「外国免許切替(外免切替)」制度は、これまで多くの外国人旅行者や短期滞在者によって利用されてきましたが、制度の運用が緩すぎるとの批判も根強く、特に住民票がなくてもホテルの住所で免許取得が可能な実態には、かねてより問題視する声が上がっていました。
2025年5月、自民党の河野太郎氏が、自身のX(旧Twitter)にて「日本に住民票のない中国人が、来日して中国の運転免許証を日本の免許証に切り替えることは、今後認めないと警察庁が明確にした」と投稿しました。
河野氏の発言をきっかけに、外免切替制度の抜本的な見直しを求める声が高まる中、警察庁や政権与党による制度改革の動きも注目されています。この記事では、中国人による外免切替の背景や、過去に起きた事故例、制度上の問題点、そして今後の課題について詳しく解説します。
外免切替とは?|日本の免許を外国免許から取得できる制度
外免切替(外国免許切替)制度とは、外国で取得した運転免許を、日本の運転免許に切り替えることができる制度です。たとえば中国、韓国、台湾、アメリカ、フランスなど、対象となる国の免許であれば、日本での技能試験や学科試験の一部(もしくはすべて)が免除され、日本の免許を取得できます。
この制度の目的は、日本で暮らす外国人や、海外に駐在していた日本人が円滑に運転できるようにすることでした。しかし近年は制度の“甘さ”や“悪用”が問題視されています。
問題①:「ホテルの住所」で日本の運転免許が取れる
最大の懸念は、日本に住民票がない外国人でも外免切替を利用できる点です。
現在、多くの都道府県では「一時滞在証明書」の提出があれば、住民票がなくても免許申請が可能です。この証明書は、日本国内のホテルや民泊の住所でも作成できてしまいます。
実例:ホテルを拠点に中国人が日本の免許を取得
- 東京都内の警察署では、中国人観光客が都内のビジネスホテルの住所を登録し、外免切替で免許を取得した事例が複数確認されています。
- 滞在日数がわずかでも、ホテル側が「一時滞在証明」を発行すれば申請が受理されるケースがあるのです。
こうした制度の運用により、「実際には日本に住んでいない外国人」が、日本の運転免許を取得→国際免許に切り替え→第三国(例:アメリカやヨーロッパ)で使用するという抜け道が生まれています。
問題②:交通事故と統計の未整備
警察庁は、外免切替によって取得された免許に関する事故データを公表していませんが、報道ではいくつかの事例が明らかになっています。
実例:外免切替を利用した中国人による重大事故
- 2023年、千葉県で中国人観光客がレンタカーを借り、ガードレールに衝突して同乗者が重傷を負う事故が発生。
- 運転していた人物は中国の免許を外免切替で日本免許に変更し、滞在期間わずか10日間という短期滞在者でした。
- 警察は交通ルールの理解不足が原因のひとつと見ていますが、事故当事者は「免許があるから問題ない」と主張。
これらのケースは氷山の一角にすぎず、制度が安全を担保していない可能性があります。
政府の対応は?河野太郎氏の指摘と今後の見通し
河野太郎氏は2025年5月のX投稿で、「日本に住民票のない中国人が、来日して中国の運転免許証を日本の免許証に切り替えるのは今後認めないことを警察庁が明確にしました。」と述べました。
ただし、警察庁からの正式な発表は現時点では存在していません。これは制度改正の検討が進んでいる中で、河野氏が「先走った形」で方針を述べた可能性もあります。
一方、警視庁では2024年12月から「一時滞在証明書」に関する条件を厳格化しています。
- 証明人の同行義務
- ホテルなどの住所ではなく、滞在実態の裏付けを強化
といった措置が取られましたが、全国の対応はまちまちで、抜け道は依然として残っています。
外免切替の「今後の課題」
外免切替制度は、外国人や帰国した日本人が日本国内でスムーズに運転できるように設けられたものです。
しかし、近年その制度運用に大きな問題が浮き彫りになっています。特に、住民票を持たない短期滞在の外国人が、ホテルや民泊などの一時的な住所を使って日本の運転免許を取得できるという実態には、大きな懸念が寄せられています。
これにより、生活実態がないまま免許を持ち、安全運転への意識や交通ルールの理解が不十分なまま公道を走る可能性があるのです。
現在の制度では、一時滞在証明書を住所証明として用いることが可能であり、チェック体制も十分とは言えません。このような抜け穴が、制度全体の信頼性を損ねる要因になっています。
さらに、外免切替では国や地域によっては技能試験や学科試験が大幅に簡略化されるケースがあり、日本の交通事情に不慣れなまま免許を取得する人も少なくありません。
その結果、実際に中国人観光客が山梨県内で死亡事故を起こしたケースのように、重大事故に繋がる事例も出てきています。
しかし、こうした外免切替によって取得された免許による事故の統計は十分に整備されておらず、再発防止のための具体的な対策を立てにくいのが現状です。
今後は、試験制度の厳格化や全国統一基準の導入、そして事故データの収集と分析、公表の仕組みを整備し、制度の信頼性と交通安全を担保する抜本的な見直しが求められています。
課題 | 改善の方向性 |
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住民票がなくても申請可能 | 日本国内に一定期間の居住実績を義務づける |
ホテル住所での申請 | 申請住所の実態確認を厳格化 |
試験内容が簡単すぎる | 学科・技能試験の見直し |
事故統計の未整備 | 外免切替者の事故率を可視化・公表 |
外免切替制度と向き合う必要性
現在の外免切替制度には、制度の趣旨と実態との間に大きなズレがあります。
特に、「日本に住んでいない外国人が、ホテル住所で日本の免許を取得できる」という現実は、安全面・制度の公平性から見ても大きな問題です。
河野太郎氏の発言をきっかけに、警察庁や関係機関が制度の見直しを本格化させることが期待されます。