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論点はどこへ消えたのか?SNSとマスメディアがすり替えた選挙の構図

論点はどこへ消えたのか?SNSとマスメディアがすり替えた選挙の構図 時事・ニュース
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2025年参院選における「日本人ファースト」キャンペーンのSNS拡散と、マスコミ報道・政策論点のおかしな偏りについて考察


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拡散の“仕組み”が違えば、論点の焦点もズレる

今回の参議院選挙では、「発言そのもの」よりも「発言がどう拡がったか」が世論形成に与えた影響の方が大きかったかもしれません。とくに注目すべきなのは、SNSとマスメディアで情報が拡がるメカニズムの違いです。

SNSは、感情的なワードやショッキングな切り抜きが“瞬発的に拡散”される傾向があります。タイムライン上では、投稿者の主観が混じった「断片的な情報」が先に届き、文脈や真意が読み取られる前に“善悪”のジャッジが走ります。

一方、マスメディア(とくにテレビ)は、一定の編集と構成を経て報道されるため、情報は比較的整理されていますが、そのぶん“誰をどう描くか”というフレームが強く働きます。結果的に、発言内容そのものよりも「どのように演出されたか」に視聴者の印象が左右される傾向があります。

このように、同じ発言がSNSでは“炎上”として、テレビでは“対立構図の演出”として扱われることで、政策的な論点が後回しにされ、「誰が何を言ったか」というセンセーショナルな部分ばかりが共有・消費されてしまったのです。

ポピュリズム×煽動型動画戦略

「日本人ファースト」はSNSだけでなくYouTubeでも広がり、その拡散メカニズムの違いが注目されます。参政党関連の動画は、切り抜き動画や声を刺激するエモーショナルな演出(「マスゴミ」「衝撃」など)で大量拡散されました。一方、国民民主党の経済政策系動画は論理的な内容が中心で、再生回数は参政党の3分の1程度。

参政党は、刺激的なショート動画や問題提起型の発言によって、人々の怒りや不安といった感情を巧みに刺激しました。このアプローチはSNSの拡散性と非常に相性が良く、支持・批判の両側面で話題を生み、結果として情報が急速に広がる土壌となりました。とくに若年層は、こうした「感情に訴える訴求」に反応しやすく、拡散の主な担い手ともなっています。


マスコミ・SNS双方の偏りと誤情報

マスコミの取り上げ過ぎ・煽り構造

日本人ファースト」が激しくSNSでバズる背景には、一部ではメディアによる過度の取り上げによって、論点が偏らされたという指摘もあります。実際、ANNをはじめとしたテレビやネットニュースが過剰に取り上げ、“フェーズが変わった”という印象形成に寄与しました。

また、参政党がTBSの『報道特集』に抗議した際には、番組内で「日本人ファースト」を取り上げた外国人政策について不公平・偏向と主張し、申し入れを行いました。
その一方で、メディアは批判を恐れず煽る内容も含めて報道し、大衆の関心を最大化させた構図が存在しました。

SNS上の誤情報・排外主義的メッセージ

SNS上には「生活保護は外国人ばかり」「外国人優遇」などいわれのない情報も拡散され、Meltwater分析でも選挙期間中に多数確認されました。厚労省によれば、2023年度の生活保護受給世帯のうち、世帯主が外国籍の割合は約2.9%であり、制度上外国人優遇は存在しません。

参政党・神谷宗幣代表は選挙中「チョン」という差別的言葉を使用し、即時謝罪する場面がありました。また、公約キャッチコピーについて「選挙期間中だけ」使用すると発言した後に言い訳し、批判が一層強まりました。

このように、SNSと地上波によって拡散された「日本人ファースト」は、時に明確な誤情報や差別に基づく過激主張を含み、人々の受け止めを歪めました。

【参院選】れいわ山本太郎氏「論点ずらしにマスコミ加担」争点は外国人政策でなく「経済だった」(日刊スポーツ) - Yahoo!ニュース
れいわ新選組の山本太郎代表は21日の不定例会見で、20日に投開票された参院選比例代表で3議席を獲得したことについて「これだけ(党に)逆風の中で、議席を減らすことなく増やせたのはよくできた。多くの方

れいわ山本太郎の視点:論点のすり替え

山本太郎氏(れいわ新選組代表)は7月21日に記者会見で、今回の参院選で「外国人問題」が過度に争点化されたことについて強い疑問を表明。今回の本来の争点は経済であるはずだと主張しました。彼は、議席数こそ伸びたが、話題の中心が「外国人」や「外国人優遇」といった争点にすり替えられたのは誤りだと批判しています。

