大阪・関西万博の会場では、連日「当日券交換」をめぐる混乱が続いています。チケットをすでに購入しているにもかかわらず、予約枠が取れないまま期限切れが迫り、いわゆる「期限切れ間近のチケット」を抱えた来場希望者が、最後の望みを託して東ゲート前の交換所へと向かっているのです。
並ばない万博と長蛇の列
「並ばない万博」というキャッチコピーとは裏腹に、現地では未明から長蛇の列ができ、徹夜する人まで現れています。9月27日には、正午入場分の当日券交換の受付が午前6時過ぎには締め切られたという報道もあります。夜明け前に到着しても枠に間に合わない人もおり、列の先頭に立つには「午前3時台に来ておくべき」といった噂まで流れています。
当日券交換は「未利用チケットを持っている人だけ」が対象であり、1人1枚まで交換可能です。ただし1日の交換数は数百枚程度に限定されており、並んだからといって確実に手続きできるわけではありません。
万博の予約制度と「チケット引換券」方式
まずは、そもそものチケット制度から整理しておきます。
チケットの種類と予約制度
大阪・関西万博のチケットには、「一日券」「平日券」「夜間券」などの種類があります。
ただし、「来場日時指定のない」引換券(=“予約なしで使える”券)は、2025年8月17日をもって販売終了しています。
また、「予約可能引換券」という、来場日時の指定がない引換券が、混雑予想日を除いて利用できる期間が限定されており、7月31日をもってその販売が終了しました。
チケット購入後、実際の入場には「来場日時予約」という仕組みがあり、チケットとは別に“いつ来るか”を予約する制度が存在します。これにより、混雑を制御する意図があったと見られます。
このように、チケットそのものを買うだけでは入場できず、日時予約をする仕組みになっていたため、利用者にとっては二重の“ハードル”がある構造でした。
チケット引換方式・“引換券”の運用
多くのチケットは引換券の形式を採っており、購入後、現地で正式な入場チケット(QRコード付き紙チケット等)に引き換える必要があります。
また、コンビニエンスストアや旅行代理店で「紙のチケット/チケット引換券」を購入するルートも提供されていました。これを会場付近の「ゲート前チケット引換所」で入場用のQR付きチケットに交換するという流れです。
このような引換制度は、来場日時予約制度との併用で、複雑さを増すことになりました。ただ、運営側としては、転売対策や混雑制御を図る狙いもあったと思われます。

“死にチケット”発生の背景と問題
「死にチケット」とは、せっかく購入したものの、来場日時予約が取れず、実際には使えない(未利用になる)チケットを指す呼称です。購入しても入場できない、という“無効化”の問題を示しています。
なぜ“死にチケット”が発生したか
いくつかの制度的・運用的要因が重なって、未利用チケット(=死にチケット)が多発する状況が生じました。
来場日時予約枠の枯渇
来場日時予約は先着順であり、人気日や時間帯は予約枠が早期に埋まります。チケットを購入したとしても、希望日時の予約が取れなければ、実際に行けない状況が生じます。
予約なし利用可能日の縮小
「予約可能引換券」は一定期間、予約なしで使える日を設けていましたが、その期間は限定的で、後半には利用可能日が減少し、7月31日で販売終了となりました。こうした変更により、「予約なしでふらっと行く」ことを想定していた利用者が置き去りにされる形になった可能性があります。
混雑予測・満席日の拡大
公式サイトは毎日「来場日時予約の空き状況」や「混雑予測」を発表しており、予約枠が早期満席となる日が多くなってきました。閉幕期が近づくにつれて人気集中が激化し、予約枠の枯渇ペースが加速したようです。
販売終了期の前倒し・制限強化
公式チケットの新規販売は、最終的に9月30日に終了すると発表されました。また、東西ゲート前での現地での当日券販売は9月26日で終了予定とされ、以降は現地での新規チケット購入はできなくなる案内も出されています。これにより、残された選択肢が“未利用チケットを交換する”制度しか残されない状況になりました。
こうした制度設計・変更のタイミングと、利用者の購買行動や予測困難性がかみ合わず、死にチケット発生の温床ができてしまったと言えます。
当日券交換制度の導入とその動き
死にチケット問題への対処策として、運営側は「未利用チケットを当日券に交換する」制度を導入しました。
交換制度の概要と実施期間
公式発表によれば、9月27日から10月12日まで、東ゲート前のチケット引換所において、未利用チケットを「当日12時以降入場のチケット」もしくは「16時以降入場の夜間券」に交換する措置が取られます。
交換可能な未利用チケットは、「一日券」「平日券」「特別割引券」「夜間券」などで、利用期限が切れていないものです。ただし、開幕券・前期券・予約可能引換券など、一部の券種は対象外となります。
交換できる上限は、来場者1名につき未利用チケット1枚までで、1日あたり数百枚程度に限定され、なくなり次第終了となります。
交換開始時刻は、12時以降入場券であれば11時から、夜間券(16時以降)なら15時45分から交換開始となります。
この交換制度は、未利用チケットを活用させつつ、来場希望者の最後の受け皿を設けようという狙いで導入されています。
当日券交換をめぐるSNSの反応
SNS上では、「当日券交換」が連日トレンド入りするほどの注目を集めています。その背景にあるのは、「チケットを買ったのに確実に入場できない*という根本的な問題です。多くのユーザーは、予約枠の確保に失敗した結果、極端に少ない当日交換枠を求めて徹夜や未明からの行列に並ばざるを得なくなっていることに、強い憤りを感じています。
特に目立つのは、運営体制への批判です。「寝袋を持参しないとチケット交換できない万博って何だ」「運営はこの混乱を望んでいるのか」といった声は、混乱が単なる人気過熱ではなく、運営側の準備不足や制度設計の甘さに起因していると捉えられていることを示しています。
万博はいつまで開催されるのか
大阪・関西万博は、2025年4月13日から10月13日までの184日間にわたって開催される予定です。夏休みや長期連休が終わった現在でも来場希望者は減っておらず、むしろ「期限までに必ず行きたい」という焦りが高まっているとみられます。
特に、購入済みチケットの利用期限が近づくにつれて「行けなくなる前に何としてでも入場したい」という心理が強まり、早朝からの行列を生む要因にもなっています。
なぜここまで混乱が起きているのか
混乱の背景には、チケット制度と予約システムの複雑さがある。万博の入場には「チケットを持っているだけでは入れない」仕組みが採用されている。
事前に公式アプリやウェブ上で入場日時の予約枠を取得する必要があるのだ。しかし人気の高い日程や時間帯は数分で埋まってしまい、予約が取れないまま期限を迎える人が続出した。その結果、使えなくなったチケット――いわゆる「死にチケット」を抱える人々が、「当日交換所」へ殺到するという構図になっている。さらに現地での案内も少なく、「どの位置までが受付可能なのか」「今並んで間に合うのか」が分からないまま列に加わる人も多く、不安と不満を増幅させている。
「当日券交換」は、いつまで続くのか
運営側は当日券交換の実施期間を限定しており、交換枠も日ごとに用意数が決まっています。つまり、この行列も永遠に続くわけではありません。ただ、終了時期が近づけば近づくほど駆け込み需要が増え、さらに熾烈な争奪戦になる可能性もあります。
一部では、「交換制度が終わったら、もう入れない人が溢れるのでは」という懸念も上がっています。今後の動き次第では、別の手段や追加措置が講じられる可能性もゼロではありませんが、現時点では明確な案内は出ていません。