全国各地で、竹の一種「ハチク」が一斉に枯れる現象が確認されています。この現象はおよそ120年に一度とされ、2020年頃から徐々に各地で報告が相次いでいます。青々としていた竹林が一変し、白くしなびた幹が並ぶ姿は、まるで風景が枯れ込んだような印象を与えます。
ハチクとは?120年に一度の神秘的な現象
ハチク(淡竹)は、日本に広く自生・栽培されている竹の一種で、マダケやモウソウチクと並ぶ主要な竹のひとつです。特徴的なのはその開花周期。およそ120年に一度、全国で一斉に花を咲かせ、その後に枯死するという極めて珍しい性質を持っています。
2020年前後から全国的にハチクの開花が始まり、それに伴い多くの竹林が枯れ始めているのです。島根県や山口県では既に広範囲で枯死が確認され、タケノコの収穫がゼロになるなど、生活にも影響が出始めています。
主要な竹「ハチク」全国各地で一斉枯れ 120年に1度の現象、タケノコも確認できず 自宅の裏山、道路脇でも倒竹懸念…しかし行政の撤去補助はなし(山陰中央新報)https://t.co/xFbkmm0yyb
— LINE NEWS (@news_line_me) April 16, 2025
なぜ竹林が問題視されているのか?
一見、自然の一部として美しく見える竹林ですが、実は多くの地域で「厄介者」として扱われるようになっています。理由は以下の通りです。
1. 繁殖力が非常に強い
竹は地下茎で横に広がるため、放置すると急速に周囲の山林や農地を侵食します。特にハチクやモウソウチクは繁殖力が強く、1年で数メートルも広がることがあります。
2. 在来樹種を駆逐する
竹林が広がると、光が入らなくなり、もともとその土地にあった広葉樹林が衰退します。生態系バランスが崩れ、多様な動植物が生息できなくなるというリスクが伴います。
3. 土砂崩れの危険性
竹の根は浅く、土壌をしっかりと固定できません。そのため、広葉樹林と比べて地滑り・土砂崩れの危険性が高まるとされています。
4. 景観と安全の悪化
今回のように一斉枯死が進むと、枯れた竹が風で倒れやすくなり、道路や家屋に被害を与えるリスクも高まります。観光地や住宅地の景観にも大きな影響を及ぼします。
マダケやモウソウチクも枯れるのか?
ハチクほど長周期ではありませんが、他の竹も定期的に開花して枯れる性質を持っています。モウソウチクは67年に1度、マダケは約120年に一度と言われています。こうした竹の一斉開花・枯死は、自然界では非常に珍しい「同期開花現象」として知られています。
なぜ嵐山の竹林は枯れないのか?
京都・嵐山の竹林は、国内外から多くの観光客が訪れる名所として有名ですが、不思議とこうした一斉枯死の影響を受けていません。理由は、以下のように考えられます。
- 定期的に管理されていること:枯れた竹や古い竹は伐採され、若い竹のみを選んで植え替えることで、美観と健康を保っています。
- 観光資源としての意識:景観保全のために、地元自治体や住民、事業者が連携して日常的なメンテナンスを行っているのです。
- モウソウチクは枯死する範囲が狭いと考えられるため、嵐山の竹林が一斉に枯れることがない

竹林があると土地を国に返せない?相続土地国庫帰属制度の注意点
2023年4月から開始された「相続土地国庫帰属制度」は、使い道がなく管理も難しい相続土地を国に引き渡すことができる制度です。ですが、竹林がある土地は原則として対象外です。
法務省の公式Q&Aによると、「放置すると周囲に侵入するおそれがあり、定期的な伐採が必要な竹」が存在する土地は、「土地の通常の管理や処分を阻害する工作物等がある」と判断され、制度の適用が認められません。
つまり、竹林のある土地は、伐採・整備を済ませないと国に引き渡すことができないのです。
竹林管理の方法と行政支援
竹粉砕機の貸出
一部自治体では、住民や地域団体向けに竹粉砕機(チッパー)の貸出を行っています。これにより、伐採した竹をその場で細かくし、堆肥化や搬出の効率化が可能になります。
例:
- 三田市(兵庫県):地域活動支援として粉砕機を無料貸出
- 八女市(福岡県):竹林整備事業に対する補助金制度あり
竹伐採業者の活用
伐採が困難な場合は、民間の専門業者に依頼することも検討しましょう。費用は場所や面積によって異なりますが、補助制度と組み合わせることで負担を軽減できます。
放置竹林を資源に変える!活用の可能性
竹は手間さえかければ、非常に有用な素材です。
- 竹炭・竹酢液:消臭・除湿・園芸用資材として活用
- 竹パウダー:家畜の飼料、堆肥として利用可能
- 竹バイオマス燃料:再生可能エネルギー源として注目
- 割り箸・家具・建築材:軽くて丈夫な素材として再評価されつつあります
竹林は「負の遺産」ではなく、工夫次第で地域資源としての価値を持つのです。
まとめ:竹林とどう向き合うか
- ハチクの一斉枯死は自然の神秘であると同時に、私たちの暮らしにも影響を与えています。
- 放置竹林は、景観・安全・環境すべてにおいて深刻な問題を引き起こします。
- 「相続土地国庫帰属制度」は便利な制度ですが、竹林があると適用されないケースがあります。
- 地方自治体の支援制度や専門業者の力を借りながら、計画的な整備が求められます。
- 竹は適切に管理すれば、持続可能な資源として活用する道があります。
次世代へと美しい自然と健全な土地を受け継ぐために、いま私たちにできることを考えていきましょう。