政府が、日本国籍を取得するための「帰化」の要件を厳格化する方針で検討に入ったというニュースが注目を集めています。背景には、高市総理肝いりの外国人政策の見直しがあります。
日本国籍の取得は、その人が「日本の国民」として政治参加する道を開く、大きな意味を持つ制度です。その条件を見直す動きは、日本の社会づくりや国の在り方にも直結します。
本記事では、
- 帰化とはどのような制度か
- 現行制度の問題点
- 政府が帰化要件を厳格化しようとする理由
- 他国ではどのような帰化制度になっているのか
- 今回の動きが日本社会にもたらす影響
これらをわかりやすく整理して解説します。

帰化とは?──日本国籍を取得する制度
まず、帰化とは外国籍の人が日本国籍を取得することを指します。日本では、法務大臣の許可によって国籍が付与されます。
帰化をすると、以下のような権利・義務が発生します。
- 日本のパスポートを取得できる
- 選挙権(投票する権利)と被選挙権(立候補する権利)を得る
- 公務員として働く資格も基本的に日本人と同等になる
- 税金、社会保障、教育など日本国民としての義務と権利を持つ
つまり、帰化とは「その国の一員になる」という非常に重い意味を持つ制度です。永住権と異なり、日本国籍を持つことで政治参加が可能になる点が大きな違いです。
現行の日本の帰化要件とは?(現行制度のポイント)
日本で帰化するためには、一般に次のような要件が求められます。
- 継続して5年以上、日本に住んでいること
現行制度の中心となる基準です。 - 18歳以上であること
能力を持ち、責任を果たせる年齢であることが求められます。 - 素行が善良であること
納税義務を果たしているか、日本の法律を守って生活しているかなどが総合的に判断されます。 - 安定した生活基盤があること
自分や家族が困窮せず生活できる収入・資産があるかが審査されます。 - 日本語の読み書き・会話が可能であること
日常生活に困らない程度の日本語能力が必要です。 - 日本の憲法・社会制度を尊重すること
暴力で政府を転覆しようとする思想などを持っていないことが前提になります。 - 原則として元の国籍を離脱すること
日本は原則二重国籍を認めていないためです。
ビザ・永住権・帰化の違い
| 種類 | 目的 | 在留期限 | 選挙権 | パスポート |
|---|---|---|---|---|
| ビザ(在留資格) | 一定期間の滞在 | あり | なし | 出身国のまま |
| 永住権 | 無期限で生活 | なし | なし | 出身国のまま |
| 帰化 | 日本国籍を取得 | なし | あり(投票・立候補も可) | 日本国パスポート |
- ビザ … 日本に「滞在できる」
- 永住権 … 日本に「住み続けられる」
- 帰化 … 日本人として「生きる」
という違いです。
今回政府が検討している「帰化要件の厳格化」は、永住権やビザ制度とのバランスを見直す流れの一環です。
なぜ政府は帰化要件を厳しくしようとしているのか
今回の見直し検討には、いくつかの理由が指摘されています。
【1】参政権が得られる「帰化」が、永住よりも要件が緩いことへの疑問
永住許可は通常10年以上の在留が必要とされている一方で、帰化は5年で申請できます。
しかし、永住権には選挙権がありません。
一方の帰化は、日本国籍を取得すればすぐに選挙権・被選挙権を持ちます。
そのため、「永住よりも帰化の方が要件が軽いのはおかしいのではないか?」という声が政府内で上がっていると言われています。
【2】社会統合・文化理解をより重視するため
国籍を与えるということは、その人が日本社会に深く根付き、文化・習慣・法制度を理解していることが前提になります。
居住年数を引き上げることで、
- 日本語力
- 日本での生活基盤
- 社会とのつながり
- コミュニティとの関係
といった「社会統合の進み具合」をより確実に見られるようにする狙いがあります。
【3】国内の世論・治安や政治への不安感への配慮
外国人の受け入れや国籍付与に関しては、国民の間でも意見が分かれるテーマです。
政治参加を行う「日本人」を増やす以上、
- 日本の価値観を共有できるか
- 国家の一員として責任を果たせるか
こうした点をより慎重に判断すべきという世論も一部にあります。
他国の帰化要件──日本は厳しい?緩い?
他国の状況を見ると、帰化の基準は国によって大きく異なります。
● ドイツ
- 原則として 5年以上の居住
- ドイツ語能力
- 社会制度の理解
- 経済的に自立していること
- 憲法への忠誠宣言
などが要件となる国です。
また、社会統合が進んだ人には短縮措置があるなど、「時間よりも内容」を重視します。
● アメリカ
- 永住権取得後、通常 5年
- 英語能力
- アメリカの歴史や制度に関する試験
- 品行・納税義務の履行
などが必要です。
● カナダ
- 過去5年のうち 3年以上 の居住
- 英語またはフランス語能力
- 市民権テスト
カナダは移民国家で、比較的柔軟な制度です。
● イギリス
- 通常 5年居住
- 英語能力
- 「Life in the UK」と呼ばれる生活・歴史テスト
- 永住資格取得後にさらに1年居住
■ 日本の帰化制度は世界的に見てどうか?
結論として、日本の帰化制度は
- 手続きは丁寧で審査は厳格
- 居住年数は欧米と比べると平均的〜やや厳しめ
- 二重国籍禁止は世界的には珍しい方
という特徴を持っています。
特に「素行」「納税」「生活基盤」などの審査は厳しく、他国よりも細かい資料提出を求められるケースが多いとされています。
今回、居住要件が「5年から10年へ」引き上げられるとすれば、
- 欧州の多くの国より厳しい
- アジアでも最も厳しい部類
という制度になる可能性があります。
帰化要件が厳格化されるとどうなるか?
考えられる影響としては、次の3点です。
- 日本国籍取得者が減少する可能性
時間的なハードルが上がるため、帰化を選ぶ人は減少することが予想されます。 - 長期的な定住外国人の行動に影響
永住か帰化かを迷う層にとって、選択肢の重みが増します。
「10年は長い」と考える人が増える可能性があります。 - 日本社会の「国籍の重さ」が再認識される
国籍の価値、政治参加の意味、社会の一員としての責任が改めて注目されるでしょう。
まとめ──国籍とは「その国に生きる覚悟」を示すもの
今回の政府の動きは、単なる制度変更ではなく「日本社会をどうつくっていくか」という理念にも関わる大きなテーマです。
国籍とは、
- その国に生きる覚悟
- 社会と共に歩む意思
- 文化や価値観を共有する姿勢
を意味します。
帰化要件をどうするかは、日本という国がどんな未来を望むのか──その価値観を反映する重要な議論です。今後示される具体案を丁寧に見守りつつ、日本の外国人政策のあり方を考えていく必要があります。

