2025年7月4日、自民党の森山裕幹事長は、青森県板柳町で開かれた農家との意見交換会にて、1リットルあたり25.1円の「旧暫定税率」について「今年度でやめることはもう約束している」と述べました
この発言により、ガソリン税に上乗せされている旧暫定税率の2026年4月の廃止が現実味を帯びています。
暫定税率とは?いつから始まったのか
「暫定税率」とは、道路整備の財源確保を目的に、ガソリン税や軽油引取税、自動車重量税などに一時的に上乗せされた税率です。名前の通り「暫定的」な措置で、本来は時限的なものでした。
暫定税率の背景と導入理由
暫定税率が導入されたのは1974年の第一次オイルショックの影響を受け、国の道路整備が急務となったことが発端です。高度経済成長期で交通量が急増し、地方や都市部を含めて道路インフラが追い付いていなかった当時、財源を確保するために暫定的に税率を引き上げる必要がありました。
- ガソリン税(揮発油税)本則:28.7円/リットル
- 暫定税率分:25.1円/リットル
合計で53.8円/リットルの課税が長年続いており、このうち暫定税率分が事実上恒久化されてしまったことが大きな問題でした。
ガソリン価格にはこの税金に加え、消費税(10%)も課税されているため、実質的に約4割が税金となっています。
◼ 道路特定財源の一般財源化
2008年、道路特定財源制度は廃止され、「道路整備にしか使えない」という縛りが撤廃されました。しかし、税率自体は維持され続け、財源は医療・年金・福祉などにも活用されるようになりました。
このことが、「なぜ暫定なのにいつまでも続いているのか?」という国民の強い不満につながっていったのです。
暫定税率 廃止はいつから?
森山幹事長の発言によれば、年度途中の廃止は難しく、2026年4月からの廃止が濃厚です。
なぜ「年度途中」の廃止は難しいのか
制度上、税率の変更は会計年度をまたぐ形で行われることが原則です。そのため、森山幹事長は「年度途中の廃止は難しい」との見解を示し、「今年度内に終えるためには、12月の党税制調査会でしっかり決めていくことが大事だ」と強調。森山氏自身も党税調の幹部という立場から、来るべき結論を見据えた発言といえます。
廃止の合意と進捗状況
- 2024年12月:自民・公明・国民民主の3党が旧暫定税率廃止で基本合意
- 2025年3月:立憲民主党・国民民主党が、暫定税率廃止を盛り込んだ予算案修正案を提出(ただし維新は時期的に難しく、共同提出せず)
- 2025年6月20日:衆院本会議にて、野党提出の「ガソリン暫定税率廃止法案」が賛成多数で可決。参院に送付されました。
- 現在(2025年7月):森山氏が「今年度内に廃止を決める」と明言。
今後の予想されるスケジュール
時期 | 内容 |
---|---|
2025年12月 | 自民党税制調査会で正式決定 |
2026年2〜3月 | 国会で法案成立を目指す |
2026年4月 | 暫定税率廃止(ガソリン減税開始) |
暫定税率が廃止されるといくら安くなる?
暫定税率の25.1円/リットルが廃止されれば、ガソリン価格は理論上、1リットルあたり25.1円の減税になります。
例えば、ガソリンを月に50リットル給油する家庭では、年間約15,060円の負担軽減が見込まれます。特に地方在住で車を頻繁に利用する家庭にとっては、ガソリン代の軽減は大きな支援となるでしょう。
二重課税の問題とは
ガソリン税は消費税の課税対象にもなっており、「税に税をかける」二重課税の構造が存在します。
- ガソリン価格 = 本体価格 + ガソリン税(本則 + 暫定税率) + 消費税
この二重課税は長年、消費者から「不公平」と批判されており、暫定税率廃止を機に二重課税の見直しも求める声が高まっています。
他に暫定税率があるものは?
ガソリン以外にも、現在以下の税に暫定税率が適用されています。
- 軽油引取税:現行32.1円/リットル(暫定分15.0円含む)
- 自動車重量税:車両総重量別に暫定税率が上乗せ
- 石油ガス税:暫定税率が継続中
これらも「一時的措置」のはずが長期にわたり維持され、ガソリン税と同様の問題を抱えています。
トリガー条項とは?再開の可能性は?
トリガー条項は、ガソリン価格が全国平均160円/リットルを3か月連続で超えた場合に、暫定税率を一時的に停止する仕組みです。
具体的には、ガソリンの全国平均価格が3ヶ月連続で1リットルあたり160円を超えた場合に発動し、暫定税率分の課税が停止されます。
しかし、東日本大震災をきっかけに2011年から凍結され、現在も停止されたままです。暫定税率が廃止されれば、トリガー条項の再稼働が現実的に議論される可能性もあります。
ネット・SNSの反応「選挙対策では?」
SNS上では今回の森山幹事長の発言に対して、さまざまな声が上がっています。
◼ 賛成派の声
- 「やっと暫定がなくなる。地方在住で車が必須だから本当に助かる。」
- 「物価高の今、ガソリン代の負担が減るのは大きい。実現してほしい。」
◼ 懐疑派・批判的な声
- 「どうせ選挙前のアピールでしょ。結局延長するんじゃないの?」
- 「財源がなくなるってことは、結局別の名目で他の税金を上げるんじゃない?」
- 「なぜここまで引き延ばしたのか。もっと早く廃止できたはず。」
◼ 財政を懸念する声
- 「地方のインフラ整備が心配。本当に穴埋めできるの?」
- 「減税はありがたいけど、次世代の負担が増えるのでは?」
実際、廃止は選挙対策ではないかと疑う声も根強く、国民の政治への信頼回復が重要な課題になりそうです。
まとめ|暫定税率 廃止は家計にプラス、でも課題も残る
- 暫定税率は1974年から続く時限措置だった
- 現在のガソリン税は53.8円/リットル(本則28.7円+暫定25.1円)
- 森山幹事長が今年度での廃止を約束し、2026年4月実施が濃厚
- 廃止によりガソリン価格は1リットルあたり約25円安くなる見込み
- トリガー条項の再開や二重課税の見直しも課題
ガソリンの暫定税率廃止は、家計の負担軽減につながる大きなニュースです。一方で、税収減や地方財政への影響、選挙対策との疑念など、多くの課題が残されています。
今後の税制調査会や国会審議の動きに注目し、実際に「約束」が実行されるのか、国民は慎重に見守る必要があります。