2025年の大阪・関西万博で提供された英国パビリオンのアフタヌーンティーが、SNS上で大きな批判を浴び、駐日英国大使館が謝罪する事態に発展しました。
この出来事は、外食における“体験価値”の重要性を改めて浮き彫りにしました。
万博英国パビリオンのアフタヌーンティー炎上の経緯
万博開幕から約3週間が経過した4月下旬、英国パビリオンで提供されたアフタヌーンティーに関するSNS投稿が注目を集めました。
投稿者は、メニューにはスコーン2個と記載されていたにもかかわらず、実際には1個しか提供されなかったことや、紅茶が紙コップにティーバッグを入れたものであったこと、クロテッド・クリームやジャムも紙コップに入れられていたことなどを写真とともに報告しました。さらに、ティースタンドが簡素なトレイであったことや、ケーキが業務用製品に酷似しているとの指摘もありました。
これらの投稿は瞬く間に拡散され、多くの人々から「これで5000円は高すぎる」「期待していた英国の伝統的なアフタヌーンティーとはかけ離れている」といった批判の声が上がりました。
炎上の背景にある“体験価値”の欠如
アフタヌーンティーは、19世紀の英国貴族階級で生まれた文化であり、単なる食事ではなく「社交の場」としての意味合いを持ちます。紅茶と軽食をゆったり楽しむこの習慣は、現在でもイギリス文化の象徴とされ、「優雅なひととき」を連想させます。
そのため、英国パビリオンでアフタヌーンティーを提供する際には、単に紅茶とスコーンを出すだけでなく、「本場の空気感」までを再現する必要がありました。しかし、紙コップや簡素な木製トレイといった提供方法では、そうした期待に応えることができず、体験価値が大きく損なわれてしまいました。
駐日英国大使館の対応とサービス改善
批判の声を受け、駐日英国大使館は公式X(旧Twitter)アカウントで「皆様からのご指摘を受け、すでに一部のサービスに関して改善しております」と声明を発表しました。
具体的には、紅茶を紙コップではなく陶磁器のティーカップで提供するよう変更したとのことです。また、大阪・関西万博英国政府代表のキャロリン・デービットソン氏も動画で謝罪し、「皆様からの声は今後の運営の参考として大切に受け止めております」と述べました。
この迅速な対応に対しては、「素早い対応でとても好感持てます」「対応めちゃくちゃ早いし、真摯」といった称賛の声も上がりましたが、一方で「なぜ紙コップを使ったのだろうか」「改善されたなら良かったけど、改善前の人にはお詫びした方がいいよね」といった疑問の声も残っています。
アフタヌーンティーの現在の提供状況と今後の課題
現在、英国パビリオンのアフタヌーンティーは、陶磁器のティーカップで提供されるなど、サービスの改善が図られています。しかし、今回の炎上は、外食における“価格相応の価値”とは何か、という本質的な問いを投げかけています。特に、SNS時代においては、消費者が味だけでなく、写真で見た“夢”を体験したいと願っており、広告と現場提供の一貫性がますます重要になっています。
万博のような巨大イベントでは、通常営業のレストランとは異なる環境で食事を提供しなければならず、提供回数が非常に多く、キッチン設備やスタッフの教育、物流など課題は多いです。しかし、消費者がそうした舞台裏を考慮することは難しく、5000円という価格に見合った体験価値を提供することが求められます。
まとめ
今回の英国パビリオンのアフタヌーンティー炎上は、外食における“体験価値”の重要性を改めて示す出来事となりました。提供される料理や飲み物の味だけでなく、提供方法や雰囲気、サービスなど、総合的な体験が消費者の満足度に直結することを再認識する必要があります。今後、万博をはじめとする大規模イベントでは、こうした体験価値を高める工夫が求められるでしょう。