不動産小口投資サービス「みんなで大家さん」は、出資者への分配金の遅延をきっかけに信頼性が揺らぎ、東京都と大阪府による行政指導、さらに原告1000人規模・請求額100億円規模の集団訴訟準備といった大きな事態へと拡大しています。
この記事では、問題の経緯と論点、投資家が押さえておくべき点をまとめます。
「みんなで大家さん」とは?仕組みと資金規模
「みんなで大家さん」は、不動産小口投資商品として長年販売されてきた事業で、投資家から少額出資を募る形で複数の不動産プロジェクトを展開してきました。
出資単位は1口100万円とされ、利回りは年7%という高い利率が大きな売り文句となっていました。
これまでに約4万人の投資家から2000億円以上の資金を集めており、特に成田市で進めていた大規模開発事業「ゲートウェイ成田」は主力プロジェクトとして注目されてきました。
しかし、2023年頃から配当の遅れや停止が発生しはじめ、投資家の間で不安が広がりました。2024年以降は複数のプロジェクトに影響が及び、事業全体の信頼性が揺らぎ始めています。
みんなで大家さん配当遅延の発端
ホームページ上では「順調に開発が進行中」と強調されていましたが、実際の現地では工事の停止が確認されています。報道によると、2024年10月時点で現場に作業員の姿はほとんどなく、人の出入りも見られませんでした。
成田事業の遅延に伴い、該当プロジェクトの配当が止まり、その後は他の案件にも配当停止が連鎖。投資家の資産が回収不能となる懸念が高まり、集団での相談や訴訟準備が加速しました。

みんなで大家さん行政指導の理由
2024年10月14日、東京都と大阪府は「みんなで大家さん」を運営する事業者に対し、新たな行政指導を行ったと発表しました。
特に問題視されたのは、事業者が投資家へ提示した新スキーム「第三者譲渡契約」です。
その概要は以下の通りです。
- 投資家が保有する持分(1口100万円)を事業者が第三者に譲渡
- 第三者は「保険付き債券」を発行
- 保険会社が出資金を全額保証
- 年7%の利息も継続して支払う
一見すると投資家保護策のようですが、実際の「第三者」は事業者の100%子会社だったことが明らかになりました。これにより、実質的な救済策にはなっていないのではないかという批判が強まっています。
東京都は「投資家に対し、分かりやすく具体的に説明するよう指導した」とコメントし、大阪府も保険会社名や利息の根拠など8項目の情報開示を求めました。

みんなで大家さん側の反発:「社会的信用を害する」と主張
行政指導の発表に対し、「みんなで大家さん」側は強く反発しています。
発表文では次のように述べています。
「行政指導は本来、事業者による自主的な改善を促す任意のもの。公表によって社会的信用を傷つけるおそれがあり遺憾である」
法的拘束力がない段階での公表に不満を表明し、風評被害を懸念する姿勢を示しました。ただし、実質的なスキームの改善や投資家への説明責任には具体的に触れていません。
投資家・弁護士側からの批判と懸念点
投資家の代理人弁護士は、この「第三者譲渡スキーム」を次のように評価しています。
- 「訴訟回避のための時間稼ぎ」
- 「権利放棄を誘導するための仕組み」
- 「保険や利息の根拠が不明瞭」
譲渡契約に応じることで、投資家自身が出資金への法的請求権を失う可能性を指摘。裁判が起こせなくなることを懸念する声も多く、高齢の投資家を含む相談件数が増え続けています。
告1000人超・損害賠償100億円の集団訴訟へ
弁護団によると、第一次訴訟にはすでに1000人以上が参加予定で、損害賠償請求額は100億円規模に達する見通しです。
1人あたりの最高請求額は2億1400万円とされています。
相談者には高齢者が多く、「老後の資金が返ってこない」「生活費に充てる予定だった」という切実な声が相次いでいます。訴訟は今月末から来月上旬の提起を目指して準備が進められています。
成田国際空港株式会社の立場と対応
成田の開発地については、「成田国際空港株式会社」が土地を事業者に貸し出しています。同社は今回の投資トラブルを把握しているとしつつも、次のようにコメントしています。
- 「配当遅延は承知している」
- 「土地造成に投資資金を充てることはできないと聞いている」
- 「投資に関しては自己責任という認識である」
つまり、土地は貸しているものの、投資スキームには関与していないという立場です。
投資家が今すぐ確認すべきポイント
被害拡大を防ぐために、投資家が取るべき行動として次の点が重要です。
- 契約書・パンフレット・出資証明などの保管
- 第三者譲渡への安易な応諾を避ける
- 弁護団・専門家への早めの相談
- 行政や自治体の公式情報の確認
特に「権利放棄につながる可能性のある同意書」には注意が必要です。
みんなで大家さん:今後の焦点と見通し
この問題は、以下の点が今後の焦点となります。
- 行政処分や更なる指導の有無
- 第三者譲渡スキームの合法性
- 保険付き債券の実在性と保証内容
- 裁判の進行と賠償範囲
- 開発プロジェクトの継続性
もし実質的な資金余力がない場合、返還能力そのものが問われる可能性もあります。
まとめ:高利回り投資に潜むリスクと再発防止の課題
今回の「みんなで大家さん」の問題は、以下の教訓を含んでいます。
- 高利回り(年7%)をうたう投資はリスクを伴う
- 説明責任や透明性が欠けるスキームは要注意
- 行政指導があっても回収は保証されない
- 権利放棄と錯覚させる対策には注意が必要
今後も集団訴訟や行政対応によって事態が動く可能性が高いため、投資家は最新情報を確認し、法的手段の選択肢も含めて冷静に判断することが求められます。