シャインマスカット栽培権をニュージーランドへ?背景と海外産との違いを考える

シャインマスカット栽培権をニュージーランドへ?背景と海外産との違いを考える 農業
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シャインマスカットは、皮ごと食べられて甘みが強い、日本を代表する高級ブドウをです。贈答品としても人気で、夏から秋にかけてのフルーツ市場を象徴する存在として定着しつつあります。

そのシャインマスカットをめぐり、農林水産省がニュージーランドに「栽培権(ライセンス)」を供与する方向で検討していることがニュースで報じられました。もし実現すれば、日本が公式に海外へライセンスを渡す初めてのケースになります。

しかし、国産シャインマスカットを育てる産地側、特に山梨県は強く反発し、小泉進次郎農相に直接抗議する事態となりました。なぜこのような摩擦が起きているのでしょうか。そして、すでに中国や韓国などで広がっている海外産のシャインマスカットは、国産とどんな違いがあるのでしょうか。

シャインマスカット栽培権をニュージーランドへ?背景と海外産との違いを考える

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農水省が進めるシャインマスカット「ライセンス供与」の狙い

まず、農水省がなぜ海外に栽培権を渡そうとしているのか、その狙いを整理します。

シャインマスカットは日本の国立研究開発法人・農研機構が1980年代後半から30年近い歳月をかけて開発し、2006年に品種登録されました。本来なら「日本独自のブランド」として輸出で大きな利益をもたらすはずでした。

ところが、苗や種子が流出したことで、中国や韓国で無断栽培され、そこから東南アジアへも輸出されていることが確認されています。農水省はこの損失額を年間100億円以上と試算しており、危機感を強めています。

そこで、政府が正式にライセンスを供与することで、海外での栽培をルールの下で管理しようという政策が動き出しました。世界的な監視体制を整え、供給を安定させつつ、品種の質と競争環境を守る狙いがあるのです。

今回、ニュージーランドの企業から「シャインマスカットを育てたい」という打診があり、農水省が検討に入ったのはこうした背景があります。


山梨県の強い反発「まず輸出体制を整えてから」

一方、産地側は納得していません。山梨県の長崎幸太郎知事は国会内で小泉農相と面会し、「輸出ができない中でライセンスが供与されれば生産者が大きな打撃を受ける」と抗議しました。

山梨県によると、輸出には植物検疫などの壁があり、国産シャインマスカットを海外に安定的に出す体制がまだ整っていません。この状態で海外にライセンスを与えてしまえば、現地で安価なシャインマスカットが流通し、日本産は競争に不利になる――こうした懸念があるのです。

小泉農相も「産地の理解が得られない状況では海外許諾は進めない」と述べており、議論は続いています。農水省の政策が、いきなり最初の案件でつまずく可能性もある状況です。


中国・韓国産シャインマスカットの現実

今回のニュースを理解するうえで欠かせないのが、すでに市場に広がっている海外産シャインマスカットの存在です。

見た目は同じでも味が違う

中国や韓国では、シャインマスカットが広い面積で栽培され、東南アジアや中東にまで輸出されています。しかし、糖度や香りは日本産ほど安定せず、「甘みが足りない」「酸味が強い」といった声が少なくありません。

農薬基準の不安

さらに、農薬の使用基準が日本と違うため、安全性への不安を抱く消費者もいます。日本に輸入される際には検査がありますが、現地の管理体制については透明性が十分とは言えません。

価格の差

価格面では、海外産は日本産の2〜3割安く流通しています。国産が1房3000円前後なのに対し、中国産は1500円程度で買えるケースもあります。この価格差は消費者にとって魅力ですが、日本の農家にとっては大きな脅威です。

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国産シャインマスカットの強みは「品質」と「安心感」

それでも国産シャインマスカットの評価は依然として高いままです。

日本の農家は、1房ごとに袋をかけ、粒を間引き、糖度を高めるといった細やかな管理を徹底しています。農薬の基準も厳しく、安心して食べられるという信頼感も強みです。

そのため「贈答用なら絶対に国産」という消費者の声は根強く、高級フルーツ店や百貨店では国産が主流であり続けています。


消費者の声と今後の展望

SNSや口コミを見ても、消費者の意見は二極化しています。

  • 「普段食べるなら海外産で十分。安いし子どもも喜んでいる」
  • 「特別な日や贈り物なら国産一択。甘さも香りも段違い」
  • 「海外産は安全面が心配。やっぱり国産を選ぶ」

今後は、国産=高級品、海外産=手頃なフルーツという使い分けが広がる可能性があります。

一方で、今回のライセンス供与問題は、日本農業にとって大きな分岐点になりそうです。ブランドを守りつつ海外に広げるのか、それとも国内の輸出体制を優先するのか。どちらを選んでも「日本の農家が不利益を被らない形」で制度設計することが欠かせません。


まとめ

シャインマスカットは、日本が長い時間をかけて育てた宝物のような果実です。
海外での模倣栽培やライセンス供与をめぐる議論は、「ブランドを守るのか、広げるのか」という日本農業全体の課題を映し出しています。

私たち消費者にできるのは、国産と海外産の違いを理解したうえで、シーンに合わせて選ぶこと。日常的に楽しむなら海外産、特別な贈り物や自分へのご褒美には国産――そんな使い分けが、今後ますます定着していくのかもしれません。

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