2025年8月13日夜、大阪・関西万博の会場と直結する大阪メトロ中央線で送電トラブルが発生し、一時全線で運転を見合わせる事態になりました。
唯一の鉄道アクセスが止まり、数千人規模の来場者が帰宅困難となり、会場で一夜を過ごす“オールナイト万博”が突如として現実に。翌朝の始発運転再開まで、会場は昼間とは違う特別な空気に包まれました。
中央線トラブルからオールナイト万博へ
トラブルは午後9時30分頃、中央線のコスモスクエア駅~大阪港駅間で送電線に異常が発生したことに端を発します。この路線は夢洲駅(万博会場へ直結)への唯一のアクセスルートであり、そこが止まることは即ち“完全に孤立した会場”を意味しました。
消防によると、大阪メトロの運転見合わせ以降、熱中症や気分不良などを訴える通報が相次ぎ、未就学児から80代までの男女36人が病院に救急搬送されました。いずれも重症ではなかったものの、体調を崩す人が続出したことから、夜間の環境整備や迅速な救護体制の重要性が浮き彫りとなりました。
混雑と疲労が顕在化
夢洲駅や東ゲート付近の広場は帰宅を待つ来場者で溢れ返り、会場内では「おせえよ」といった怒号も飛び交う緊迫の空気に包まれました。体調不良を訴える人が多数出され、中には担架で運ばれる方もいたそうです。これは単なる設備トラブルでは済まない深刻な事態といえるでしょう。
徐々に広がる支援の輪
午後10時10分頃には、夢洲駅~コスモスクエア駅間で折り返し運転が再開されましたが、混雑により入場規制も伴いました。迂回策として、ニュートラム南港ポートタウン線の増発や、西ゲートからの臨時バスの運行も開始され、来場者の分散が図られました。
さらに万博協会は、東ゲート付近の複数のパビリオン(大阪ヘルスケアパビリオン、NTTパビリオン、ナショナルデーホール、電力館など)を臨時に開放。来場者の一時的な避難場所として提供し、“災害時に準じた対応”が現地で実施されました。ひとときとはいえ、こうした対応が安全の支えになったことは間違いありません。
翌朝への対応:運転再開から開場時間の再設定へ
設備点検が進められ、14日午前5時25分には中央線の全線運転が再開されました。これによりようやく、来場者の帰宅手段は改善されたものの、一夜を会場内で過ごした疲労は容易には癒せません。
翌14日、万博の開場時間は急きょ「午前10時」に変更。これにより来場者への影響を最低限にとどめるべく、運営側は慎重な調整を図りました。
SNSが映したオールナイト万博の現場
楽しむ姿勢を見せた来場者
- 「修学旅行の夜みたいでワクワクした」
- 「レアな深夜の万博体験、忘れられない」
- 「パビリオンが夜通し開いていて感動」
特に海外パビリオンの対応は称賛の声が多く、ポルトガル館ではワインやビール販売、オランダ館では冷たい水の無料配布が行われました。アート系パビリオンでは深夜特有の演出もあり、「こんな万博は二度とない」と楽しむ声も。
苦労や不満も多数
- 「帰りの交通手段がなくて不安だった」
- 「バスもタクシーも長蛇の列、高額料金も」
- 「小さな子どもや高齢者には過酷すぎる」
特に、鉄道アクセスが中央線1本に依存している構造や、リアルタイムでの案内不足が課題として浮き彫りになりました。
オールナイト万博の経緯まとめ
大阪・関西万博で開催された「オールナイト万博」について、経緯、運営側の対応、そして問題点を以下にまとめます。
経緯
「オールナイト万博」は、大阪メトロ中央線の運転見合わせにより、多くの来場者が会場である夢洲(ゆめしま)から帰宅できなくなったことで発生しました。この事態を受けて、急遽、来場者が会場内で夜を明かすことになりました。
- 21時30分頃:夢洲~コスモスクエア間で電気系統のトラブル発生。
- 運転見合わせ:折り返し運転を試みるも、駅構内の混雑や安全確保のため再び運転中止。
- 会場内避難:万博協会は東ゲートや複数パビリオンを臨時開放し、来場者を受け入れ。冷房や給水、休憩スペースが提供されました。
- 翌朝5時25分:中央線全線で運転再開。
運営側の対応
運営側は、来場者の安全確保と快適性のために様々な対応を行いました。
- 施設の開放: 夜間は閉鎖される予定だった休憩所やパビリオンを開放しました。
- サービスの提供: 来場者向けに、緊急用の毛布や座布団、温かい飲み物などを無料で提供しました。一部のパビリオンでは、飲食物の臨時販売も行われました。
- 安全対策: 医療スタッフが待機し、巡回するなど、体調不良者への対応に努めました。
- 情報提供: 定期的な館内アナウンスを実施しました。

問題点
この事態を通じて、いくつかの問題点が明らかになりました。
- 交通インフラの脆弱性: 万博会場へのアクセスが大阪メトロ中央線1本に依存しているという構造的な問題が露呈しました。単一の交通ルートに障害が発生すると、会場全体が麻痺する危険性が指摘されました。
- 情報提供の不備: 来場者からは、状況に関する情報が不十分である、特に外国人来場者向けのアナウンスが少ない、といった不満の声が上がりました。
- 緊急時の対応体制: 開幕から数カ月が経過しているにもかかわらず、大規模な交通トラブルといった緊急事態への対応体制が十分に整備されていなかった点も課題となりました。
- 体調不良者の続出: 救急車の出動が相次ぎ、熱中症や混雑による体調不良を訴える人が多数発生しました。
まとめ:オールナイト万博は偶然の一夜か、それとも教訓か
今回の「オールナイト万博」は、想定外のトラブルから生まれた特別な一夜でした。SNSでは「大変だったけど楽しかった」「一生の思い出になった」という声が多く上がる一方、安全面や運営面での課題もはっきりと浮かび上がりました。
この経験を次の運営改善につなげることで、大阪・関西万博はより安全で快適な“未来の祭典”へと進化できるはずです。