春の訪れとともに、草むらや山に出かける機会が増えてきます。自然の中で過ごす時間は心を癒やしてくれますが、そこで気をつけたいのが「マダニ」の存在です。
特に犬を連れてお散歩や山遊びをする方は、マダニに嚙まれたらどうなるのか、犬への影響を正しく知っておくことが大切です。
近年、マダニによる被害は全国的に増加しています。静岡県でも2024年には複数の感染症事例が報告されており、私自身もマダニに嚙まれてしまった経験があります。そこで、犬と人を守るマダニ対策について、感染症の情報や実体験を交えながらお伝えします。
マダニが増えている理由と私たちの暮らしへの影響
マダニの被害が拡大している背景には、野生動物の増加があります。ハンターの高齢化により駆除が減少し、林業の衰退によって山の管理も行き届かなくなりました。その結果、シカやイノシシなどの野生動物が増え、生息範囲を拡大。田畑や住宅街の近くにまで現れるようになっています。
2025年4月には静岡県沼津市の市街地にある焼き肉店内で野生のシカが捕獲されるという出来事がありました。こうした野生動物はマダニを体に付けていることが多く、私たちの生活圏にマダニが入り込むリスクが高まっています。
真っ昼間の沼津駅近くで…焼き肉店にシカ突入 「ガラス突き破って店内へ」https://t.co/DMgEWSR78U
— 静岡新聞DIGITAL(編集部からおすすめ記事をお届けします) (@shizushin) April 6, 2025
5日正午ごろ、沼津市高島町の飲食店「溶岩焼肉 朱」の近くにいた通行人から「店舗の出入り口のガラス戸を突き破って、シカのようなものが突っ込んだ」…
静岡県で報告されたマダニ感染症
日本紅斑熱の感染例
2024年10月、熱海保健所管内の女性と、賀茂保健所管内の男性が、マダニが媒介する「日本紅斑熱」に感染したと発表されました。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)の感染例
さらに同年5月には、県内で5人目となるSFTS感染者も確認されています。SFTSは、発熱や下痢、倦怠感などの症状を伴い、重症化すると命にかかわることもある恐ろしい病気です。現在、有効なワクチンや特効薬はなく、対症療法が中心となっています。

【筆者体験談】マダニに嚙まれた私と犬の話
2025年3月下旬、私は愛犬を連れてタケノコ掘りに出かけました。「気温も低いし、まだ早い時期だから大丈夫だろう」と油断していたのが間違いでした。帰宅後、私の足にマダニが付いているのを発見。犬の体にも数匹ついており、シャンプーしても取れませんでした。
慌ててスプレー式と滴下式のマダニ予防薬を使いました。シャンプーをしてしまったので。効果があるか心配でしたが。2日後には生きたマダニを見ることはありませんでした。犬には申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
実家が所有する竹林は、市街地にほど近い場所にあり、隣には民家もあります。近くには大きな公園もあるため、地域の方々が散歩やレジャーで訪れることも多い場所です。そんな身近な場所にもマダニが潜んでいるのかと思うと、驚きとともに不安を感じずにはいられませんでした。
犬も私も、かゆみが残っただけで幸い体調の異常はみられませんでした。

画像は、小学生の息子の顕微鏡をかりて撮影したものです。
マダニに嚙まれたらどうすればいい?
病原体を持つマダニはごく一部とされていますが、早めの除去が大切です。吸着後の時間が短ければ、先の細いピンセットで口器部分をゆっくり引き抜くことで、比較的簡単に除去できます。
もし3日以上経過してしまった場合は、マダニの口器が皮膚に強く接着しているため、無理に引き抜くと口器が残ってしまうリスクがあります。違和感やしこりが残る場合もあるため、その際は無理をせず皮膚科を受診してください。
また、ペット用のマダニ除去器具もありますが、これらは医療用ではないため、使用には注意が必要です。
そして、自分でマダニを除去した場合は、その虫体を捨てずに保管しておくことをおすすめします。もしも後日、発熱や体調不良が現れた場合、医療機関での診断の助けになります。
マダニから犬と人を守るための予防法
人の場合
- 森林や草地へ行くときは、長袖・長ズボン・帽子を着用。できれば長靴。虫がつきにくいナイロンのような素材の服がよい。
- 肌と服に虫よけスプレーを使う。(マダニに効果のあるものを選ぶ)
- 帰宅前に、服を払う。コロコロ(粘着クリーナーのようなもの)を使用する。
- 帰宅後はすぐに入浴・洗濯し、体をよく確認する

犬の場合
- 定期的にマダニ予防薬を使用(滴下式・飲み薬タイプなど)
- ペット用の虫よけスプレーを使用する。
- 散歩後は体をチェックし、異常がないか確認。
- 草むらへの立ち入りをなるべく避ける。
市販のマダニ予防薬の注意点:ノミとダニ、それぞれの効果の持続期間に差があることも
犬用のマダニ対策としては、動物病院で処方される薬のほかにも、市販の滴下タイプの予防薬や内服薬があります。最近では、ノミとマダニの両方を同時に予防できるお薬も多く販売されています。ここで気をつけたいポイントがあります。
それは、ノミとマダニに対する効果の持続期間が必ずしも同じではないという点です。
たとえば、ノミには2か月間効果があるけれど、マダニには1か月ほどしか持続しないタイプの製品もあります。使用する薬によって差があるため、「まだ効果があると思っていたのに、マダニに嚙まれてしまった」ということにもなりかねません。
パッケージや添付文書に記載されている使用期限や効果の持続期間をよく確認しましょう。また、定期的にカレンダーなどで投薬のスケジュールを管理することも大切です。心配な場合は、かかりつけの獣医師に相談するのがおすすめです。
まとめ:自然を楽しむために、マダニ対策を忘れずに
マダニに嚙まれたらどうしたらいいのか。犬への影響はどれほどあるのか。そうした不安を減らすためにも、日頃からの予防と早めの対応が大切です。
春から秋にかけて、マダニは活発に活動します。自然を楽しむためにも、犬と一緒にお出かけする際は、必ずマダニ対策をしておきましょう。
私たちの大切な家族である犬を守るためにも、今一度、マダニの危険性と向き合ってみてください。