化
- 違反時の罰則と強制送還の検討
制度を硬直化させるのではなく、安全と公平性をどう両立するかがカギになります。
まとめ:外免切替は「誰のための制度か」を再確認する段階へ
外免切替制度は、日本で生活や仕事をする外国人にとって欠かせない仕組みです。一方で、「短期間で誰でも取得できる」状態だったことで、事故や不正、社会不安を生みました。 今回の厳格化によって以下が改善されます。
- 短期滞在者の不正取得が困難に
- 知識確認の水準が日本人と同等に
- 技能確認の安全性が向上
- 制度への信頼回復
ただし、偽造書類の問題や試験不正、交通文化の理解不足といった課題は依然として残っています。制度の見直しと運用改善は、今後も継続が必要です。「誰もが安心できる道路環境」「公平で信頼される免許制度」この2つを守るための取組が、ここからまた進んでいくことが求められています。