教育無償化は、家庭の経済状況に関わらず、誰もが学びの機会を得られることを目指した制度です。近年、日本では高校や大学の学費を軽減・無償化する取り組みが進んでいます。2025年には新たな改正法が成立し、多子世帯を対象にした大学無償化が4月1日から始まりました。
では、高校や大学の無償化はどこまで進んでいるのでしょうか。
高校の無償化:
高校ではすでに授業料の無償化が行われていますが、すべての費用が無料になるわけではありません。
【公立高校】
公立高校では、「高等学校等就学支援金制度」よって、多くの世帯で授業料が実質無償になっています。
- 授業料は年額約11万8,800円ですが、支援金が支給されるため、ほとんどの家庭で負担はありません。
- ただし、授業料以外にかかる費用は対象外です。
【私立高校】
私立高校では、所得制限はあるものの、授業料を補助する制度が設けられています。
- 世帯年収590万円未満世帯に対して、2020年度から始まった「私立高校授業料実質無償化」の対象になります。
- 最大で約39万6,000円(都道府県によって異なります)が補助されるため、多くの家庭で負担が軽減されています。
高校で授業料以外にかかる費用:
無償化の対象外となる費用は意外と多く、家庭の負担は残ったままです。
【教科書費や教材費】
- 教科書費や図書費
- 実験・実習材料費
- 学用品費
【通学費】
- 通学定期代や通学用品費
【学校外活動費】
- 修学旅行や遠足の費用
- 塾や習い事の月謝
- スポーツや文化活動にかかる費用
- 参考書や家庭教師代
【学校納付金等】
- 学級費、PTA会費
- 施設整備費、生徒会費
- 寄付金
【部活動費】
- 部費、ユニフォーム代
- 合宿費用など
これらは学校や地域によって差があり、平均以上の費用がかかるケースもあります。また、低所得世帯の場合は、授業料以外の教育費を支援するために給付金が支給されることもあります。
小目 | 私立(全日制) | 公立(全日制) |
---|---|---|
入学金等 | 79,056円 | 18,062円 |
授業料 | 233,102円 | 45,194円 |
修学旅⾏費等 | 59,293円 | 36,452円 |
学校納付金等 | 112,256円 | 35,635円 |
図書・学⽤品・実習材料費等 | 74,565円 | 62,292円 |
教科外活動費 | 56,800円 | 49,371円 |
通学関係費 | 142,670円 | 97,738円 |
その他 | 8,7748円 | 6,708円 |
合計 | 845,490円 | 351,452円 |

大学の無償化:多子世帯への拡大
これまで大学無償化は、2025年4月1日からは多子世帯も対象に加わりました。
【対象となる世帯】
- 「多子世帯」とは、扶養する子どもが3人以上いる家庭。扶養とは、税法上で扶養控除の対象になっている子どもを指します。
- 所得制限はなく、対象学生の学費負担が大幅に軽減されます。
【支援内容】
- 授業料と入学金の減免
- 現金支給ではなく各学校の授業料が減額されます。
- 令和6年以前から在学している方も対象。
- 申し込み手続きは入学後各学校で。
これによって、多子世帯では経済的な理由で進学を諦めるケースが減ることが期待されています。
無償化の財源は?
教育無償化には多額の財源が必要になります。今回の多子世帯への大学無償化に関しては、約2,600億円が必要とされています。
- 消費税:今回の大学無償化は、消費税を財源として確保されています。
- 防衛増税による増収分:防衛費増額に伴う税収増の一部も活用されています。
- 国債発行:財源不足を補うために国債を発行し、将来的に返済する形で賄われています。
- 既存の予算見直し:他の政策予算を削減し、教育費に回すケースもあります。
今後の動きは?
教育無償化は今後さらに拡大する可能性があります。現在議論されている主な案は以下のとおりです。
- 私立高校の完全無償化
一部地域ではすでに実施されていますが、全国的な拡大が検討されています。 - 大学無償化の対象拡大
現時点では多子世帯に限られていますが、将来的には1人目の子どもにも適用される可能性があります。 - 給付型奨学金の充実
授業料だけでなく、生活費を支援するための給付型奨学金の拡充も議論されています。
まとめ:
教育無償化は高校ではすでに広く実施されていますが、授業料以外の費用負担は依然として大きい状況です。大学については多子世帯への支援がスタートしたものの、今後は対象拡大やさらなる支援が求められそうです。家計にとっては助けになりますが、安定した財源の確保が課題になりそうですね。