2025年7月29日、野党8党が「ガソリン税の暫定税率」廃止に向けて11月1日施行を目指す方針で一致しました。自民党幹部は「ガソリン税の暫定税率廃止法案を巡る与野党の合意文書案」について、大筋で受け入れる考えを示しています。
これは家計を直接支援する可能性がある減税措置であり、同時に国や地方自治体の税収に大きな影響を及ぼす政策でもあります。

ガソリン税の暫定税率とは?
暫定税率は、1970年代のオイルショックを背景に導入されたもので、当初は一時的な財政措置として位置づけられていました。具体的には、ガソリン1リットルあたり25.1円の税金が上乗せされており、これが現在まで維持されています。かつては道路やトンネルの整備など特定財源として使われていましたが、2009年からは一般財源として扱われています。
ガソリン税廃止で価格はどう変わる?
直近の7月22日時点での全国平均ガソリン価格はリッター173.6円。単純計算で暫定税率が廃止されれば、148.5円程度まで価格が下がる可能性があります。これは消費者にとって年間で数千円から1万円程度の負担軽減となる試算もあり、特に車を日常的に利用する地方在住者にとっては大きな恩恵です。
玉木代表が語る「シン・トリガー法案」とガソリン税の段階的移行案
国民民主党の玉木雄一郎代表は、自身のSNSで以下のように述べました:
「現在の10円/Lの補助金を段階的に引き上げて10月末に25.1円/Lにし、11月から暫定税率25.1円/Lを廃止すれば、現場に混乱を与えることなく廃止できます」
この提案は、補助金と税制の入れ替えによって市場の混乱を防ぎ、円滑な価格移行を図るものです。国民民主党が提案している「シン・トリガー法案」を応用したアプローチであり、政策実現への現実的手法として注目されています。
自民党も協議に前向き?ガソリン税廃止に向けた与野党協議の行方
これまで慎重な姿勢をとってきた自民党ですが、29日には党幹部が「合意文書案を大筋で受け入れる」考えを示しました。30日には国対委員長会談が行われ、正式な合意が見込まれています。一方、林官房長官は「課題解決が必要」とし、税収減に対する対応策が焦点になると述べています。
ガソリン税廃止がもたらす1.5兆円の税収減:財源はどう確保する?
ガソリン・軽油合わせて暫定税率を廃止した場合、国と地方を合わせて年間約1兆5000億円の税収減になると見込まれています。これは国が約1兆円、地方が約5000億円の規模です。加藤財務大臣はこの点に言及し、「財源面からの対応が必要」と強調しました。
考えられる財源確保策としては:
- 他の予算項目の見直しや削減
- 特定の補助金・交付金の再構成
- 景気刺激による税収増
- 環境対策やEV普及政策との一体化による代替財源創出
などが挙げられます。
地方自治体とインフラへの懸念
ガソリン税の一部は地方交付税や道路整備などの財源として活用されており、暫定税率の廃止によってインフラ整備が滞る可能性も指摘されています。地方にとっては、財政運営や将来の計画に直結する重大な問題です。今後、地方自治体との協議も重要なプロセスとなります。
今後の展望:ガソリン税廃止をめぐる国会議論の焦点とは?
8月1日召集の臨時国会では、野党8党が共同提出する法案の審議が注目されます。財源問題や地方への配慮、廃止までのスケジュール設計など、多岐にわたる論点が議論される見通しです。
この政策が実現すれば、ガソリン価格は確実に下がり、消費者へのインパクトは大きい一方、財政・制度設計への丁寧な対応が不可欠です。実現に向けた道のりには、国民的な理解と合意形成が求められるでしょう。