例年、秋がピークとされてきたスズメバチによる被害。しかし、今年は全国各地で早くもスズメバチの刺傷被害が相次いでいます。特に2025年は梅雨明けが早く、6月から猛暑日が続いたことで、スズメバチの繁殖や巣作りが加速。人との遭遇が増えた結果、7月時点で異例の件数が報告されています。
こうした背景のもと、今回はスズメバチの行動特性と注意点、自宅で巣を見つけた際の対応、そして夏休み中の子供たちが特に注意すべき点について解説します。

なぜ今年はスズメバチの被害が早いのか
神戸大学の佐賀達矢助教は、気象条件がスズメバチの成長を促したと指摘しています。今年は梅雨明けが早く、雨が少なかったため、巣材の収集やエサの確保がスムーズに行えたと考えられています。日照時間が長く、気温も高いため、通常よりも早く大きな巣が完成し、働き蜂が活発に動き出しているのです。
スズメバチは基本的に雨の日には活動が鈍くなりますが、晴れた日が続くと、巣作りや狩りを一気に進めることができます。その結果、活動期が早まり、7月中旬にはすでに「警戒が必要な時期」に入ったといえる状況です。

自宅や身近な場所に巣ができやすい場所とは
スズメバチは人間の生活圏にも巣を作る習性があります。特に注意したいのは以下の場所です。
- 軒下や屋根裏
- エアコンの室外機周辺
- 樹木や生け垣
- 地中(地面の中に作られることもある)
- 倉庫や車庫の奥
- 庭木や高い枝の付け根
初期の巣はピンポン玉程度の大きさから始まり、直径30cmを超えるほどまで大きくなることもあります。小さいうちに発見できれば、自力での駆除も可能ですが、一定以上のサイズになると危険度が急激に高まります。

スズメバチに出会いやすい夏休みの虫取りに注意
夏休み期間中は、子どもが昆虫採集や外遊びに出かける機会が増えます。カブトムシやクワガタを探して樹液の出る木に近づくこともあるでしょう。しかし、この「樹液」こそが、スズメバチにとっても重要な栄養源です。
スズメバチはクヌギやコナラなどの木の樹液にもよく集まり、ほかの昆虫を追い払って独占しようとする性質があります。ときに攻撃的になるため、子どもが不用意に近づくと刺されるリスクがあります。
特に以下のような場面には注意が必要です。
- 森林や公園などの林で虫取りをする場合
- 夜間に懐中電灯を持って昆虫観察をする場合
- 昼間にスズメバチが飛んでいる木を見かけた場合
保護者の方は、事前に周囲を確認し、蜂が集まっている木には近づかないよう注意を促してください。

スズメバチは夜も活動するのか?
基本的にスズメバチの活動時間帯は日の出から日没までとされ、夜間は巣の中で静かにしています。しかし、「完全に無害」というわけではありません。
例えば以下のような例外があります。
- 気温が高い夜は巣の中で活動することもある
- 光に引き寄せられる個体が一部飛び出すことがある
- 懐中電灯やベランダの灯りに近づくこともある
特に都市部では、夜間に明るい照明が多いため、稀にスズメバチが飛来することがあります。こうした場合も、無理に追い払わず、窓を閉めるなどの対処が有効です。
スズメバチに遭遇したらどうすべきか
もしも外出先や庭先でスズメバチに遭遇してしまった場合、慌てずに以下の行動をとってください。
1. 急に動かないこと
手で払う、走る、叫ぶといった急激な動作は、スズメバチを刺激し、攻撃に繋がる危険があります。まずはその場で静止し、ゆっくりと後ずさるようにして離れます。
2. 黒や濃い色の服装は避ける
スズメバチは黒いものを敵と認識しやすい性質があるため、登山やハイキング、外作業では明るめの服装を選ぶのが賢明です。
3. 香りの強い整髪料や香水も避ける
花の香りに似た香水は、スズメバチを引き寄せてしまうことがあります。野外では無香タイプの製品を使用するか、使用を控えましょう。
4. 巣に近づかないこと
巣の近くでは、見張り役の働き蜂が警戒しており、人間が近づくと威嚇してきます。気づかずに近づいてしまった場合も、刺激しないように静かにその場を離れます。
自宅で巣を見つけたときは
小さな巣(直径25cm以内)であれば、夜間に市販の専用スプレーで駆除することも可能です。アース製薬などが販売している噴射距離の長い製品を使えば、ある程度の距離を保ったまま処理できます。
ただし、以下の条件に当てはまる場合は、自分での駆除は避け、専門業者への依頼が必要です。
- 巣の場所が高所、屋根裏、地中など手の届きにくい場所
- オオスズメバチの可能性がある
- 巣が直径30cm以上に成長している
- 自分での作業に不安がある
スズメバチの駆除は命に関わる危険が伴う行為です。費用はかかりますが、安全を最優先に判断しましょう。
正しい知識で、恐れすぎず、対処を
スズメバチは確かに攻撃性の高い昆虫ですが、理由もなく人を襲うことはありません。多くの場合は「巣への接近」や「不意の接触」による防衛反応です。正しい知識と行動で、スズメバチとの距離を保つことが最大の対策です。
今年のように活動時期が早まった年は、例年以上に注意が必要です。特に夏休み中の外遊びや虫取りでは、子どもたちがリスクを正しく理解できるよう、大人の目とサポートが欠かせません。
もしものときに備えて、地域の役所や保健所、駆除業者の連絡先を確認しておくことも有効です。
自然の中で過ごす夏を、安全で楽しいものにするために、スズメバチとの「ほどよい距離感」を心がけましょう。