日本肥満学会が発表したデータが大きな波紋を呼びました。特に20代の女性の約2割が、BMI18.5未満の低体重、いわゆる「やせすぎ」に該当するという事実。これは、先進国の中でも非常に高い割合です。
この数字の裏には、私たちが無意識に抱いている「痩せている=美しい」という価値観が強く影響しています。メディアで目にする“理想の体型”が、若者たちの心に大きな影響を与えているのです。
なぜやせすぎになるのか?背景にある日本社会の価値観
多くの若い女性がやせすぎに至る背景には、痩せている=美しいという価値観の刷り込みがあります。
とくに近年では、InstagramやTikTokなどのSNSに投稿された“細すぎる”体型の写真が「理想の体型」とされ、これを目指す若者が増加。自分自身と比較し、「もっと痩せなければ」という強迫観念にとらわれてしまうようです。
日本肥満学会の調査によれば、小学生の時点で「痩せたい」と感じている児童が非常に多く、小学1年生で35%、6年生では半数以上が痩せたいと回答しています。これは非常に深刻な社会問題です。
やせすぎ文化の始まりはいつ?日本のダイエット観の変遷
戦後の価値観から一転、「スリム=美しい」への転換
こうした社会現象の背景には、日本独自のダイエット文化の長い歴史があります。
戦後間もない日本では、国全体が食糧難の時代。人々は「やせる」よりも「太りたい」「栄養を摂る」ことが目標でした。しかし1970年代に入ると、テレビや雑誌などのメディアが一般家庭に広く普及し、女性タレントやモデルの細身な体型が「理想の女性像」として浸透していきます。アイドルブームがあり、彼女たちのスリムな体型や華奢なシルエットに憧れる若者が増えました。
ダイエットブームの到来とSNSの影響
1990年代には「バナナダイエット」や「ゆで卵ダイエット」といった極端な減量法が流行し、やせることが自己管理能力の証とされるようになりました。コンビニや書店では数多くのダイエット本が並び、「リンゴダイエット」「こんにゃくダイエット」「豆腐ダイエット」などの単品食ブームが到来。
2000年代以降は、SNSの登場によって他人の体型やライフスタイルを簡単に比較できるようになり、さらに痩せ願望は強まっていきます。
InstagramやTikTokなどでは、加工された写真やスリムな体型が称賛され、美しさの基準を狭めています。また、「太っている」「ぽっちゃりしている」とされる人に対する無言のプレッシャーや嘲笑の空気も助長しています。
特に若年層の間では、写真や動画に写る自分の姿が「細く見えるか」「他人と比べて太っていないか」といった不安につながりやすく、「ぽっちゃり」=「恥ずかしい」「自己管理できていない」というレッテルが貼られてしまうこともあります。
海外の視点に学ぶ“自分らしさ”
日本ではいまだに「痩せている人が美しい」という価値観が根強く残っていますが、海外では少し違った考え方が主流です。
- ドイツ人女性:「人はそれぞれ違う体型。誰も気にしない」
- アメリカ人女性:「自分が満足していればそれでいい」
また、スペインやフランスでは、極端に痩せたモデルの起用を禁止する法律があり、広告やファッション業界にも一定の規制が設けられています。
日本でも、LINEヤフーが摂食障害や過剰なダイエットを助長する投稿への対策を強化するなど、徐々に変化の兆しは見られます。
やせすぎにならないためにできること
健康的な体型を維持するためには、次のような当たり前の生活習慣がとても重要です。
健康的に体を整える3つの基本:
- 朝食をしっかり食べる
- 毎日8,000歩の軽い運動
- 十分な睡眠をとる(夜更かしを避ける)
どれも、小学生でも知っているような基本的なことですが、それがやせすぎを防ぐカギとなります。過度な断食や無理な糖質制限、短期間で急激に体重を落とす方法は、リバウンドや健康被害のリスクを高めるだけです。
真の美しさとは?
やせすぎは決して“美”ではありません。
真の美しさとは、健康的な体と心のバランス、そして自分自身を大切にする意識から生まれます。
アメリカやドイツなどの海外では、「誰も体型を気にしない」「自分の体に満足していればそれでいい」といった意識が広く浸透しています。他人と比べるより、「自分にとってちょうど良い健康体型」を知ることが最も大切です。
まとめ:やせすぎ社会から健康第一社会へ
現在の日本社会では、若年層を中心にやせすぎが深刻な問題となっています。その背景には、美の基準、メディアの表現、SNS文化などが複雑に絡み合っています。
これからは、痩せていること=美しいという偏った常識を見直し、健康的な体を目指すことが何よりも大切です。
やせすぎは、身体にも心にも危険をもたらします。まずは正しい知識と価値観を持ち、誰もが安心して「自分らしく」生きられる社会を目指していきましょう。