坂口志文氏がノーベル生理学・医学賞受賞!制御性T細胞の発見が世界を変えた

坂口志文氏がノーベル生理学・医学賞受賞!制御性T細胞の発見が世界を変えた 時事・ニュース
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2025年10月6日、スウェーデンのカロリンスカ研究所(ノーベル委員会)は、ノーベル生理学・医学賞を坂口志文(さかぐち しもん)氏(大阪大学名誉教授)ら3人に授与すると発表しました。

授賞理由は、「免疫系の自己制御に関する発見」、特に 制御性T細胞 の発見とその機能解明が高く評価されたものです。
これは、免疫が暴走して自分の体を攻撃してしまう「自己免疫疾患」の仕組みを理解する上で、画期的な成果とされています。

日本人としては2年連続、医学・生理学賞としては7年ぶりの快挙です。


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坂口志文氏とは ― 免疫学の世界を切り拓いた研究者

坂口志文氏は1951年、滋賀県に生まれました。京都大学で医学を学び、免疫学の研究に進みます。
米国での留学経験を経て、日本に戻った後も長年にわたり「免疫がなぜ自分を攻撃しないのか」という根本的な謎に挑み続けました。

当初は理解されにくい研究テーマで、論文がなかなか受け入れられない時期もありましたが、1980年代から90年代にかけての地道な実験が後の大発見につながりました。
坂口氏は大阪大学免疫学フロンティア研究センター(IFReC)の特任教授を務め、現在も研究と若手育成に力を注いでいます。

会見では、「免疫にはアクセルとブレーキがある。制御性T細胞はそのブレーキ役を果たしている」
と語り、基礎研究の重要性を強調しました。


制御性T細胞とは? わかりやすく解説

免疫とは、体を守るためにウイルスや細菌を攻撃するシステムですが、行き過ぎると自分の細胞まで攻撃してしまうことがあります。
この「暴走」を防ぐブレーキの役割を果たすのが、制御性T細胞(Treg) です。

制御性T細胞は、他の免疫細胞が働きすぎないように抑える細胞で、体内の「免疫バランス」を保つ中心的な存在です。

坂口氏は1995年、Tregを特徴づける「CD25」という分子マーカーを発見しました。
さらに、他の研究者らとともに、Foxp3(フォックスP3)遺伝子 がこの細胞の働きを決定することを明らかにし、免疫制御のメカニズムを世界に示しました。

この研究は「免疫系の第二の革命」とも呼ばれ、自己免疫疾患・がん・移植医療など幅広い分野で応用が期待されています。


医学への応用 ― 免疫の“ブレーキ”を治療に活かす

坂口氏の発見は、医学の現場にも大きな影響を与えています。

  • 自己免疫疾患(関節リウマチ、1型糖尿病、多発性硬化症など): アレルギーや自己免疫疾患がなぜ起こるのかという根本的な理解が進み、これらの病気の新しい治療法の開発に道を開きました。
  • 臓器移植: 制御性T細胞の働きを強めることで、移植された臓器に対する拒絶反応を抑える研究も進んでいます。
  • がん治療への応用: 免疫細胞の働きを抑える制御性T細胞を弱めることで、免疫ががん細胞を攻撃する力を強めるがん免疫療法の研究・発展にもつながっています。

これらの研究はすでに臨床応用段階に入りつつあり、坂口氏の発見が「免疫医療の未来」を形づくる基盤となっています。


ノーベル賞の意義と坂口氏の功績

ノーベル賞は「人類への最大の貢献」を評価する賞です。
坂口志文氏の研究は、免疫の仕組みを根本から理解するという純粋な科学的探求から始まりました。

この成果がもたらしたのは、単なる医学的知見ではなく、
「人の体がなぜ自分を守れるのか」という生命の根幹に迫る洞察でした。

その地道な努力と忍耐の積み重ねが、いま世界に認められたのです。

坂口氏は会見で「理解されるまでに時間はかかりましたが、諦めずに続けてきてよかった。科学は長い時間をかけて花開くものです。」と語りました。


ノーベル賞を受賞すると?

ノーベル賞は、自然科学・文学・平和など分野別に授与される世界最高峰の栄誉のひとつです。受賞者には、以下のような特典や変化が伴います。

賞金とメダル・賞状

  • 2025年の生理学・医学賞の場合、賞金は 1,100万スウェーデン・クローナ(約1億7,600万円相当)です。
  • この金額は受賞者3人で分配されます。
  • 受賞者には、金メダルと称号にふさわしい賞状(ディプロマ)が授与されます。

税金・所得扱い

日本国内において、ノーベル賞の賞金(医学・生理学・物理学・化学・文学・平和賞)は 非課税 とされており、所得税法第9条13号に「ノーベル基金から交付される金品は所得税の課税対象としない」と明記されています。

ただし例外として、経済学賞 の賞金はノーベル財団とは別の基金(スウェーデン国立銀行)から交付されるため、非課税扱いとはならず課税対象となる可能性が指摘されています。

名誉・研究環境・認知

ノーベル賞受賞は世界的な名声をもたらし、受賞者には研究資金の獲得、国際共同研究パートナーからの注目、後進育成や政策提言の影響力拡大といった機会が拡がります。また、メディア露出や講演依頼も増えることが一般的です。

さらに、一部の国では国家勲章や栄誉称号、年金制度の適用なども付随することがあります(ただし国・分野・制度によって異なります)。


坂口志文氏の受賞が示すもの


2025年のノーベル生理学・医学賞を受賞した坂口志文氏。
その研究は、免疫が自分を攻撃しない理由という生命の根源的な謎を解き明かしました。

制御性T細胞の発見は、自己免疫疾患やがん治療など、医療の未来を左右するほどの意義を持っています。
そして何より、坂口氏の「諦めない研究姿勢」が、次世代の科学者たちに大きな希望を与えました。

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