日本国内の保育園や食品工場などに設置された防犯カメラの映像約500件が、海外のウェブサイトで無断公開されていたことが分かりました。
読売新聞と情報セキュリティー会社「トレンドマイクロ」(東京都)の共同調査によると、映像の多くは防犯や見守りを目的に設置されたものでしたが、設定の不備により誰でも視聴できる状態になっていたということです。
保育園や食品工場など、約90件の屋内映像が流出
調査は2025年9月から10月にかけて実施され、海外で運営されている7つのライブ映像公開サイトが確認されました。
これらのサイトには少なくとも約2万7000件のライブ映像が掲載され、そのうち日本に分類されていた映像は約1340件に上りました。
その中で、屋内の映像は約90件。関西地方の保育園、東海地方の食品加工工場、関東地方のパン工場、九州地方の設備会社など、全国で約20か所の施設が特定されました。
読売新聞が映像の設置者に連絡したところ、いずれの施設も流出を把握しておらず、報道によって初めて知ったと話しています。
原因としては「パスワード認証が未設定」「映像の公開範囲を誤って設定した」といった基本的な管理ミスが確認されました。

映像から設置場所の特定も可能 「犯罪悪用の恐れも」
トレンドマイクロの成田直翔シニアスペシャリストは、今回の防犯カメラ映像流出の背景には「設定の甘さ」があると指摘しています。
適切なセキュリティ対策を施さないままインターネットに接続されたカメラは、特殊なツールを使えば外部から簡単にアクセスされてしまう危険性があるというのです。さらに、映像の中に映り込んだ建物の外観や看板、職員の制服などから、施設の場所を特定されてしまう可能性も高いといいます。
防犯や安全管理を目的に設置したカメラが、逆にプライバシー侵害や犯罪被害を招くリスクとなってしまう――まさに本末転倒な状況が生まれているのです。
黄川田少子化相が注意喚起「ルールを定めることが重要」
この問題を受けて、黄川田仁志少子化担当相は11月4日の閣議後記者会見で、全国の保育園や学校などの教育機関に対し、防犯カメラの適切な運用を求める方針を明らかにしました。
黄川田氏は「個人のプライバシーや目的外利用の防止に十分配慮し、各施設がルールを定めて運用することが重要」と述べています。
特に保育園や幼稚園では、子どもや保護者が頻繁に映り込むため、カメラの映像管理には細心の注意が求められます。
政府としても、教育・福祉の現場で再発を防ぐための指針を早急にまとめる考えです。

政府、「日本版DBS」に防犯カメラの管理指針を盛り込む方針
政府は2026年末までに、子どもと接する業務に就く人の性犯罪歴を確認する制度「日本版DBS」を導入する予定です。
この制度のガイドラインには、防犯カメラの運用に関するデータ管理やプライバシー保護の留意点も盛り込み、施設への周知を図る方針です。
日本版DBS(Disclosure and Barring Service)は、もともとイギリスで導入されている制度で、教育や福祉分野で働く人の適性を確認する仕組みです。日本でも制度化が進められており、今後は防犯カメラを含む子どもを守るための安全体制の一環として位置づけられます。
背景にあるのはIoT機器のセキュリティ不備
今回の映像流出の背景には、ネットワークカメラ(IPカメラ)の設定不備があります。
カメラのIPアドレス(インターネット上の住所)をスキャンして脆弱な機器を探し出すプログラムが流通しており、こうしたデータを収集してサイトに公開するケースが増えています。
トレンドマイクロによると、特に以下のようなミスが多く見られるといいます。
- 初期設定のパスワードをそのまま使用している
- 通信が暗号化されていない
- 外部アクセスの制限が設定されていない
これらの状態では、第三者による盗み見や録画が簡単にできてしまうおそれがあります。
保育園や教育機関に求められるセキュリティ対策
保育園や学校などでは、今後次のような対策を徹底することが求められます。
- パスワードの強化と定期的な変更
- アクセス制限の設定(外部ネットワークからの遮断)
- 録画データの保存期間・共有範囲の明確化
- 機器メーカーのサポート更新状況の確認
さらに、保護者への説明責任も重要です。
防犯カメラをどのような目的で、どの範囲まで運用しているのかを明示することで、透明性の高い運用を行うことができます。
安全とプライバシーの両立がこれからの課題
今回の防犯カメラ映像流出事件は、IoT時代におけるセキュリティ意識の低さを浮き彫りにしました。
防犯カメラは子どもの命を守るための重要なツールですが、設定を誤ればプライバシー侵害の原因にもなりかねません。
黄川田少子化相が述べたように、今後は「ルールを定め、慎重に運用すること」が欠かせません。
政府や自治体、教育現場、そして機器メーカーが連携し、安全とプライバシーの両立を実現する体制づくりが急務となっています。

