2025年5月30日、人気格安スーパー「業務スーパー」を運営する神戸物産は、中国産の冷凍野菜「冷凍千切りピーマン」から、基準値を超える残留農薬が検出されたとして、約4万5000個の商品の回収を発表しました。
このニュースはSNSやメディアでも大きく報道され、「やっぱり中国産は危険?」「冷凍野菜って大丈夫なの?」と不安の声が上がっています。
今回はこの問題を入り口に、中国産食品に関する過去のトラブルや業務スーパーに中国産が多い理由、冷凍野菜を選ぶ際のポイントなどをわかりやすく解説していきます。
中国産冷凍野菜に残留農薬…業務スーパーが回収へ
問題となったのは「冷凍 千切りピーマン(500g)」のうち、賞味期限が2027年3月7日および3月22日のもの。検出された農薬は「エトキサゾール」という殺虫剤で、農作物保護のために使用される薬剤です。
神戸物産は「ごく微量であり、1日146袋以上食べ続けなければ健康に影響はない」と説明していますが、基準を超えていた以上、回収命令を受けました。
加えて、同社は中国産の「冷凍大根」でも別の農薬(チアメトキサム)が基準値超過となり、同様の措置をとっています。
業務スーパーWEBサイト

中国産食品はなぜ問題が多いのか?
中国産食品には、以下のような理由でトラブルが発生しやすい背景があります。
規制や監督体制のゆるさ
中国では、農薬の管理基準が日本と比べて緩いケースも多く、また地方ごとの管理体制にバラつきがあります。
過去には、
- 冷凍ほうれん草(2002年):農薬クロルピリホスの過剰検出
- 冷凍餃子事件(2007年):毒物メタミドホス混入
- 冷凍いんげん(2008年):ジクロルボス混入による健康被害
など、深刻な健康被害に至ったケースもありました。
利益優先の生産体制
利益重視で安全管理を軽視する業者が一部に存在することも問題です。過剰な農薬使用や、加工工程の衛生管理の甘さが原因で、違反が起こることがあります。
トレーサビリティの不透明さ
中国では個人農家や小規模業者が多く、「誰がどこで作ったか」が追跡しにくいことも、安全管理上のリスクになります。
なぜ業務スーパーには中国産野菜が多いのか?
業務スーパーの商品を見てみると、「原産国:中国」という表示が目につくことも多いですよね。
その理由は以下のとおりです。
圧倒的なコストの安さ
中国では人件費や土地代が比較的安いため、同じ野菜でも日本産と比べてかなり安く大量に生産できます。加工・冷凍も現地で一貫して行えるため、物流コストも抑えられます。
大量かつ安定した供給が可能
中国は農業大国であり、冷凍野菜の供給量も豊富。業務用に大量仕入れをする業務スーパーとは非常に相性が良いのです。
神戸物産の独自輸入ルート
業務スーパーを運営する神戸物産は、商社機能も持ち、自社で海外生産・輸入を行っています。特に中国の提携工場からの商品が多く、自社ブランドとして展開されることも多いため、自然と中国産が多くなるのです。
「中国産=危険」ではないが、選び方は重要
ここで注意したいのは、「中国産=すべて危険」ではないという点です。
多くの企業は現地での検査を強化し、日本の基準をクリアした商品だけを輸入しています。違反商品はごく一部であり、大半は安全に流通しているのが事実です。
とはいえ、どんな食品にもリスクはあるもの。消費者として安全な冷凍野菜を選ぶコツを知っておくことはとても大切です。
メラミン混入事件──中国食品の信頼を揺るがせた過去の重大問題
2008年に中国産食品の安全性が国際的に問題視された事件がありました。それが、「メラミン混入事件」です。
メラミン入り粉ミルク事件(2008年)
2008年、中国国内で流通していた乳児用粉ミルクに有害物質メラミンが混入していたことが発覚。メラミンは本来、プラスチックや接着剤の原料として使われる工業用化学物質で、人体に有害です。
この事件により、少なくとも6人の乳児が死亡、30万人以上が健康被害を受けたとされ、国際的にも大きな衝撃を与えました。問題の背景には、タンパク質検査をすり抜けるためにメラミンを混入し、栄養価を偽装するという悪質な手口がありました。
事件後、中国政府は関係企業を厳しく処罰し、食品安全管理の強化を進めましたが、消費者の間には「中国産=危険」という印象が強く根付く結果となりました。
● ペットフードにもメラミンが混入(2007年)
この1年前には、アメリカで販売された中国産ペットフードの原料(小麦グルテン)にもメラミンが混入していたことが発覚。これにより犬や猫など数千匹のペットが死亡し、大規模なリコールが実施されました。
この事件は「人間用ではないから」と安全管理が甘かったことが問題視され、以降、ペットフードも人間と同様の安全基準が必要であるという考えが広まりました。
このような重大事件の記憶が、いまだに中国産食品全体への不信感につながっているのが現状です。だからこそ、原産地や製造元、検査体制の確認が欠かせません。冷凍野菜に限らず、すべての輸入食品において「過去から学ぶ目」を持つことが、今後ますます求められています。

冷凍野菜の安全な選び方|消費者ができる5つのポイント
1. 原産国表示を確認
冷凍野菜は必ず「原産国」が記載されています。購入前にチェックして、自分が納得できるものを選びましょう。
2. メーカーやブランドの信頼性
過去にトラブルがある企業は避けたり、実績や評判の良いブランドを選ぶようにしましょう。国産や有機JASマークのある商品も安心感があります。
3. 加工地と輸入者情報を確認
「原産国:中国」でも「加工は国内」という商品もあります。輸入者名や連絡先もパッケージに記載されているので、信頼性を測る参考になります。
4. 口コミやレビューを参考にする
ネットやSNSのレビューを見ることで、実際に購入した人の声やトラブル情報を得られます。
5. 必ず加熱して食べる
冷凍野菜は基本的に加熱調理を前提としています。リスクを減らすためにも、しっかり加熱してから食べましょう。
まとめ|安さだけで選ばず、安心も一緒に選びたい
冷凍野菜はとても便利な食品で、忙しい現代の生活には欠かせない存在です。しかし、安さだけで選んでしまうと、安全性への配慮を見落としがち。
特に中国産の食品には、過去のトラブルからくる不安が根強くあります。だからこそ、消費者として正しい知識と判断力を持つことが大切です。
今回の業務スーパーの回収問題をきっかけに、もう一度「食品の選び方」について見直してみてはいかがでしょうか。