情報通信研究機構(NICT)は11月12日、太陽で大規模な爆発現象「太陽フレア」が発生し、影響で、全地球測位システム(GPS)の精度低下や無線障害などが生じる恐れがあると発表しました。
地球の磁場が乱れる磁気嵐のピークは13日早朝と考えられ、GPSの精度低下や無線通信の障害、人工衛星の不具合などが起きる恐れがあります。スマートフォンや一般的な通信への影響は限定的とされていますが、船舶・航空分野では注意が必要です。
実は、太陽フレアによる影響はこれが初めてではありません。2024年10月にも強力なフレアが相次ぎ、地球規模で磁気嵐が発生しました。その際には、各地でオーロラが観測されるなど、私たちの生活にも間接的な影響を及ぼしています。
2024年10月の太陽フレア被害 ― GPSや無線通信に影響
2024年10月1日から11日にかけて、太陽表面の活動領域「AR3842」などでXクラスの強力な太陽フレアが連続発生しました。中でも10月3日に観測された「X9.0クラス」は、観測史上でも上位に入る規模。太陽から放出されたコロナ質量放出(CME)が地球に直撃し、磁気嵐を引き起こしました。
この影響で、GPS信号の精度が一時的に低下したほか、航空機の高周波通信にノイズが生じ、短波ラジオの受信が困難になる地域もありました。人工衛星の姿勢制御システムにも小規模な異常が報告されるなど、「宇宙天気」による地上・上空の環境変化が改めて注目されました。
太陽フレアとは? その仕組みと影響
太陽フレアとは、太陽表面の黒点周辺で発生する爆発現象のことです。強力な磁場のねじれが突然解放されることで、膨大なエネルギーを伴うX線や紫外線、電子・陽子などの高エネルギー粒子が放出されます。
このエネルギーは地球まで届き、電離層(上空100~1000kmの帯電層)を乱すことで通信障害や測位精度の低下を引き起こします。特に、太陽からのプラズマが放出される「コロナ質量放出(CME)」が伴う場合は、数日後に地球の磁場に大きな影響を与え、「磁気嵐」を引き起こすことがあります。
磁気嵐が発生すると、人工衛星・電力網・航空通信に影響が出る可能性があり、現代の社会インフラにとっては決して無視できない自然現象です。
太陽フレアが社会インフラにもたらすリスク
太陽フレアが大規模化した場合、社会経済に甚大な被害をもたらすおそれがあります。過去の事例や最悪のシナリオでは、以下のような影響が想定されています。
- 大規模停電:
強い磁気嵐が地上の送電網に地磁気誘導電流(GIC)を発生させ、変圧器を損傷させることで、広域かつ長期間の大規模停電を引き起こす可能性があります(例:1989年のカナダ・ケベック州での大規模停電)。 - 通信・放送の中断:
短波通信だけでなく、携帯電話やインターネット(特に高緯度地域や海底ケーブルの中継器)にも影響が及び、通信が断続的に使えなくなる可能性があります。 - 航空・船舶運行への支障:
GPSの測位精度の大幅な低下、レーダーや航空無線の障害により、航空機や船舶の運行見合わせや航路変更(高緯度飛行における乗務員の被曝予防のため)が発生する可能性があります。
なぜオーロラが発生するのか
太陽フレアや磁気嵐の際に話題になるのが「オーロラ」です。
太陽から放出された荷電粒子が地球の磁場に沿って極地方へと流れ込み、大気中の酸素や窒素と衝突することで光を放ちます。これがオーロラの正体です。
磁気嵐が強まると、通常は北極圏などの高緯度でしか見られないオーロラが、より低い緯度、たとえばヨーロッパ中部や北海道などでも観測されることがあります。
2024年10月の磁気嵐では、アメリカやイギリス、日本国内でもSNS上で多数のオーロラ画像が投稿され、「東京近郊でも赤みを帯びた夜空が見えた」と話題になりました。
このような現象は数年に一度しか見られない貴重な機会であり、太陽活動の周期(約11年周期)における「極大期」が近づいていることを示しています。
太陽フレアと地震の関係は?
一部では「太陽フレアが地震を引き起こすのでは」といった説が語られることがあります。しかし、現時点で科学的にその因果関係は確認されていません。
太陽フレアが影響を及ぼすのは主に地球の外層(電離層や磁気圏)であり、地殻内部のプレート運動とは直接の関係がないとされています。
気象庁や地球物理学の専門家も「太陽活動が地震の発生頻度を高めるという証拠はない」と明言しています。
ただし、太陽活動が強まる時期は地球全体の電磁環境が変化するため、地震発生との「相関」を探る研究は一部で続けられています。今後の解析により、宇宙と地球のつながりが新たに明らかになる可能性もあります。
まとめ:宇宙天気を意識する時代へ
太陽フレアは、宇宙空間だけでなく、私たちの生活インフラや通信システムにも影響を与える現象です。
2024年10月の太陽フレアでは、GPSや無線通信に一時的な障害が発生し、オーロラの観測という美しい現象とともに「宇宙天気」が現実の社会に影響することを実感させました。
2025年現在も太陽活動は活発化しており、今後も同様の現象が起こる可能性があります。気象庁や情報通信研究機構(NICT)の宇宙天気予報センターが発表する情報をチェックし、正しい知識を持って備えることが大切です。

