近年、飲食店業界では「スマホ注文(モバイルオーダー)」の導入が進んでいます。これは、来店客が自身のスマートフォンを使ってメニューを閲覧し、注文から決済までを完結できる仕組みです。しかし、SNS上では「不便」「スマホのバッテリーが減る」「ギガを消費する」「スマホを持っていない人への配慮が足りない」といった否定的な意見も見受けられます。
本記事では、スマホ注文のメリットとデメリットを整理し、導入している飲食店の事例や、今後の課題について考察します。
スマホ注文が広まった背景
株式会社リクルートが実施した調査によれば、飲食店における注文方法の多様化が進んでいることが明らかになりました。
具体的には、「テーブルトップオーダー(卓上のタブレットや端末を使った注文)」の利用経験率は78.9%と非常に高く、続いて「セルフオーダー(レジ前の端末やカウンターでの自己注文)」は57.1%、「テイクアウト時のモバイルオーダー(スマホ注文)」は48.8%という結果が出ています。
こうした非接触型の注文手段は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて一気に普及しました。感染防止対策として「接触を避けたい」という消費者の心理が働き、これまでアナログだった飲食店のオペレーションにもデジタル化の波が押し寄せた形です。
スマホ注文のメリット
1. 人手不足の解消と業務効率の向上
飲食業界では慢性的な人手不足が課題となっています。
スマホ注文を導入することで、注文受付や会計業務を自動化でき、スタッフは配膳や清掃など他の業務に集中できます。これにより、少ない人員でも効率的な店舗運営が可能になります。
2. 客単価の向上
スマホ注文では、メニューに写真やおすすめ情報を表示できるため、追加注文や高価格帯のメニューの注文が促進され、結果として客単価の向上が期待できます。
3. 注文ミスの削減
従来の口頭注文では、スタッフの聞き間違いや入力ミスが発生することがありますが、スマホ注文では顧客自身が注文内容を確認・確定するため、注文ミスが減少します。
4. 多言語対応によるインバウンド需要への対応
文システムの多くは多言語対応が可能であり、外国人観光客にとっても利用しやすい環境を提供できます。これにより、インバウンド需要の取り込みが期待されます。
5. データ活用によるマーケティングの強化
スマホ注文を通じて得られる顧客の注文履歴や来店頻度などのデータを分析することで、効果的なプロモーションやメニュー開発が可能になります。
スマホ注文のデメリット
1. 高齢者やスマホに不慣れな人への対応
スマホの操作に不慣れな高齢者や、スマホを持っていない顧客にとって、スマホ注文はハードルが高く、利用をためらう要因となります。このような顧客への配慮が不足すると、来店機会の損失につながる可能性があります。
2. スマホのバッテリー消耗や通信料の負担
スマホ注文を利用することで、顧客のスマホのバッテリーが消耗し、通信料が発生することがあります。特に、データ通信量に制限があるプランを利用している顧客にとっては、負担となる場合があります。
3. コミュニケーションの減少
スマホ注文により、スタッフと顧客の対面でのやり取りが減少し、顧客満足度の低下やサービスの質の低下につながる懸念があります。特に、接客を重視する店舗では、注意が必要です。
4. システム導入・維持コスト
スマホ注文システムの導入には、初期費用や月額利用料などのコストが発生します。また、システムのメンテナンスやアップデートも必要となり、継続的な投資が求められます。
SNS上のスマホ注文に対する否定的な意見
SNSでは、スマホ注文に対する否定的な意見も多く見受けられます。
具体的には、「スマホのバッテリーが減る」「通信料がかかる」「操作が面倒」「高齢者への配慮が足りない」といった声があります。これらの意見は、スマホ注文の導入に際して、店舗側が考慮すべき重要なポイントです。
スマホ注文を導入している飲食店はどこ?
多くの大手飲食チェーンがスマホ注文を導入しています。例えば、マクドナルドやスターバックスでは、公式アプリを通じて事前注文・決済が可能です。また、くら寿司、カレーハウスCoCo壱番屋やサイゼリヤなどのファミリーレストランでも、QRコードを読み取ってスマホから注文できるシステムを導入している店舗が増えています。
今後の課題と対応策
スマホ注文の導入は、業務効率化や顧客満足度の向上に寄与する一方で、高齢者やスマホに不慣れな顧客への対応が課題となります。店舗側は、紙のメニューや口頭注文の選択肢を残すなど、柔軟な対応が求められます。また、無料Wi-Fiの提供や充電設備の設置など、顧客の利便性を高める工夫も重要です。
最終的には、店舗の経営方針やターゲットとする顧客層に応じて、スマホ注文の導入可否や運用方法を検討することが重要です。すべての顧客の満足度を高めることは難しいかもしれませんが、限られたリソースで最大の効果を得るためには、明確な方針と柔軟な対応が求められます。
スマホ注文の導入は、飲食店にとって多くのメリットをもたらす一方で、顧客の多様なニーズに対応する柔軟性が求められます。今後も、テクノロジーの進化とともに、より使いやすく、誰もが利用しやすいシステムの開発が期待されます。