小児がんや難病など、重い疾患を抱える子どもと家族が安心して過ごせる「こどもホスピス」。日本ではまだ広く知られていませんが、近年は子どもと家族の“居場所づくり”として大きな注目を集めています。
2025年11月30日、政府(こども家庭庁)が「こどもホスピス」の全国普及に向けた本格的な支援に乗り出したことが報じられました。令和6年度補正予算を活用し、北海道や愛知県など5自治体で官民連携のネットワークづくりやニーズ把握を進めるモデル事業を実施する、という内容です。まずは地域ごとの課題や効果を検証し、闘病中の子どもや家族が「地域で支えられる環境」を整えることが目的とされています。
本記事では、こどもホスピスの役割、政府が支援に乗り出した背景、今後の課題と展望まで、分かりやすく丁寧にまとめています。

こどもホスピスとは?
成人ホスピスとは違う「成長・遊び・家族支援」中心の場
「ホスピス」と聞くと、多くの人は“終末期医療”をイメージするかもしれません。しかし、こどもホスピスは成人のホスピスとは大きく異なる役割を持っています。
こどもホスピスは、病気と共に生きる子どもと家族のための“生活の場”や“居場所”であり、成長を支え、希望を見つけられる空間です。
成人ホスピスは終末期の緩和ケアが中心ですが、こどもホスピスでは次の点が特徴です。
- 看護師・保育士・ソーシャルワーカーなどの専門職がチームで支える
- 遊び・学び・交流の機会を通して、子どもの成長や希望に寄り添う
- 家族、きょうだい(兄弟姉妹)も対象とした包括支援
- イベントや訪問支援など、「施設の外」も含めた地域型の取り組みが可能
命の危険を伴う病気を持つ子どもは、入院や通院で生活が制限され、孤立感が強まりやすいと言われています。こどもホスピスは、その“孤立”を防ぎ、子どもらしい時間を取り戻す重要な役割を担っています。
「こどもホスピス」現状は全国6カ所のみ
行政の支援が少ないため、サービスに地域差が大きい
日本で「こどもホスピス」の名称を使う施設は現状で全国に6カ所程度。多くが民間団体による運営で、公的支援はまだ限定的です。
そのため、
- 財源の確保が難しく運営が不安定
- 対象となる家庭に情報が届きにくい
- 医療・福祉・教育との連携が不足してしまう
といった課題が続いていました。
こうした背景もあり、政府が制度的な支援に踏み切った今回の発表には、医療関係者や支援団体から期待の声が上がっています。
政府が実施するこどもホスピスモデル事業とは
政府が2025年度に始めたモデル事業は、「制度としてこどもホスピスを広げていく」ための重要な第一歩です。具体的には次の3つが柱となっています。
- ニーズの実態把握
病気と暮らす子どもや家族が、どんな困難を抱えて生活しているのかを細かく調査。医療的ケア児の増加や、きょうだい児の負担など、地域ごとの差異も含めて可視化します。 - 官民連携ネットワークの形成
医療(病院・訪問医療)、教育(学校・保育)、福祉(行政・地域支援)、そして民間団体がスムーズにつながる仕組みを整備。
これにより、家庭が困ったとき“どこに相談すればいいのか”が明確になります。 - 多様な支援モデルの検証
こどもホスピスには「施設型」「地域型」「訪問型」など複数の形があります。
自治体ごとの環境に適した形を検証し、全国展開の参考にしていきます。
家族にとっての具体的なメリット
モデル事業が進むことで、子どもと家族には次のような支援が期待できます。
- 定期的な交流イベントや短期滞在で子どもが「遊べる・学べる」機会を得る。
- 兄弟姉妹や親への相談窓口、ピアサポートの拡充。
- 学校との連携による通学支援や教育継続の仕組みづくり。
- 在宅医療や訪問支援と連動した、暮らしに寄り添うケア。
これらは家族のQOL(生活の質)を高めるだけでなく、医療資源の適切な活用にも寄与します。
課題は「財源」「人材」「地域間格差」
こどもホスピスの普及が進む一方で、その実現には依然として大きな課題が残っています。まず挙げられるのは財源の安定化です。現在、多くのこどもホスピスは寄付や助成金に大きく依存しており、自治体が継続的な予算を確保できるかどうかが、今後の安定的な運営を左右します。財政基盤が不安定なままでは、必要な支援を長期的に提供することが難しく、サービスの地域差にも直結してしまいます。
次に、専門人材の育成も重要な課題です。こどもホスピスでは、看護師や保育士、医療的ケア児に対応できるスタッフ、家族支援に関わる専門職など、多様な職種が連携して支援にあたる必要があります。そのためには、専門性を高める研修体制の整備と、現場で働く人材の確保が急務となっています。
さらに、地域間格差の拡大も無視できません。都市部のほうが施設を整えやすい一方で、地方では財源や人材の確保が難しく、新規立ち上げや安定運営が大きな壁となっています。子どもと家族が住む地域によって利用できる支援が大きく異なってしまう現状をどう改善するかも、今後の政策に求められる大きなテーマです。
市民や企業にもできることがある
こどもホスピスを支える方法は行政任せではありません。市民や企業、医療・福祉関係者の理解と協力が欠かせません。寄付やボランティア、地域での情報発信、学校や職場での受け入れ準備など、身近な行動が子どもと家族を支えるネットワークを広げます。
- ボランティアとして関わる
- 施設や団体への寄付
- SNSでの情報発信
- 地域イベントへの協力
- 学校や職場での理解促進
など、小さな行動が家庭の孤立を防ぐ力になります。
こどもホスピスの理念は「地域で支え、地域で見守る」という考え方です。特別な知識がなくても、社会の理解が深まれば、支援が届きやすい環境が整っていきます。
まとめ
こどもホスピスは、小児がんや難病を抱える子どもとその家族にとって、命の時間と“日常の時間”を両立させる大切な場です。
政府がモデル事業として支援に乗り出したことは、全国的な普及に向けた大きな一歩と言えます。今後は、実態調査の成果と、官民連携ネットワークの強化がどこまで進むかが鍵となるでしょう。
こどもホスピスは施設そのものだけでなく、“地域全体で子どもと家族を支える仕組み”を作ることが目的です。
私たち一人ひとりの理解と協力が、その未来を形づくる力になります。
闘病中の子どもが笑顔で過ごせる場所が、全国に広がっていくことを期待したいところです。
