「置き配」とは、荷物を宅配業者が玄関先や指定場所に配達し、受取人が不在でもその場に荷物を置いていく配達方法です。新型コロナウイルスの影響で非対面の受け取りが求められたことをきっかけに、急速に普及したサービスですが、国土交通省が今後「置き配」を標準サービスとし、手渡しは追加料金とする新ルールの導入を検討しています。
再配達の削減とドライバー不足の解消を目指すこの新方針は、私たちの荷物の受け取り方を大きく変えるかもしれません。
置き配が普及した背景
宅配便の利用は年々増加しています。特にネットショッピングの拡大により、再配達の問題が深刻化しています。再配達はドライバーの労働負担を増やし、物流全体の非効率を招いていました。
国土交通省は再配達率の削減を目指し、置き配を積極的に推進。目標とする再配達率6%には届いていませんが、すでにAmazonやヤマト運輸、日本郵便などの主要宅配業者では、置き配の仕組みが導入されています。
置き配は確かに便利ですが、その一方で、盗難や破損といったトラブルも増えており、注意が必要です。
置き配に対応している主な宅配会社
現在、置き配に積極的に対応している宅配業者は以下の通りです。
- Amazonジャパン:玄関前や宅配ボックスなど、指定した場所への置き配が可能。盗難時の補償制度もあり、再送や返金が迅速に行われる。
- ヤマト運輸:宅配便ロッカー「PUDOステーション」や、指定場所への置き配が可能。ただし、置き配中の盗難や破損は原則補償対象外。
- 日本郵便(ゆうパック):一部地域で置き配に対応。受取人の希望があれば、指定場所に荷物を置くことができる。
- 佐川急便:事前に同意を得た場合に限り、置き配を実施。盗難や紛失時の補償は限定的。
各社で対応は異なりますが、共通しているのは、「置き配は自己責任となる場合が多い」という点です。特にヤマト運輸や佐川急便では、原則として置き配中のトラブルは補償されません。

「置き配」標準化と手渡し有料化の検討
国土交通省は、再配達削減のため、置き配や宅配ロッカー、コンビニ受け取りなど、対面以外の受け取り方法の利用を促進しています。この流れの中で、将来的には「置き配」をデフォルトの受け取り方法とし、手渡しを希望する場合には追加料金を徴収するという新ルールが検討されているようです。
有料化に関する具体的な開始時期は明確には示されていませんが、再配達削減に向けた各種施策はすでに始まっています。例えば、政府による「置き配ポイント」が2024年10月から開始されるなど、多様な受け取り方法への移行を促す動きが進んでいます。
置き配標準化はいつから?
「置き配」標準化については、年内(2025年中)には方向性をまとめる予定とのことです。2026年度以降の導入が見込まれます。現時点で「○月から」という明確な日付は発表されていませんが、方向性がまとまり次第、具体的なスケジュールが示される見込みです。
置き配厳禁の荷物はどうなるのか
現在も「置き配厳禁」と貼り付けられた荷物は一定数存在しています。主に高額商品や壊れやすい精密機器、冷蔵・冷凍の生鮮食品、重要書類などが該当します。
これらの荷物は基本的に手渡しでの配達が原則ですが、国土交通省が進める新ルールが施行されると、「手渡し=有料オプション」となる可能性があります。これにより、今後は手渡し希望時に追加料金が求められるケースが増えることも想定されます。
受取人が「置き配厳禁」と指定しても、有料でない限り手渡しが基本サービスから外れることになれば、利用者側の認識も大きく変わることになるでしょう。
置き配トラブルの具体例
便利な置き配ですが、実際には数々のトラブルも発生しています。ここでは代表的な事例を紹介します。
盗難被害
置き配トラブルで最も多いのが盗難被害です。たとえば、玄関先に置かれた荷物が数分の間に盗まれてしまったケースがあります。防犯カメラに荷物を持ち去る人物が映っていたものの、結局犯人は特定できず、荷物は戻りませんでした。
また、宅配業者が配達完了通知を送信した直後に、通行人に荷物を持ち去られる被害もありました。こうした盗難は、一戸建てだけでなく、オートロック付きマンションでも発生しています。
いたずら被害
置き配された荷物に対して、通行人がわざと箱を踏みつける、破損させるといったいたずらも報告されています。さらに、荷物をゴミ箱に投げ込まれたり、開封され中身だけ抜き取られる悪質なケースも確認されています。
雨風による商品破損
置き配は天候の影響を大きく受けます。雨の日に濡れた場所に置かれ、段ボールが浸水してしまい、中身の商品が破損した例もあります。風が強い日に、荷物が転がってしまい、破損するトラブルも起きています。
防水対策がされていない梱包の場合、こうした被害に対しては配達業者が補償しないことがほとんどです。
誤配による紛失
置き配中に別の家の玄関先に配達され、そのまま誤配先で荷物が紛失してしまう事例もあります。誤配に気付いても、既に荷物がなくなっていることもあり、発見されないまま終わることも珍しくありません。

置き配トラブルへの対策
置き配は非常に便利ですが、トラブルを防ぐための対策が必要です。
- 宅配ボックスの設置
自宅に宅配ボックスを設置することで、盗難や雨風による被害を大きく減らすことができます。マンションの場合、共用の宅配ボックスを活用しましょう。 - 防犯カメラの設置
玄関先に防犯カメラを設置すると、防犯効果が高まります。盗難被害に遭った際も、証拠映像を提供することができます。 - 配達時間の指定と即時受け取り
可能な限り配達時間を自分が在宅している時間帯に設定し、置き配された場合はすぐに荷物を回収する習慣を付けることも重要です。 - 配送業者や通販会社の補償内容を確認
置き配による盗難や破損が起きた場合、どのように補償されるのか、事前に確認しておくことが大切です。Amazonのように再送や返金対応が明記されているサービスは安心感があります。 - 手渡しオプションを活用する
高額商品や破損しやすい商品は、たとえ有料になっても手渡しを選択することが安全です。
まとめ
置き配は、再配達の削減や物流の効率化を進めるうえで重要なサービスです。国土交通省の方針により、今後は置き配が宅配の標準となり、手渡しが追加料金の対象になる可能性が高まっています。
しかし、置き配は盗難、いたずら、天候による破損、誤配送といったリスクも伴います。置き配を安全に利用するためには、自宅の環境に合った対策を講じ、必要に応じて手渡しオプションや補償内容を事前に確認することが重要です。
これからの宅配は、利便性と安全性のバランスを私たち利用者自身が考えながら選択する時代に変わっていくでしょう。置き配の新ルールが始まる前に、自分にとって最適な受け取り方法を見直してみてはいかがでしょうか。