外国人観光客や国内旅行者の増加とともに、公共交通機関でのマナー問題が注目されています。とくに、新幹線や在来線でのスーツケースの取り扱いをめぐりSNSで話題になっています。
せっかくの楽しい旅で、不快な思いをしたくはありません。今回は、公共交通機関へのスーツケース持ち込みのマナーについて、現状や実例、そして解決策を分かりやすく紹介します。
スーツケースの持ち込みマナーが問われている!
旅行の醍醐味といえば、非日常の風景や新たな体験。ですが、駅や車内で見かける“非常識なスーツケース利用”に、SNSでは「迷惑すぎる」「モラルがなさすぎ」といった声があふれています。
実際、2024年の大型連休中には、JR東海道本線でスーツケースが座席を占領していたという画像が話題に。「立っている人がいるのに、スーツケースで座席を潰すなんて」と、多くの人が怒りと驚きを覚えました。
座席占領・足乗せ…スーツケース迷惑行為とは?
報告されているマナー違反をあげてみますと──
・ボックス席の残り座席にスーツケースを置いて他人を座れなくする
・床に置いたスーツケースに足を乗せる外国人観光客
・大声でおしゃべりし、通行の妨げになるような荷物の置き方
さらに、新幹線で導入されている「特大荷物スペース付き座席」も、予約せずに勝手に荷物を置く人がいるため、正しく予約した乗客が使えないという逆転現象まで発生しています。
新幹線に持ち込めるスーツケースのルールは?
では、そもそも新幹線にはどのようなルールがあるのでしょうか。
JRおでかけネット:新幹線への「特大荷物」の持ち込みについて
- 3辺の合計が160cm以下のスーツケースは、予約不要でそのまま持ち込み可能。
- 160cm超~250cm以内の「特大荷物」を持ち込む場合は、事前に「特大荷物スペース付き座席」を予約する必要があります。
- 予約なしで持ち込んだ場合、当日手数料として1,000円が課されます。
これらのルールはJR各社の公式サイトにも記載されているものの、利用者に十分浸透していないのが現実です。
スーツケースの置き場所として考えられる場所
地下鉄や在来線では、専用の荷物スペースが少なく、他の乗客に迷惑をかけないよう気をつける必要があります。スーツケースを置くおすすめの場所や、知っておきたい基本ルールを紹介します。
1. 座席の前や足元
空いている時間帯であれば、自分の座席の前や足元にスーツケースを立てて置くことが可能です。ただし、混雑している場合は通行の妨げになるため避けるのが無難です。スーツケースが大きいときは、周囲の人の動線をよく観察しましょう。
2. 座席上の荷物棚
小型のスーツケースであれば、座席上の荷物棚に置くこともできます。ただし、重量がある荷物は落下の危険があるため注意が必要です。
3. 車両の端のスペース
一部の車両では、ドア付近に広めのスペースが確保されていることがあります。こうした場所が空いていれば、他の乗客の邪魔にならないように端に寄せて置くと良いでしょう。
4. 優先席付近のスペースは注意が必要
優先席の周辺には、車椅子やベビーカー用のスペースが設けられていることがありますが、空いていても無断で使用するのは避けましょう。必要としている方が現れた場合には、すぐに移動できるよう意識することが大切です。
5. 一部特急列車などの専用荷物置き場
一部の特急列車には、専用の荷物置き場が設置されていることがあります。在来線ではあまり見かけませんが、もし発見したら積極的に利用しましょう。
在来線:スーツケース持ち込み時のルールと配慮
スーツケースの大きさに関するルールは、鉄道各社によって細かく定められています。一般的な基準としては以下の通りです。
- 重量:30kg以内
- 容積:250リットル以内
- 長さ:2メートル以内
通常のスーツケースであれば、これらの基準を超えることはほぼありませんが、事前に確認しておくと安心です。
また、朝夕のラッシュ時間帯など、混雑が予想される時間には、大きな荷物の持ち込みを控えるよう呼びかけられることがあります。スーツケースはできる限りコンパクトにまとめ、周囲への配慮を心がけましょう。
荷物の置き方に迷ったら…
- 通路を塞がない
荷物を通路やドア付近に放置すると、他の乗客の迷惑になるだけでなく、安全面でも問題です。 - 貴重品の管理をしっかり
スーツケースに壊れやすい物や貴重品を入れている場合は、特に注意しましょう。貴重品はなるべく手元に持ち、目の届く場所に置くことをおすすめします。 - 困ったときは駅員さんに相談
置き場所が分からない、混雑でどうすればいいか迷ったというときは、迷わず駅係員に声をかけてみましょう。案内やアドバイスをしてくれるはずです。
海外ではスーツケースどうしてる?先進的な対応も
ヨーロッパをはじめとした海外の鉄道では、大型荷物対策が進んでいます。
- 荷物専用のラックやスペースが車両に完備
- 荷物専用車両を導入
- 有料で荷物を預けるサービス
旅行者が荷物をスマートに管理できる仕組みが整っており、日本でもこうした仕組みを取り入れるべきだという声も増えています。

日本の鉄道会社もスーツケース対策を強化中!
JR東海では、2025年7月から「予約不要の荷物置き場」を新たに導入予定。これにより、スーツケースの取り扱いで起きるトラブルや混雑を少しでも減らそうという狙いです。
ただし、どれだけ設備が整っても、利用者側のマナー意識が伴わなければ本質的な解決にはなりません。
マナーは“見せる”もの。日本人が手本に
インバウンド観光客の増加もあり、文化の違いからマナー違反が起きるケースもあります。だからこそ、日本人が正しいマナーを“行動で示す”ことが必要です。
「上の棚を使う」「他人の座席を荷物でふさがない」「静かに会話する」
そんな基本的なルールを守るだけで、他の乗客にもマナーが自然と伝わります。
また、多言語での案内表示やアナウンスの工夫も、鉄道会社に求められる対応策のひとつです。
まとめ:快適な旅の鍵は“思いやり”
スーツケースをめぐる問題は、「設備」と「マナー」、どちらか一方だけでは解決できません。
- 鉄道会社はルールの周知と設備改善を進める
- 利用者は公共の場にふさわしい行動を心がける
この両輪がそろってこそ、快適で安全な旅が実現するのです。
旅はひとりで完結するものではありません。
まわりの人を思いやる気持ちを持つだけで、次の旅がもっと心地よく、素敵なものになるはずです。