山本氏は「消費税撤廃」によって平均世帯が年間30万円以上潤うと主張し「経済政策こそ重要だった」と訴えました。しかし「話題作り」にSNSやマスコミが振り回され、経済的な実利よりも感情的な議論が先行した感は否めません。


票を集めたのは“話題性”か“政策”か

今回の参議院選挙では、「日本人ファースト」を掲げた参政党が、メディア露出やSNS上での拡散を通じて急速に支持を集めました。しかし、その過程には、政策内容よりも“話題性”や“物議を醸す言動”に注目が集まり、それが票に結びついた側面が否めません。

参政党・神谷宗幣代表は、街頭演説などで「高齢女性は子どもを産めない」など生物学的な事実を根拠に社会問題を提起しましたが、その表現が不適切であるとの批判も集まりました。テレビ朝日『選挙ステーション』に出演した際には、キャスターの大越健介氏との激しいやりとりが話題となり、一部視聴者からは「スカッとした」「真正面から意見を言う政治家」との評価も得ましたが、同時に「配慮を欠いた」「過激すぎる」との懸念も多く見られました。

これは、SNSの拡散構造とマスメディアの“炎上型報道”が合わさり、「意図的に物議を醸すことで注目を集め、結果的に票を獲得する」という構図の典型です。神谷氏自身も「配慮しすぎると何も言えなくなる」と発言しており、リスクを承知のうえで敢えて踏み込んだ言動を取っていることがうかがえます。

「珍しく怒ってる」大越キャスター 選挙特番で見せた参政党・神谷代表への“激しい追及”に視聴者騒然(女性自身) - Yahoo!ニュース
7月20日に投開票が行われた参議院選挙。自民・公明両党が過半数を割る大敗を喫し、新興政党である国民民主党や参政党の躍進が目立った。当日はテレビ各局で選挙特番が組まれ、テレビ朝日では午後7時54分

すり替えられた“本来の論点”:経済政策への関心喪失

れいわ新選組・山本太郎代表は、今回の選挙について「論点のすり替え」が行われたと強く批判しています。

本来争点となるべきは、失われた30年の経済停滞から脱却するための具体的な経済政策であり、れいわ新選組は消費税廃止や財政出動による景気回復を柱に訴えてきました。しかし、選挙戦が始まる直前から「外国人政策」「生活保護」「移民問題」といったテーマがSNSや報道で中心になり、「国民の暮らしをどう支えるか」という核心から目が逸らされたことを山本氏は「論点のすり替え」「スケープゴート」と断じています。

これは非常に重要な指摘です。実際、経済の実情を冷静に分析する報道や政策比較はごくわずかで、政治家の過激な言動や差別的発言の真偽をめぐる炎上が選挙報道の中心となっていました。その結果、有権者の関心も「感情的な争点」に吸い寄せられ、本質的な政策論争は置き去りにされた印象が強く残ります。


有権者が問うべき「情報リテラシー」と「政策の中身」

このような状況を踏まえると、有権者としては「何を信じ、何を基準に判断するか」がより重要になってきます。SNSやYouTubeなどの情報は即時性や共感性に優れますが、その反面、偏向や誤情報も多く含まれています。とくに「外国人が優遇されている」「生活保護は外国人ばかり」といった主張は、数字的な裏付けがないまま拡散されており、事実誤認が拡大する一因となりました。

情報の受け手である私たち一人ひとりが、「煽られた言葉」ではなく「数字や制度の根拠」に基づいて判断し、「誰が何を言っているか」ではなく「何を実現できるのか」を見極める必要があります。


選挙は“ショー”ではなく“選択”

今回の参院選は、SNSとマスコミが相乗的に「言葉の過激さ」や「話題性」に焦点を当て、政策本位の議論が十分に行われなかったという反省点があります。「日本人ファースト」というキャッチコピーが社会的議論を巻き起こしたことは事実ですが、それが単なるポピュリズムや排外主義に陥っては、民主主義の本質を損ねかねません。

私たちは、政治家のパフォーマンスに惑わされることなく、地に足のついた政策比較と、自らの暮らしと未来を見据えた投票行動を取るべきです。選挙は“ショー”ではなく、“国家の方向性を選ぶ行為”であるということを、改めて心に刻む必要があります。

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