2024年9月下旬、SNSを中心に「外国人配信者による暴力行為」とされる動画が拡散され、大きな物議を醸しています。舞台となったのはJR九州の鹿児島本線・鳥栖駅付近の車内。スペイン出身とされる男性配信者が、優先座席に座ってライブ配信をしていたところ、別の乗客である高齢男性と口論に発展し、最終的には配信者が男性を突き飛ばす場面が映像に残されていました。
X(旧Twitter)では、《逮捕案件では?》《即刻強制送還すべき》といった厳しい声が相次ぎ、日本のみならず海外からも批判が寄せられています。しかしその一方で、「先に手を出したのは注意した男性ではないか」「鉄道警察はなぜ動かなかったのか」といった冷静な視点も見られ、議論は過熱するばかりです。
電車内トラブルの経緯
まずは事実関係を確認しておきましょう。
- 配信者はアニメ『ワンピース』のルフィ風ファッションで世界を旅しており、TikTokなどで迷惑系に近い動画を投稿していた過去があります。
- 問題の動画では、彼が優先座席でライブ配信を実施。
- それを見た高齢男性が「うるさい」と胸を叩いて注意。
- 配信者は状況を理解できず、男性が再び戻ってきて顔付近を小突いたところで対立がエスカレート。
- 配信者が男性を両手で突き飛ばす映像が拡散されました。
SNSでは一部切り抜き動画のみが拡散されており、「一方的に暴力を振るったように見えるもの」「注意された直後から始まるもの」など複数のバージョンが存在します。そのため、視聴者によって印象が大きく異なる状況となっています。

電車内トラブルでJR九州が“警察を呼ばなかった理由”
JR九州は女性自身の取材に応じ、「男性の方から『警察を呼ばなくていい』『電車を遅らせたくない』との申し出があったため、鉄道警察隊には連絡しませんでした」と説明しています。
また、駅員や乗務員は暴力の瞬間を直接は見ておらず、証拠が動画だけではその場で配信者を拘束する判断はできなかったとのこと。男性にも目立った怪我はなく、現場での対応としては「当事者を引き離し、配信者を車掌の視界に移動させる」に留めたと説明しています。
この対応についてネットでは賛否両論。
- 《本人が望んでいないなら介入できないのは仕方ない》
- 《動画が証拠なんだから警察に引き渡すべきだった》
- 《迷惑行為の常習者なら入国管理局に通報してほしい》
など、多くの声が寄せられています。
”電車内トラブル”法的には?
今回のケースを刑法上で当てはめると、状況によって暴行罪に該当する可能性があります。
また、日本の法律では「正当防衛」は過剰になると成立しません。 つまり「先に叩かれたから押し返した」という主張をしても、動画のように明らかに過剰な反撃と判断されれば正当防衛とは認められない可能性があります。
ただし刑事処分は被害届が出るかどうかが大きなポイントであり、今回は高齢男性がそれを望まなかったため、JR九州もそれに従った形になります。
電車内トラブル以外にも問題行為か
今回の電車内トラブルは、突発的な“揉め事”というよりも、常習的な迷惑行為の延長線上にあると考える人が多くいます。
当該配信者は スペイン出身のYouTuber「Kelton」(@keltonlive) とされ、海外では「迷惑系・炎上系IRL(In Real Life)配信者」として知られる存在です。
彼の配信スタイルは、屋外や公共の場での行動をリアルタイムで配信し、「挑発的な行為を行い、それを視聴者と共有する」 というもの。
日本国内でも、すでに以下のようなトラブルが報じられています。
- カラオケ店に向けてロケット花火を乱射して大騒ぎする動画をSNSに投稿
→ 火花が人や車に当たれば重大事故につながる、極めて危険な行為です。 - 神社の敷地に無断で侵入しようとする様子を配信
→ 文化財や宗教施設への不敬行為として、多くの人から非難を浴びました。
これらの行為は単なる“悪ふざけ”では済まされません。
火薬類取締法違反(花火の不正使用)や、建造物侵入罪(神社の敷地に無断で入る行為)に該当する可能性がある、明確な法令違反です。

「迷惑行為が収益になる」SNS時代の恐ろしい構造
なぜ彼らはここまで過激な行為をするのでしょうか。その答えは明白です。
炎上すればするほど再生数が伸び、広告収益・投げ銭・フォロワー増加に繋がる
正義感から批判のコメントをする人も、怒りながら動画を見る人も、結局は 「彼らの再生数に貢献する存在」 になってしまいます。
TikTokやYouTubeのアルゴリズムは「議論を生む動画」や「感情を揺さぶる動画」を優先的に拡散します。つまり “嫌われるコンテンツ”のほうがバズりやすい仕組み ができあがっているのです。
迷惑行為を見たらどうすべき?
SNSでは《自分ならもっと強く注意する》《その場にいたら引きずり出していた》といったコメントも見られますが、直接注意するのは非常に危険です。
鉄道会社も「トラブルを発見した場合は、乗務員や駅員にお知らせください。車内にはSOSボタンも設置されています」と呼びかけています。
JR九州の車両には各車両非常通報ボタン(SOS)があり、押すと運転士に直接連絡されます。声を荒げて注意するより、安全かつ確実な方法です。
私たちにできる最大の“武器”とは ——「見ない・拡散しない」
迷惑系配信者が消えない一番の理由は、「結局みんな見てしまうから」です。
怒りながらでも見れば、それは クリック=利益 になります。「コメント欄で反論してやろう」と思えば、エンゲージメントが上がり、さらに動画が拡散されます。
“視聴者の意識”が変われば炎上ビジネスは終わる
JR九州での外国人配信者トラブルは、単なる喧嘩ではありません。
「迷惑行為=エンタメ化」する社会
「炎上すれば勝ち」というビジネス構造
「見る人がいる限りなくならない」負の循環
この構図を壊す方法は 私たち一人ひとりの“見る/見ない”という小さな選択 にかかっています。
怒ることは簡単です。
批判することも簡単です。
しかし、本当に迷惑系配信者を減らしたいなら、「黙って通報。あとは見ない。」この“冷静な態度”こそが、最も強力な抑止力になるのです。