若者の離職が話題になるこの時期、「新入社員がたった1週間で辞めた」といった話が、SNSやニュースで取り上げられることも珍しくなくなってきました。
それを受けて「最近の若者は根性がない」「すぐ辞める」といった声が上がる一方で、若者たちは冷静かつ現実的に、自分の働き方や職場環境について見極め、離職という選択をしていることも多いのです。
ここでは、早期退職の背景や、注目される退職代行サービスの実態について紹介します。
若者の離職率は変わっていない?数字が示す“昔と今”
まず、実際のデータを見てみましょう。
厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」によれば、大学新卒者の3年以内離職率は、大きな変化はなく、30%前後で推移しています。つまり、「最近の若者が特別にすぐ辞めている」という印象は、実際にはデータに裏づけされていません。
変わっているのは、辞めるタイミングや辞め方の多様化です。SNSで退職のエピソードが可視化されたり、退職代行という新しい選択肢が登場したことで、これまで表に出にくかった早期退職の事例が、より目立つようになったと考えるのが自然です。

入社早々に辞める理由とは?若者たちの本音
入社後すぐに辞める決断をする若者たちの多くは、「ただの気分」や「甘え」で離職を選んでいるわけではありません。
配属された職場が求人内容と大きく異なっていたり、人間関係に強いストレスを感じたりと、自分の中で「これはもう無理だ」と判断せざるを得ない状況に追い込まれているケースも多くあります。
たとえば以下のような声があります。
- 「最初の面談で聞いた業務内容と、実際にやらされる仕事がまったく違った」
- 「新入社員へのサポートがなく、初日から一人で作業を任されて不安しかなかった」
- 「上司の叱責が強すぎて、通勤電車に乗るだけで動悸が止まらなかった」
こうした声からもわかるように、彼ら・彼女らの多くは、自分の心身を守るために離職を選んでいるのであって、それはむしろ「主体的な選択」と言えるのではないでしょうか。
退職を“自分で言えない”人の選択肢──退職代行の存在
「辞めたいけれど、自分で会社に言い出せない」
「精神的に追い込まれていて、電話やメールをする気力も残っていない」
こうした悩みに応える形で広がっているのが、退職代行サービスです。
近年は、学生時代からその存在を知っている若者も多く、身近なサービスとして捉えられています。職場環境が悪い場合や、上司との関係が悪化している場合に効果的です。
若者の離職の背景には「職場側の問題」も
若者の離職だけがクローズアップされがちですが、問題の本質は「なぜ辞めたくなるのか」にあります。
実際、早期退職の理由には、企業側の受け入れ体制や育成制度の不備、あるいは職場文化そのものが影響していることも多いのです。
- 採用時の情報と現場の実態にギャップがある
- 新人研修が機能しておらず、配属後すぐに放置される
- ミスが許されない雰囲気で、心理的安全性がない
こうした状況では、本人にどれだけ意欲や熱意があっても、「続けること」が難しくなってしまいます。
つまり、若者の離職を単に「我慢が足りない」と断じるのは、あまりにも一面的だと言えるでしょう。

働く価値観の変化と、辞め方の多様化
今の若者たちは、「とにかく我慢して働き続けること」に価値を感じるとは限りません。
むしろ、心や身体を壊してまで続けることに疑問を感じ、自分らしく働ける環境を求める傾向が強くなっています。
- 自分に合わない環境からは早めに離れる
- 心身を守ることを最優先する
- 転職や学び直しも、前向きな選択と捉える
こうした考え方は、「辞めること=逃げ」ではなく、「自分の人生を見つめ直すための一歩」として捉えられるべき時代に来ているのではないでしょうか。
まとめ:若者の離職は“問題”ではなく“変化のサイン”
若者の早期退職を一概に「問題」と決めつけるのではなく、それが表している社会や職場の構造に目を向けることが重要です。
退職代行の利用や、早期離職という選択肢は、決して特別なものではなくなりました。
それは、働き方やキャリア観が多様化した現代において、ごく自然な流れでもあるのです。
離職率は変わっていない。
変わったのは、働き方と、辞め方の選択肢。
「すぐ辞める若者」を批判する前に、社会や企業、そして私たち自身が、その背景を正しく理解し、次の世代にとって健全な職場環境とは何かを、考えていく必要があるのではないでしょうか。