年収の壁見直しで手取りはどう変わる?所得税と社会保険の壁

年収の壁見直しで手取りはどう変わる?所得税と社会保険の壁 時事・ニュース
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2025年12月15日、参議院予算委員会で高市早苗首相は、いわゆる「年収の壁」について「税制調査会で検討した結果、現段階では課税最低限は168万円までたどり着いた」と述べました。

今後、どの程度引き上げるべきか、減税の対象は誰か、といった点について与党内で議論を深めていく段階だと説明しています。これは、長年問題とされてきた「年収の壁」の見直しを具体化する大きな節目となる発言です(2025年度補正予算案総括質疑)


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そもそも「年収の壁」とは何か

「年収の壁」という言葉は、給料がある水準を超えると 手取りが減る現象や、働き方にブレーキがかかる状況 を指す一般的な呼称です。

もともと注目されたのは、「年収103万円の壁」。これは所得税が発生するボーダーであり、これを超えると所得税がかかるため、パートやアルバイト従業員の働く意欲が抑制されるとの指摘がありました。

この控除は「給与所得控除」と「基礎控除」の合計で構成されるもので、従来は給与所得控除が55万円、基礎控除が48万円で合計103万円でした。そのため、年収103万円以下なら所得税がかからなかったのです。

ただ、この仕組みは物価や最低賃金の変動を無視した「実質的な増税」との批判もあり、見直しの動きが進んできました。2025年度の税制改正でこの非課税枠は拡大され、 年収160万円まで所得税が発生しない水準 へと引き上げられました。

なぜ「年収103万円」では対応できなくなったのか

主な理由は次の3点です。

  1. 物価と賃金の上昇
     長期的な物価上昇最低賃金改定により、103万円という水準は生活実態と乖離していた。
  2. 働き控え問題
     税負担が増えることで、パート・アルバイトの労働時間や就業意欲が抑えられ、人手不足の原因となる。
  3. 税収の公平性
     控除水準が低いと、低所得層のみならず中所得層にも実質的な税負担が生じ、消費・生活に悪影響を及ぼす。

こうした背景から政府・与党内で年収の壁の引き上げが議論され、年収160万円・168万円案が浮上しているのです。


最新の議論:168万円、178万円まで引き上げる案も

2025年末の税制調査会では、基礎控除・給与所得控除の最低額を引き上げ、 年収168万円まで非課税とする案 が現段階の与党内の目安として提示されました。首相自身も「議論を深めていく段階」と述べており、最終的な税制調整は今後の税調・与党協議で決まります。

一方で、野党・国民民主党はさらに高い 年収178万円への引き上げ案 を主張しています。こちらは働き控えの解消の観点からより積極的な引き上げ策で、国民民主党が選挙公約に掲げているものです。与党内でもこの案をどう扱うか議論が続いていますが、最終的なラインはまだ確定していません。


「年収の壁」の本質:所得税だけの問題ではない

しかし、今回の政府案(168万円案)が目指すのは 所得税が発生するラインの引き上げ に限られており、実際には日本の労働市場・税制には他にも複数の「壁」が存在します。

社会保険の「壁」

実は多くのパート・アルバイト労働者が意識しているのは、社会保険加入義務が発生するライン です。これには次のようなものがあります。

  • 106万円の壁
     従業員数51人以上の企業で働く場合、年収106万円を超えると健康保険・厚生年金への加入義務が発生し、給与から保険料が天引きされます。
  • 130万円の壁
     多くの会社員が被扶養者でなくなるラインで、ここを超えると配偶者の扶養から外れ、個人で国民健康保険・国民年金に加入しなければならなくなるため、 手取りが大幅に減る という問題があります。

いわゆる社会保険の「106万円」「130万円」の壁は、税金の話とは別に労働インセンティブに大きく影響します。このため、仮に年収の壁を168万円・178万円へ引き上げても、 社会保険の壁が残る限り、働き控えや時間調整の動機は消えない と指摘されています。


なぜ社会保険の壁が問題なのか

所得税は確かに年間の手取りに影響しますが、社会保険料の負担はより直接的です。厚生年金や健康保険料は給与から自動的に天引きされ、労使折半で負担が増えます。この結果、106万円や130万円付近で働く時間を抑える傾向が長年続いてきました。これは特に主婦層やパートタイマーの労働参加に影響を与えています。

たとえば、年収が130万円を超えると配偶者の扶養から外れるため、国民健康保険料・国民年金保険料の自己負担が発生します。この負担は年間数十万円になるケースがあり、結果として「働けば働くほど手取りが増えない」という現象がおこります。このような状況が社会保険の壁です。


所得税の年収の壁を引き上げて「本当に手取りが増える人」とは

今回議論されている「所得税の年収の壁」の引き上げは、すべての人に同じ効果をもたらすわけではありません。実際には、すでに社会保険料を自分で負担している人ほど、手取り増加の効果を実感しやすい という特徴があります。

すでに社会保険料を自己負担している層

具体的には、次のような人たちです。

独身の方、または世帯主として国民年金・国民健康保険に加入している方

この層は、年収がいくらであっても、すでに国民年金保険料・国民健康保険料を自分で支払っています。
そのため、年収が130万円を超えても新たに社会保険料の負担が発生することはありません

所得税の非課税枠が引き上げられれば、単純に「税金が減る分だけ手取りが増える」構造になります。社会保険の壁を意識して労働時間を調整する必要がないため、今回の制度改正の恩恵をストレートに受けやすい層だといえます。

パート先ですでに厚生年金・健康保険に加入している方

すでに勤務先で厚生年金・健康保険に加入している場合も同様です。
この場合、年収が130万円を超えても「新たに」社会保険へ加入する必要はなく、保険料負担が急増することはありません。

保険料は収入に応じて段階的に増えるものの、130万円を境に突然大きな負担が発生するわけではないため、所得税の壁が引き上げられれば、その分だけ手取りが増えやすい立場にあります。

【ヤフコメで話題】「年収の壁や社会保険料の見直しを求める声」「手取り増加には減税や制度改革が必要」 - 年収の壁と社会保険料に関する市民の意見が集まる(Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE)
年収の壁や社会保険料の負担について、Yahoo!ニュースのコメント欄で話題になっています。ユーザーの意見では、年収の壁を引き上げても社会保険料や住民税が高いままでは手取りが増えないという指摘があり

政府・与党の対応と今後の課題

政府は税制面だけでなく、社会保険料負担軽減策や激変緩和措置の検討も進めています。具体的には、社会保険料負担増を補填する補助金や、企業への助成金制度などが議論されていますが、根本的な壁の解消には至っていません。専門家の間からは「税制改革だけでは不十分」との指摘が多く出ています。

今後の政策議論では、次の3点が焦点となるでしょう。

  1. 所得税の非課税枠をどこまで引き上げるか(168万円か178万円か)
  2. 社会保険の加入要件の見直し(106万円・130万円ラインの再検討)
  3. 労働参加促進策と賃金上昇との整合性

これらを総合的に議論しない限り、「年収の壁」の本質的な解消とはなりません。


結び:働き方改革と税・社保制度の接続

働き方改革や労働参加の促進は、日本の少子高齢化・人口減少に対応する重要政策です。今回の「年収の壁」引き上げの議論は、その一環として本来評価されるべきものですが、 所得税だけを見直すだけでは効果は限定的 です。

社会保険の壁や労働市場の制度設計全体を見直し、将来にわたって働き手が安心して働ける制度を整えること。これが、政策の目指すべき最終目標ではないでしょうか。

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