近年、日本各地で「サルの出没」に関するニュースを目にする機会が増えています。特に話題となったのが、京都府宇治田原町で発生したサルによる自動車のサイドミラー盗難事件です。2023年末から150件以上の被害が報告され、町は対策に追われています。
しかし、これは一例に過ぎません。サルによる被害は、ミラー盗難にとどまらず、猫や子どもへの攻撃、農作物の荒らし、無人販売所の商品盗難など、多岐にわたります。
本記事では、サルが街に出没する理由、被害の実態、サルに遭遇した際の対処法、さらには野生動物に餌を与えてはいけない理由、安全にサルに会える施設まで、幅広く解説します。
サルによる被害の実態とその背景
車のサイドミラーを破壊・持ち去る
宇治田原町では、サルが車のサイドミラーに映った自分の姿を敵と認識し、威嚇・攻撃することでミラーを破壊するケースが相次いでいます。ミラーを引きちぎり、そのまま持ち去る例も確認されています。特に軽トラックなど、ミラーを自動で折りたためない車種が狙われやすいようです。
猫や子どもへの攻撃
住宅街で猫を襲ったり、公園で遊ぶ子どもに襲いかかるなどのケースも報告されています。サルは攻撃性を持つこともあり、特に繁殖期や群れで行動している際は注意が必要です。
農作物の食害と無人販売所荒らし
サルは野菜や果物などの農作物を狙うだけでなく、収穫された品が置かれている無人販売所にまで侵入することがあります。これにより、農家の経済的損失が深刻化しています。

なぜサルが街に出没するのか?その理由とは
1. 里山の荒廃と食糧不足
かつて人間の生活圏と野生動物の生息地の間には「里山」という緩衝地帯がありました。しかし、過疎化や農業の衰退により里山が手入れされなくなり、サルたちが人里に降りやすくなってしまいました。
2. 人間の食べ物を覚えた
ゴミの不適切な処理や、畑の作物、人間の手から与えられた餌により、サルが人間の食べ物の味を覚えてしまいました。その結果、サルは人間のエリアを”食べ物がある場所”と認識するようになり、定期的に出没するようになります。
3. 人への警戒心の低下
人間による餌やりや、追い払ってもすぐに戻ってくる状況が続くことで、サルが人間を恐れなくなっています。これは結果的に被害の増加を招いています。
野生動物に餌をあげてはいけない理由
サル被害の背景の一つとして、心ない人による「餌やり行為」があります。観光地や住宅地でも、かわいさからつい餌をあげてしまう人が後を絶ちません。しかし、この行為は多くの問題を引き起こします。
なぜ餌をあげてはいけないのか?
- 野生の本能を損なう サルは自ら餌を探す力を持っています。人間が餌を与えると、その能力が損なわれ、野生としての生きる力を失ってしまいます。
- 人間への依存と出没の習慣化 一度餌をもらったサルは、それを記憶し、定期的に人里に出没するようになります。これはさらなる被害を招く原因となります。
- 攻撃的になる恐れ 餌をもらえなかったときに人に対して威嚇や攻撃を行うなど、サルの行動がエスカレートする可能性があります。
- 殺処分の対象になることも 餌やりによって人間との距離が近くなりすぎたサルは、被害の拡大を理由に駆除されることもあります。”可哀想だから”という思いが、結果的にその命を奪うことにも繋がりかねません。
サルに遭遇した時の正しい対処法
サルと遭遇した際は、以下の行動を心がけてください:
- 目を合わせない(敵意と受け取られる可能性あり)
- 近づかない・追いかけない・威嚇しない
- 背を向けず、静かに後ずさりする
- 食べ物やゴミを見える場所に置かない
- 子どもやペットはすぐに屋内へ避難させる
サルは非常に賢く、群れで行動することが多いため、ひとりで対応しようとせず、必要に応じて自治体や警察に連絡するようにしましょう。

サルに会いたいなら…安全な施設で
サルに興味がある方や、子どもと一緒に見てみたい方は、動物園や保護施設など、適切な管理下で観察できる場所を利用しましょう。
● 地獄谷野猿公苑(長野県)
温泉に入るニホンザルで有名。野生のニホンザルが自然に近い状態で生活している環境で観察できます。世界中から観光客が訪れます。
● 高崎山自然動物園(大分県)
野生のサルが群れで生活しており、専任スタッフによる餌付けが見られます。約1,000頭のニホンザルが2つの群れに分かれて生活しており、毎日入れ替わりで「サル寄せ場」に現れます。園内には、サル寄せ場までモノレール「さるっこレール」も運行しており、山道が苦手な方でも気軽にアクセスできます。
https://www.takasakiyama.jp/
● 波勝崎モンキーベイ(静岡県南伊豆町)
野生のニホンザルと触れ合える施設です。東日本最大級のサルコロニーがあり、約300匹のサルが自然に近い状態で暮らしています。園内では、サルへの餌やり体験や、間近でサルを観察することができます。
https://monkeybay.jp/

まとめ:人とサルが共に暮らすために
サルによる被害は年々深刻化していますが、その背景には人間の暮らしや自然環境の変化、そして”人間側のマナー”の問題があります。
- サルには絶対に餌を与えない
- ゴミや食べ物を屋外に放置しない
- サイドミラーは可能な限り折りたたむ
- サルを見かけたら自治体へ報告
サルは本来、山で静かに暮らす野生動物です。私たちが節度ある行動を心がけることで、人と動物が“ほどよい距離”で共存できる環境が保たれるのです。